「警察から警察署に出頭するよう言われているので、取調べの流れを教えてほしい。」

「取調べではどんなことを質問され、何を答えたらいいのか、ダメなのか教えてほしい。」

 

このようなご質問は、刑事事件で被疑者となってしまったお客様の多くから寄せられるご質問です。

このコラムでは、取調べの流れや、取調べにおいて質問されることや、それに対してどう答えていけばいいのかなどについてご説明します。

 

【目次】

1 取調べとは

2 被疑者の取調べについて

3 被疑者以外の者の取調べについて

4 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

5 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

 

 

1 取調べとは

取調べとは、警察官や検察官が、事件の関係者から事件に関する事情などを聴くことをいいます。
取調べの対象者は、事件について容疑をかけられている者(=被疑者)と、被疑者以外の者に分けることができます。

刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)第198条1項本文は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」と規定しており、これが被疑者取調べの根拠規定になります。
他方、刑訴法第223条1項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。」と規定しており、これが被疑者以外の者、具体的には、被害者や目撃者などの取調べの根拠規定になります。

被疑者として取調べを受けるのか、被疑者以外の者として取調べを受けるのかによって、捜査機関から質問される内容や、留意すべき事項が異なってきますので、以下、それぞれの場合に分けてご説明します。

 

2 被疑者の取調べについて

⑴ 被疑者の取調べの流れ

ア 被疑者の取調べは、初回であれば、①本人確認、②黙秘権告知、③事情聴取、④供述調書の作成といった流れで行われるのが一般的です。
初回以降の取調べでは、本人確認を省略するのが普通です。また、初回か否かにかかわらず、取調べがあっても、捜査機関が供述調書作成の必要がないと判断した場合には、供述調書を作成しないこともあります。

イ 被疑者の取調べには、身柄拘束されている場合と、身柄拘束されていない(=在宅)場合の2つのパターンがあります。
身柄拘束されている場合、初回の取調べ、具体的には警察や検察で行われる弁解録取手続(逮捕後、警察署に身柄が連れて来られた後に最初に被疑者の言い分を聞く手続と、事件が検察庁に送られた後、最初に被疑者から言い分を聞く手続を、どちらも弁解録取手続といいます。)では、事情聴取の前に、弁護人選任権(弁護人を付けることができる権利)があることが告げられ、国選弁護人の選任手続についても説明があります。また、検察庁であれば、身柄拘束事件は、原則、録音録画を実施していますので、冒頭で録音録画している旨告げられます(警察でも、事件によっては録音録画を実施していますので、その場合はその旨告げられます。)。
他方、身柄拘束されていない在宅事件については、法律上、弁護人選任権を告知する義務はありません(捜査機関によっては告知する場合もあります。)し、身柄拘束されていない被疑者については国選弁護人を選任することができませんので、国選弁護人の選任手続の説明もありません。

ウ 被疑者が勾留決定を受けると、勾留請求日から原則10日間身柄拘束され、更に最大で10日間、身柄拘束期間が延長されることがあります。そして、勾留期限の最終日のことを勾留満期といいます。
検察官が勾留満期に被疑者を取調べで呼び出す場合については、①起訴する前に更に補充で被疑者から聴取する必要がある場合、②被疑者を釈放する前提で、最後に再度反省を促すために呼び出す場合、③被疑者を略式起訴するため、略式起訴に関する被疑者の同意(略式請書)を取る目的で呼び出す場合などが考えられます。


⑵ 被疑者の取調べで聞かれる内容

ア 身上調書を作成するために聞かれる事項
捜査機関が被疑者の取調べをする場合、最終的には必ず被疑者の身分関係についてまとめた供述調書(=身上調書)を作成します。そのために捜査機関から聞かれるのは、概ね以下の事項になります。

〇 被疑者の特定のための事項
①氏名、②年齢(生年月日)、③職業、④本籍、⑤住居、⑥出生地、⑦被疑者が法人の場合には名称又は称号、主たる事務所の所在地並びに代表者の氏名及び住居

〇 位記、勲章、褒章、記章、恩給、年金の有無、あるときはその種類、等級

〇 性行及び家庭環境
①性格、素行、交友関係、経歴、②生活状況、家族関係、③資産、収入

〇 前科・前歴関係
①前科の有無、②現に係属中の事件の有無、③刑の執行停止、仮釈放、仮出場、恩赦による刑の減免、刑の消滅の有無、④起訴猶予などの前歴の有無、⑤保護処分の有無

イ 被疑事実及びそれに関連する事情
捜査機関が被疑者から最も聞きたいのが、被疑事実及びそれに関連する事情です。被疑事実とは、被疑者が容疑をかけられている犯罪事実のことであり、それに関連する事実とは、犯行動機や犯行後の事情など情状に関連する事実です。
具体的には、犯罪の日時、場所、方法、動機又は原因、犯行の状況、被害の状況及び犯罪後の情況等の犯罪構成要件に該当する事実及び情状に関する事実を聞かれることになります。犯罪構成要件は、犯罪ごとに異なっていますので、詳細は個別に弁護士にお問合せください。


