今回の記事では、前編・後編2回に分けて、旅館業法を題材に、様々な行政のルールについて解説いたします。

【前編】


目次

1 「許認可」とは何かー憲法の営業の自由との関係
(1)許認可制度~旅館業法を例に
(2)憲法の営業の自由
(3)営業の自由から見た許認可制度

2 許認可を巡る行政上のルールの構造ー憲法、法令、政令、省令、関係通知
(1)行政上のルールのピラミッド構造ー憲法、法令、政令、省令、ガイドライン
(2)行政上のルールのピラミッド構造を踏まえた専門家関与の必要性

前回の記事では旅館業法を例にとり、営業の自由と許認可制度について解説しました。
今回の記事では、同じく旅館業法を例に、行政上のルールのピラミッド構造について、解説いたします。

(1)行政上のルールのピラミッド構造ー憲法、法令、政令、省令、ガイドライン

旅館業法をめぐる行政上のルールを図示すると、ピラミッド構造になっています。
すなわち、憲法(旅館営業の自由)を頂点として、
旅館業法(法律)
旅館業法施行令(法令)(自治体条例)
旅館業法施行規則(省令)
関係通知、ガイドライン
という構造になっております。

前編の記事で挙げた旅館業法第3条では、次のように「法令で定める基準」という言葉が出てきます。

(旅館業法)

第3条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(中略)の許可をうけなければならない。ただし、(後略)
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があった場合において、その申請に係る施設の構造設備が法令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる(各号略)


この「法令で定める基準」を定めるのが、旅館業法施行令という政令になります(政令は内約が定めることになります。)。


具体的には、次のように定められています。
(旅館業法施行令)
(構造設備の基準)

第1条 旅館業法(以下「法」という。)第3条第2項の規定による旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。

ー 一客室の床面積は、七平米メートル(寝台を置く客室にあっては、九平米メートル)以上であること。
二 j宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合すること。

三~七(略)

八 その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区。以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること。

また、この旅館業法施行令には、「厚生労働省令で定める基準」という言葉が出てきますが、この内容を定めたのが、旅館業法施行規則という省令になります。(この規則は厚生労働大臣が定めることになります。)。

加えて、この旅館業法施行令には、「条例で定める構造設備の基準」という言葉が出てきますが、東京都においてこの内容を定めたのが、東京都旅館業法施行事例という自治体条例になります。(この条例は東京都議会が定めることになります。)。

さらに、厚生労働省の旅館業のペー
(→https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000110603.html)
には、「主な関係通知」として、数多くの通知・ガイドラインが揚げられています。
(通知・ガイドラインは、厚生労働大臣名義で出すものから、厚生労働事務次官名義(事務次官通知)、担当局長名義(局長通知)、担当課長名義(課長通知)で出すものまでさまざまです。)

(2)行政上のルールのピラミッド構造を踏まえた専門家関与の必要性

旅館業法を例にとってみてきたように、行政上のルールはピラミッド構造をなしており、その実際の解釈や実務運用を把握するうえでは、憲法に始まり、関係通知・ガイドラインを踏まえた対応が必要になります。

特に、行政庁・行政機関との深刻な争う位となる許認可の取り消し処分や営業停止処分に関する行政手続きへの対応や行政訴訟に関しては、単に条文や関係通知を読みこなせば足りるのではなく、行政法理論と事実・証拠に関する専門知識が不可欠となります。

当事務所では、これらの専門知識に踏まえた対応ができるよう尽力して参りますので、行政をめぐるトラブルでお悩みの際はお気軽にご相談いただければと思います。


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