「自分がやってしまった犯罪行為について、不起訴になるかどうか不安がある。」
「起訴されると勤務先をクビになるので、どうしても不起訴にしてもらいたい。」

このようなご質問は、刑事事件で被疑者となってしまったお客様の多くから寄せられるご質問です。

このコラムでは、不起訴処分の判断基準や不起訴処分を獲得するための弁護活動などについてご説明します。

 

【目次】

1 不起訴処分とは

2 不起訴処分の種類

3 起訴猶予の判断基準

4 不起訴処分(特に起訴猶予)獲得のための弁護活動

5 不起訴処分を獲得した後にできること

6 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

7 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

 

1 不起訴処分とは

検察官は、警察から送致され、又は自ら認知等により受理した事件について、必要な捜査を遂げた後、最終的に起訴するかどうかを決めます。これを「終局処分」といいます。「不起訴処分」とは、文字どおり、検察官の行う終局処分のうち、起訴しない処分のことをいいます。

起訴され、有罪になれば、前科が付くことになります。前科が付くと、勤務先から懲戒処分を受けたり、一部の国家資格については資格をはく奪されたりするなどのリスクがありますので、起訴されるか不起訴になるかは、その人の人生を左右する極めて重要な問題です。

 

2 不起訴処分の種類

⑴ 不起訴処分の種類は多数あり、その全てをここで取り上げることはできませんので、今回は、「親告罪の告訴の欠如(又は取消し)」、「嫌疑不十分」、そして、「起訴猶予」についてご説明します。


⑵ 親告罪の告訴の欠如(又は取消し)
犯罪の中には、被害者(告訴権者)による告訴がなければ起訴できないと法律で定められているもの(例えば、器物損壊罪)があり、このような犯罪のことを「親告罪」といいます。「親告罪の告訴の欠如(又は取消し)」は、親告罪について、告訴がなかったとき又は取り消されたときにする処分です。処分の類型としては、厳密には「訴訟条件を欠く場合」に位置付けられますが、被害者と示談するなどした結果、被害者が告訴状を提出しなかったり、提出していた告訴状を取り下げたりした場合になされる処分であり、これを獲得するための弁護活動は、後で述べる「起訴猶予」を獲得するための弁護活動と重なる部分が多いのが特徴です。


⑶ 嫌疑不十分
「嫌疑不十分」とは、被疑事実につき、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なときにする処分をいいます。被疑者がその行為者(いわゆる犯人)であることや、その行為が犯罪に当たることについて認定すべき証拠が不十分な場合には、嫌疑不十分とされます。
嫌疑不十分になるかどうかについては、捜査機関にどれだけの情報(証拠)が集まっているかという事情に大きく左右されます。そして、捜査段階では、捜査機関から弁護人に証拠が開示されることはないので、弁護人が得られる情報は限定的です。その意味では、弁護人が嫌疑不十分を狙って獲得するということは現実的には難しいと言わざるを得ません(弁護人が罪証隠滅に加担したり、被疑者に積極的に嘘をつくようアドバイスすることで嫌疑不十分を狙うことが弁護士倫理上あってはならないことは言うまでもありません。)。


⑷ 起訴猶予
「起訴猶予」とは、被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときにする処分(刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)第248条)をいいます。不起訴処分の中でも一番多いのがこの「起訴猶予」になります。そして、自白事件(罪を認めている事件)の処分において、弁護人が目指すべき目標は、起訴猶予の獲得になります。以下では、起訴猶予の判断基準について説明します。

 

3 起訴猶予の判断基準

⑴ 検察官が起訴猶予にすべきかどうかを決めるに当たっては、個々の具体的事件について、様々な事情を考慮することになりますので、その基準を示すことは困難ですが、具体的には、以下の事情を総合考慮して決めています。


