「特定の手当を見直したい」

「日曜日を出勤日にして他の平日を会社の休日に変更したい」

「自己判断で就業規則を変更したところ、従業員から『不利益な変更だ、以前の就業規則を適用してほしい』と異議を述べられた」

といったご相談をお受けするケースがよくあります。

労働条件の変更は、個別合意が原則です(労働契約法第6条)。
もっとも、変更に承諾いただけない場合や従業員の人数が多く、個別の合意を取得することが現実的ではない場合も少なくありません。

今回は労働条件を従業員にとって不利益に変更せざるを得ない場合に考慮すべき事項について弁護士が解説します。

 

目次

1.労働条件の不利益変更とは何か

2.就業規則の不利益変更が有効と判断される場合について

⑴ 要件1「周知性」

⑵ 要件2「合理性」

3.労務対応の弁護士費用

4.不利益変更等の労務対応を弁護士に相談するメリット

 

1.労働条件の不利益変更とは何か

労働契約法で8条では、合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができると規定する一方、9条本文で使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないと規定されています。
例えば、労働者にとってメリットしかない手当を創設する場合など、労働者の不利益に就業規則を変更する場合でなければ、労働者との合意は必要なさそうです。

そこで、「労働者の不利益」な就業規則の変更とは、どのような場合をさすのでしょうか。

「不利益」かどうかは、実務上、労働者が不利益であると主張していることで足り、労働者が変更された就業規則とは異なる法的根拠に基づく請求をしていれば足りると解されております(『注釈労働基準法・労働契約法第2巻』392 頁(有斐閣、22023)。
そのため、使用者と労働者で不利益かどうかで対立している事案では、使用者の立場としては、不利益変更にあたることを前提に「許容される不利益変更かどうか」を検証していくことになります。

 

2.就業規則の不利益変更が有効と判断される場合について

就業規則の不利益変更が一切許容されないとすると、会社の経営上の必要性が生じた場合も、常に従前の基準で運用せざるを得ず、翻っては、会社の営業不振に伴い労働者の待遇にも影響が出る可能性があります。
そのため、一定の場合には、就業規則を不利益に変更した場合であっても、変更後の就業規則が有効と判断されます。
具体的には、労働契約法10条本文で以下のとおり記載があります。

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

⑴     要件1「周知性」

周知とは、実質的に労働者が知ろうと思えば知り得る状態に置くことをいいます。
一例として、労働基準法106条1項、労働基準法施行規則52条の2各号では、

一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

二 書面を労働者に交付すること。

三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

を挙げておりますが、これらの方法に限定されるものではありません。

なお、周知として不足すると判断された例としては、全体朝礼において変更後の就業規則の概略を説明したのみで規定の周知はしていないとの事案では、実質的周知は認められないと判断されています(東京高判平成19年10月30日労判964号72頁)。また、会社が就業規則を会社の共有フォルダに保存してはいたが、従業員に対して、保存した場所や内容を確認する方法を説明していなかった事案では実質的周知は認められないと判断されています(東京地判平成31年3月25日労経速2388号19頁)。

この周知をすべき対象者は、新たに労働契約を締結する労働者及び事業場の労働者であると解釈されており、たとえ、有期雇用契約を締結している労働者が現状1人もおらず、有期雇用労働者のみに適用される就業規則を不利益に変更しようとする場合であっても、有期雇用労働者以外の労働者も周知対象と解釈されております。

加えて、同様の条件下で就業規則を変更する際の聴取対象は、同様に全従業員と解釈されております。(労働基準法90条、パートタイム法7条、平成31年1月30日付行政通達(基発0130第1号職発0130第6号雇均発0130第1号開発0130第1号))

⑵     要件2「合理性」

合理性については、就業規則の変更後の当該規定それ自体の客観的合理性だけではなく、変更にかかる過程全体の合理性が問われることとなります。
そして、その合理性の判定にあたっては、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして判断することになります。

不利益変更の内容が賃金に関するものかどうか等個別の事情に応じて分析を必要といたしますので、この点の判断は自己判断せずに弁護士にご相談頂ければと思います。

 

3.労務対応の弁護士費用

使用者側で不利益変更に関するご相談を承る場合は、当事務所では次の費用で承っております(税込)。

着手金 33万円+顧問契約(月額55000円)
報酬金 0円

労務対応は、今後同様の事案が生じないための社内対応や、内部調査が必要不可欠となります。そのため、当事務所では、労務対応のご依頼については顧問契約を前提とさせて頂いております。
顧問契約は1年間継続して頂きます。1年経過時に、継続のご判断を行っていただくこととなります。
なお、労働審判に移行する場合は、別16.5万円の追加着手金を頂戴し、訴訟に移行する場合は、別途22万円の追加着手金を頂戴します。

労働問題への対応は、会社に一定の痛みが伴うことが殆どです。当事務所では、着手金と顧問契約の締結を前提に、報酬金は受領していない点が特色といえます。

 

4.不利益変更等の労務対応を弁護士に相談するメリット

多くの企業では、税理士と社労士はいるが、弁護士はいないというパターンが多いと思われます。
弁護士はご存じのとおり、紛争を取り扱うことができ、実際の不利益変更に関する事案についても代理人として労働者と折衝が可能な専門職です。
そのため、紛争化する場合をも見据えた対策が可能となりますので、まずはお気軽にご相談頂ければと思います。

 

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