⑶ 被疑者として取調べを受けるに当たって留意すべき事項

ア 身柄拘束されている事件の場合、被疑者には取調べに応じる義務があるとされています。
他方、身柄拘束されていない事件については、被疑者が取調べに応じるかどうかは被疑者の任意となります。もっとも、身柄拘束されていない被疑者が捜査機関からの取調べに応じないことが続くと、その被疑者については逃亡のおそれがあると判断され、結果、逮捕されてしまうリスクが高まりますので、仕事などに支障のない日程を調整してもらい、できるだけ取調べに応じるべきであると考えます。

イ 被疑者には黙秘権があります。そのため、取調べにおいて、言いたくないことを言わなかったとしても、それのみで不利に取り扱われることはないというのが法律の建前です。
もっとも、捜査機関から呼出しを受けた被疑者が完全に黙秘することによって、捜査機関がその被疑者について証拠隠滅のおそれがあると判断し、結果、逮捕されてしまうリスクがあることは否定できません。事案に応じて、取調べで黙秘することが有効な場合とそうでない場合があると考えますので、個別に弁護士にご相談ください。

ウ 取調べの中で、覚えていないことや記憶が曖昧なことを質問された場合には、「覚えていない。」とはっきり言うことが肝要です。一度事実を認める供述調書が作成されてしまうと、後になって覆すことは非常に困難だからです。

エ 仮に、自分の話していないことが供述調書に記載されている場合には、訂正を申し立てることができます。訂正してもらえないのであれば、その供述調書に署名、押印する必要はありません。他方、一度署名、押印した供述調書については、これをなかったことにすることはできないので注意が必要です。

オ 被疑者の取調べにおいては、少なくとも4時間ごとに休憩時間をとるよう努めるとともに、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり被疑者の取調べを行うことは避けるとの通達(平成20年5月1日 次長検事依命通達「取調べに当たっての一層の配慮について」)が出されていますので、取調べが長時間に及ぶ場合は、適宜休憩を求め、在宅であれば帰りたい旨を捜査官に伝えることが肝要です。

カ 在宅事件であれば、身分証明書と判子(三文判で問題ありません。)を持っていきます。仮に判子を忘れても、供述調書の作成は指印で問題なくできます。

 

3 被疑者以外の者の取調べについて

⑴ 被疑者以外の者の取調べの流れ
被疑者以外の者の取調べでは、①本人確認、②今回、取調べを行うことになった経緯についての説明、③事情聴取、④供述調書の作成という流れで行われるのが一般的です。


⑵ 被疑者以外の者の取調べで聞かれる内容
被疑者以外の者の取調べについては、その人が捜査機関からどのような立場で呼ばれているかによって、質問される内容もまちまちです。
一般的には、
① 被害者又はその遺族については、被害を受けたてん末、被害弁償の有無、処罰意思の有無、被害者又は遺族としての感情等
② 目撃者については、犯行を目撃した状況
③ 犯罪供用物件に関与した者については、その関与した経緯
④ 盗品等の処分に関与した者については、処分のてん末 

などと整理することはできますが、結局のところ、質問される内容は事案によって異なると言わざるを得ません。


⑶ 被疑者以外の者として取調べを受けるに当たって留意すべき事項

ア 被疑者以外の者の取調べに当たって、捜査機関から黙秘権の告知はありません。被疑者以外の者には、法律上、黙秘権が認められていないからです。
もっとも、黙秘権がないからといって、捜査機関が被疑者以外の者に対して供述を強制することはできませんので、結局のところ、捜査機関の求めに応じて話をするかどうかはその人次第ということになります。
このように、供述するかどうかはその人の自由ですが、そのことと、供述をする場合にうそをついていいかどうかということは別問題です。すなわち、被疑者以外の者が捜査機関に対してうその供述をした場合、後にそれが真実ではないと判明したときには、虚偽告訴罪などで処罰されるリスクがあります。また、捜査機関に虚偽の供述をし、さらに、そのうその供述を法廷で証人としてした場合には、偽証罪として処罰されるリスクがあります。そのため、絶対にうそはつくべきではありません。

イ 取調べの中で、覚えていないことや記憶が曖昧なことを質問された場合には、「覚えていない。」とはっきり言うこと、仮に、自分の話していないことが供述調書に記載されている場合には、訂正を申し立てることができることについては、被疑者の取調べと同様です。

ウ 取調べには、身分証明書と判子(三文判で問題ありません。)を持っていきます。仮に判子を忘れても、供述調書の作成は指印で問題なくできることは被疑者の取調べと同様です。

 

4 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

当事務所の刑事弁護に関する費用は次のページをご参照ください。

犯罪・刑事

 

5 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

これまで述べてきたとおり、取調べにおいて捜査機関から聞かれる内容は犯罪によって異なりますし、黙秘権を行使するかどうかについても戦略的に考える必要があるため、取調べに適切に対応するためには刑事事件に関する専門知識やノウハウが必要不可欠です。
刑事事件で取調べを受けることになった方は、お気軽にご相談ください。

 

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