⑵ 考慮要素

犯人(行為者)に関する事項

犯人の性格

性質、素行、遺伝、習慣、学歴、知能程度、経歴、前科前歴の有無、常習性の有無等

犯人の年齢

若年又は老年、学生等

犯人の境遇

家庭状況、居住地、職業、勤務先、生活環境、交友関係等、特に、両親その他監督保護者の有無及び住居・定職の有無

犯罪行為自体(行為)に関する事項

犯罪の軽重

法定刑の軽重、法律上刑の加重軽減の事由の有無、被害の程度等

犯罪の情状

犯罪の動機・原因・方法・手口、犯人の利得の有無、被害者との関係、犯罪に対する社会の関心、社会に与えた影響、模倣性等

犯罪後の情況に関する事項

行為に関して

犯人の反省の有無、謝罪や被害回復の努力、又は逃亡や証拠隠滅等の行動、環境の変化、身柄引受人その他将来の監督者・保護者の有無等環境調整の可能性の有無

被害者に関して

被害弁済の有無、示談の成否、被害感情等

その他

 

社会事情の変化、犯行後の経過年数、刑の変更等


⑶ このうち、「犯人(行為者)に関する事項」や「犯罪行為自体(行為)に関する事項」、「その他」の考慮要素については、被疑者自身の特性等や既に起こった過去の出来事についての事情ですので、弁護人の活動によっても変えようのないものです。具体的には、同種前科がある場合、同種余罪が多数ある場合、動機や態様が悪質な場合、結果が重大な場合(特に人が亡くなっている事件など)、事件が社会的耳目を集めた場合などについては、弁護活動によってもその事実自体を変えることまではできません。ですので、弁護人が力を入れるべきは、「犯罪後の情況に関する事項」について、いかに被疑者にとって有利な事情を作り出すことができるかということになります。次の項では、起訴猶予を獲得するために有効な弁護活動についてもう少し詳しくご説明します。

 

4 不起訴処分(特に起訴猶予)獲得のための弁護活動

⑴ 反省していることが大前提

起訴猶予を獲得するためには、被疑者がその事件について反省していることが大前提となります。絶対的に軽微な事案など、反省の有無に関係なく起訴猶予になり得る事案もなくはないですが、多くの事案では、被疑者が反省しているかどうかが、検察官が起訴猶予にすべきかどうかを決める上での出発点になります。そのため、反省を示す事情として、被疑者に反省文を書いてもらったり、自首を促し警察署に同行したり、取調べに当たっては自らの関与や共犯者がいる場合にはそれが誰なのか、どのような役割だったのかなどについてつまびらかに話し、捜査機関への積極的な協力を促すことなどが重要になります。


⑵ 被害弁済、示談、被害感情を慰謝するための活動

ア 被害者のいる事件においては、被害者に被疑者がやったことを許してもらうことが起訴猶予を獲得するための一番の近道になります。そのため、被害者との示談交渉を速やかに開始し、示談をまとめることが肝要です。示談書作成の一番のポイントは、被害者が「被疑者を宥恕する」、つまり、被疑者を「許す」という文言を入れることです。さらに、被害者に了承を得て「被疑者を宥恕し、被疑者の刑事処罰を希望しない」との文言を入れられれば、検察官は更に起訴猶予の処分をしやすくなります。
なお、財産犯(例えば、窃盗、詐欺、横領など)については、被害弁償がなされているか否かが起訴猶予の考慮要素の一つとなりますし、被害弁償なくして被害者が被疑者を許すということはあまり想定できないと思われますので、起訴猶予を目指すのであれば、例え分割払いになったとしても、全額被害弁償する合意をした上で、「宥恕」ないし「刑事処罰を希望しない」との文言を入れてもらえるよう交渉していくことになるでしょう。

イ 被害者と示談をするに当たっては、相応の示談金を支払うことが必要な場合がほとんどです。示談金の相場については、事案ごとに異なりますので、個別に弁護士にご相談ください。もっとも、示談は、被害者の納得を得て初めて成立するものですので、弁護人がどれだけ相場はいくらであると説明したとしても、被害者がその金額に納得するとは限りません。したがって、示談金額については、相場の金額内で収まらないことも往々にしてあるということは理解しておく必要があります。

