「1日も早く社会復帰したいので、保釈請求してほしい。」

このようなご質問は、刑事事件で身柄拘束されたまま被告人となってしまったお客様またはそのご家族の多くから寄せられるご質問です。

このコラムでは、保釈の条件や保釈許可決定を得るための弁護活動などについてご説明します。

 

【目次】

1 保釈とは

2 保釈の流れ

3 保釈の種類と各要件

4 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

5 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

 

 

1 保釈とは

保釈とは、保釈金の納付等を条件として、勾留の執行を停止し、被告人を現実の拘束状態から解く制度です。
保釈請求ができるのは、起訴後勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹です(刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)第88条第1項)。

保釈は、法律上、起訴された後にしか認められない制度ですので、逮捕中や起訴前勾留中に保釈をしてほしいとの希望があっても、法律上は認められません(刑訴法207条1項ただし書)。

被告人は、身柄拘束の期間が長くなればなるほど、職を失うリスクが高まったり、家計の維持が困難になったりするなど、被告人本人やその家族に与える影響は甚大です。起訴後の弁護活動においては、被告人の1日でも早い身柄開放を目指すことが重要になります。そして、起訴後の身柄開放のための最も有効な手段が保釈請求ということになります。

 

 

2 保釈の流れ

⑴ まず、被告人や弁護人など、保釈請求をする権利を有する者が保釈を請求します。
第1回公判期日前は裁判官に対して、第1回公判期日後は係属裁判所に対して保釈を請求します。
第1回公判期日の前後で保釈請求の宛先が異なるのは、第1回公判前に係属裁判所が保釈の判断をしてしまうと、その過程でその事件に関する1件記録を目にすることになり、事件に対する予断を抱く可能性があることから、これを排除するため、審理に関与しない裁判官が保釈の判断をすることにしたものです(なお、以下では説明の便宜上、「裁判官ないし裁判所」のことを単に「裁判所」と呼んで説明します。)。


⑵ 裁判所は、保釈請求があると、保釈の許否について検察官の意見を聞かなければなりません(刑訴法第92条第1項)。これを求意見といいます。
検察官は、保釈の求意見があると、「不相当却下」「不相当」「しかるべく」のいずれかの意見を裁判所に返します。
「不相当却下」は、検察官として、保釈は絶対に認められず、仮に保釈許可決定が出た場合は、同決定に対する準抗告をするという場合の意見です。
「不相当」は、検察官として、保釈に反対ではあるものの、仮に保釈許可決定が出た場合は、同決定に対する準抗告まではしないという場合の意見です。
「しかるべく」は、検察官として、保釈に積極的に反対しないという場合です。

検察官が「不相当却下」の意見を書いた場合は、裁判所も相当慎重に保釈の許否を判断するケースが多く、保釈許可決定を得るためのハードルは高いと言わざるを得ません。
他方、検察官が「不相当」の意見を書いた場合は、保釈許可決定が出る可能性は相応にあり、「しかるべく」の場合はほとんどの場合は保釈許可決定が出るというイメージをもっていただいて間違いありません。


⑶ 保釈許可決定が出ても、それだけで直ちに釈放になる訳ではなく、裁判所が定めた保釈保証金を裁判所に納付する必要があります。保釈保証金を納付すると、裁判所から検察庁に連絡が行き、検察庁から被告人の勾留先の施設に釈放を指示し、その後に釈放されます。


⑷ 保釈された後、判決期日を迎え、そこで罰金ないし執行猶予付きの懲役・禁錮刑に処された場合は、以後、刑事施設に再収容されることはありません。
他方、保釈中に実刑判決となった場合は、判決の言渡し後、直ちに保釈は効力を失い、刑事施設に収容されることになります。もっとも、その場合でも、再保釈の請求をすることができます。この再保釈は、控訴をしなくても請求することができますが、控訴をした上で再保釈を請求する場合が多いです。
再保釈請求の宛先は、第一審の記録が控訴裁判所に到達する前は第一審判決を言い渡した裁判所に、第一審の記録が控訴裁判所に到達した後は控訴裁判所になります。




