「起訴されてしまったが、執行猶予になるか教えてほしい。」

「今後の生活もあるので、実刑は回避したい。」

 

このようなご質問は、刑事事件で被告人となってしまったお客様の多くから寄せられるご質問です。

このコラムでは、執行猶予判決を得るための条件や執行猶予判決を獲得するための弁護活動などについてご説明します。

 

【目次】

1 執行猶予とは

2 執行猶予の種類

3 執行猶予が付くための条件

4 執行猶予判決を得るための弁護活動

5 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

6 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

 

 

1 執行猶予とは

執行猶予とは、有罪判決が言い渡された場合であっても、刑の執行を一定期間猶予し、その間に罪を犯さないことを条件に刑罰権を消滅させる制度です。執行猶予の期間は、裁判所が、裁判の確定した日から1年から5年の間で決めます(刑法第25条1項)。
判決で懲役刑(又は禁錮刑)が言い渡された場合、実刑判決であれば刑務所に入る必要がありますが、執行猶予判決の場合は、その執行猶予期間中に新たに罪を犯さず、無事にその期間を経過すれば、刑務所に入る必要はありません。また、執行猶予期間が満了すれば、刑の言渡しの効力もなくなるため、前科による職業の資格制限や選挙権の制限なども受けることはありません。



2 執行猶予の種類

⑴ 執行猶予には、全部執行猶予と一部執行猶予があります。

⑵ 全部執行猶予とは、言い渡された刑の全部の執行が猶予される制度です。
例えば、「懲役1年、3年間執行猶予」の判決が言い渡された場合、懲役1年という刑罰の全部について、3年間その刑の執行が猶予されますので、3年間何事もなく過ごせば、刑務所に行く必要はなくなります。


⑶ 一部執行猶予とは、言い渡された刑の一部についてその執行が猶予される制度です。
例えば、「懲役3年、その刑の一部である懲役6月の執行を2年間猶予する」との判決が言い渡された場合、2年6か月は刑務所に行く必要がありますが、2年6か月の実刑の刑期を終えた後は釈放され、その後2年間、新たに罪を犯さなければ、残りの6か月については刑務所に行く必要はなくなります。


⑷ 保護観察
全部又は一部執行猶予判決が言い渡される場合、その執行猶予期間について保護観察に付されることがあります(刑法第25条の2第1項)。
保護観察とは、保護観察官と保護司の協同により、施設内処遇によらなくても更生が可能と思われる者に対し、指導や支援を行うことによって再犯を防止するとともに、対象者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助ける制度です。
保護観察に付すかどうかは、原則として裁判所の裁量で決まりますが、単に執行猶予を付すだけでは再犯のおそれに不安が残る被告人や、実刑か執行猶予かぎりぎりの判断が迫られる事案、裁判員裁判の事案などにおいて、執行猶予を選択した場合に付されるケースが多い印象です(裁量的保護観察)。
他方、執行猶予期間中に新たに罪を犯し、再度執行猶予に付される場合には、その執行猶予期間中は必ず保護観察に付されます(必要的保護観察)。




3 執行猶予が付くための条件

執行猶予判決が付くかどうかは、その人の前科関係によって異なってきます。そこで、以下、場合を分けて見ていきます。

⑴ 前に禁錮以上の刑に処されたことがない者
前に禁錮以上の刑に処されたことがない者、すなわち、前科がない人については、言渡しを受ける刑罰が3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金であるときは、情状により執行猶予を付すことができます(刑法第25条第1項1号)。
ここでいう「情状」の内容については、刑法に具体的な規定はなく、裁判所の裁量に委ねられています。もっとも、無制限な裁量を意味するものではなく、犯行態様の悪質性や結果の重大性、犯罪後の情状のほか、犯人の個々の人的な属性、環境、再犯のおそれなどを総合考慮して判断していると考えられます。
一般的に、刑の執行猶予の当否を判断する際に考慮される主な事情としては、動機に酌むべきものがあること、犯罪により生じた実害が皆無ないし軽微であること、個人的法益に対する犯罪、特に財産犯において示談が成立しているか被害が弁償されていること、被害者側に落ち度があること、犯人が若年又は高齢者であること、その者がいなければ家族が生活できないような特別な事情があること、犯罪歴がないか古いものであること、犯罪後の改悛の情が顕著であることなどがあると指摘されています。


⑵ 前に禁錮以上の刑に処されたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処されたことがない者
前に禁錮以上の刑に処されたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処されたことがない者、すなわち、過去に実刑になった前科があるものの、刑の執行終了から5年経過した人については、言渡しを受ける刑罰が3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金であるときは、情状により執行猶予を付すことができます(刑法第25条第1項2号)。
ここでの「情状」は、⑴と同様です。


⑶ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者、すなわち、前に全部執行猶予付き判決を受けて、現在も執行期間が経過していない人については、今回言渡しを受ける判決が1年以下の懲役又は禁錮であり、情状に特に酌量すべきものがあるときにのみ執行猶予を付すことができます(刑法第25条第2項)。これを再度の執行猶予といいます。
ここでいう「情状」は、⑴⑵の場合よりも条件が厳しく、「特に酌量すべきもの」が要求されています。「情状に特に酌量すべきものがあるとき」とは、犯罪の情状が特に軽微で実刑を科す必要性が乏しく、かつ、更生の見込みが大きいことを意味すると解されています。



4 執行猶予判決を得るための弁護活動

被疑者・被告人が自白している事件を前提にしますが、捜査段階では、被疑者が不起訴になることを目標に弁護活動をします。そして、公判段階では、執行猶予判決を得ることを目標に弁護活動をします(懲役刑ではなく、罰金刑を求める弁護活動もありますが、ここでは割愛します。)。
この捜査段階における弁護活動と公判段階における弁護活動は、いずれも被疑者・被告人に有利な情状を獲得するための弁護活動ですので、その内容は共通します。
すなわち、被告人が、事件について反省していることを前提に、被害弁済、示談、被害感情を慰謝するための活動、身柄引受人その他将来の監督者の確保、環境調整のための活動などを行います

詳細は、コラム「不起訴処分の判断基準と不起訴処分を獲得するための活動のポイント」をご参照ください。

「不起訴処分の判断基準と不起訴処分を獲得するための活動のポイント」

 

5 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

当事務所の刑事弁護に関する費用は次のページをご参照ください。

犯罪・刑事

 

6 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

これまで述べてきたとおり、執行猶予判決を得るためには、法律上の要件を正確に把握している上で、適切な情状立証をしていくことになりますので、刑事事件に関する専門知識やノウハウが必要不可欠です。
刑事事件で、執行猶予が付くかどうかの見通しをお知りになりたい方、執行猶予判決を得たいとご希望の方は、お気軽にご相談ください。

 

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