ウ 被害者対応については、被疑者の身柄拘束の有無に関係なく、被疑者自身も誠意をもって当たる必要があります。被害者への誠意という点では、謝罪文は被疑者自身が書くのは当然のことですし、身柄拘束されておらず、被害者に直接謝罪する機会があるのであれば、できるだけ速やかに被害者に直接謝罪した方がいいといえます。弁護人に任せきりで、被害者が置かれている苦しい状況を理解していないと被害者に思われてしまうと、そもそも示談交渉の席にすらついてはもらえないこともあるので、注意が必要です。

エ なお、被疑者の犯罪が親告罪の場合には、「親告罪の告訴の欠如(又は取消し)」で不起訴にしてもらうため、まだ告訴がなされていない場合には、示談書に「今後、本件についての告訴はしない」との文言を入れ、既に告訴がなされている場合には、「告訴を取り下げる」という文言を入れることが肝要です。


⑶ 身柄引受人その他将来の監督者の確保、環境調整のための活動

ア 身元引受人や今後の監督者を確保することも、起訴猶予を獲得するための重要な活動になります。被疑者のご家族や勤務先の上司などと連絡を取り、身元引受人や監督人になることを了承してもらい、その旨の書面を作成します。

イ また、被疑者の犯罪について、生活環境や生活習慣などが影響していると思われるものについては、そのような生活環境、生活習慣を改善することも、被疑者にとって有利な事情として作用し得ます。例えば、周囲の悪い仲間の影響で事件を起こしてしまったのであれば、被疑者にその者との関係を断ってもらうとか、アルコールが原因で事件を起こしたのであれば、禁酒し、アルコール依存症の治療を受けてもらうなどです。


⑷ ここまでお話ししてきた弁護活動を行ったとしても、「犯人(行為者)に関する事項」や「犯罪行為自体(行為)に関する事項」、「その他」の考慮要素によって、残念ながら不起訴処分を獲得できず、起訴されてしまうということもあり得ます。しかし、そのような場合であっても、これまでに行った弁護活動は決して無駄にはなりません。裁判では、起訴猶予を目指すための弁護活動をしなかった場合と比較して、より軽い刑罰、具体的には、本来、懲役刑であったものが罰金刑になったり、実刑のはずだったものが執行猶予になるといったことが大いにあり得ます。ですので、弁護人としては、不起訴処分にならなかったとしても決して悲観せず、その後の裁判でのより軽い刑罰を目指していくことになります。

 

5 不起訴処分を獲得した後にできること

通常、不起訴処分が決まったとしても、事前にお願い等していなければ、検察官からその処分結果を知らせてくれることはありません。ですので、不起訴になったかどうかについては、検察官に電話をかけるなどして確認する必要があります。そして、検察官は、不起訴処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨を告げなければならない(刑訴法第259条)とされていますので、電話で問合せをした場合は口頭で結果を教えてもらえますし、書面での通知を希望した場合は、「不起訴処分告知書」という書面をもらえます。検察官が被疑者から請求のあった場合に告げる内容は、「不起訴処分にしたこと」だけで足りるとされていますので、処分の種類(嫌疑不十分か、起訴猶予かなど)についてまで教えてもらえるかどうかは、担当の検察官次第になります。不起訴処分告知書を入手することで、勤務先などに対し、不起訴になったことを公的に証明することができます。

 

6 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

当事務所の刑事弁護に関する費用は次のページをご参照ください。

https://kl-o.jp/crime/#00003

 

7 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

これまで述べてきたとおり、不起訴処分を獲得するためには、その事件の処分を見通す能力や、被害者との示談交渉や示談書の作成など、刑事事件に関する専門知識やノウハウが必要不可欠です。

刑事事件で、処分の見通しをお知りになりたい方、不起訴処分を獲得したいとご希望の方は、お気軽にご相談ください。

 

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