3 保釈の種類と各要件

⑴ 保釈には、権利保釈(刑訴法第89条)、裁量保釈(刑訴法第90条)及び義務的保釈(刑訴法91条)の3種類があります。



⑵ 権利保釈
権利保釈とは、刑訴法第89条各号所定の事由がある場合を除き、必ず保釈を許さなければならない場合をいいます。
刑事訴訟法第89条には、権利保釈が認められない事由(権利保釈除外事由)として

① 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき(同条第1号)
② 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき(同条第2号)
③ 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき(同条第3号)
④ 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき(同条第4号)
⑤ 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき(同条第5号)
⑥ 被告人の氏名又は住居が分からないとき(同条第6号)

という6つの事由が挙げられています。
この中で、裁判所が権利保釈除外事由ありと判断することが多いのは、③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき、④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき(同条第4号)、⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき(同条第5号)の3つです。
③は、同種の前科が多数あったり、前科はなくても同種の余罪が多数あるなど、同種の事件を繰り返し起こしている人が該当し得ます。
④⑤は、被害者や目撃者のいる事件、共犯者のいる事件などの場合に該当し得ます。

検察官が保釈に対する反対意見を書く場合は、③④⑤に該当することを中心に記載します。したがって、保釈請求をする場合には、検察官からこれらの点について反論されることを前提に、その反論に耐え得る説得的な記載をする必要があります。
上記①から⑥のいずれかに該当すると裁判所が判断した場合は、権利保釈は認められません。もっとも、権利保釈が認められない場合であっても、以下の裁量保釈が認められることがあります。

なお、2⑷で述べた再保釈請求については、法律上、権利保釈は認められておらず、裁量保釈のみが認められ得ることになります(刑訴法344条)。



⑶ 裁量保釈
裁量保釈とは、権利保釈が認められない場合であっても、裁判所の裁量により保釈を認める場合をいいます。
裁判所は、裁量保釈をするに当たっては、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮することとされています(刑訴法第90条)。

保釈請求をするに当たっては、先ほど述べた権利保釈除外事由がないことのほか、仮に権利保釈除外事由が認められるとしても、本件は裁量保釈が相当な事由であることを、先ほど述べた基準(保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情)に沿って丁寧に検討し、記載する必要があります。

被告人の逃亡のおそれがないことを積極的にアピールするためには、身元引受人の確保は必須です。
なお、令和6年6月から、裁判所が被告人の保釈を許可する際に、監督者を選任することができる監督者制度が始まりました(刑訴法第98条の4)。従前の身元引受人は、保釈に当たって何ら法的な責任を負うことはありませんでしたが、監督者は、被告人の逃亡を防止し、及び公判期日への出頭を確保するために必要な監督をしなければならず、その他の裁判所に命じられた一定の作為及び監督保証金の納付が義務付けられます。この監督者制度を活用することで、より保釈が認められやすくなることが期待されます。



⑷ 義務的保釈
義務的保釈とは、被告人の勾留による拘禁が不当に長くなったとき、裁判所が保釈を義務付けられる場合をいいます。
不当に長いというのは、単なる時間的観念ではなく、事案の性質、犯罪の軽重、審理の経過、審判の難易度等諸般の事情から総合的に判断されます。
義務保釈の要件に該当する場合は、裁判所は権利保釈や裁量保釈が認められない場合であっても保釈をしなければなりません。
実務上、義務的保釈に該当するような事案は裁量保釈の要件を満たす場合がほとんどですので、義務保釈で保釈されるケースはほとんどありません。




4 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

当事務所の刑事弁護に関する費用は次のページをご参照ください。

犯罪・刑事

 

 

5 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

これまで述べてきたとおり、保釈許可決定を得るためには、法律上の要件を正確に把握している上で、検察官の反論を予測して的確な請求をする必要がありますので、刑事事件に関する専門知識やノウハウが必要不可欠です。

刑事事件で、勾留されているご家族などの保釈をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

 

 

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