「家族法が改正され共同親権が導入されると聞いた。」

「家族法が改正され法定養育費制度が導入されると聞いた。」

このようなご相談を受けることがございます。
本コラムでは、家族法改正(令和6年法律第33号による民法改正)のポイントについて解説いたします。

★ 家族法改正は、公布の日(令和6年5月24日)から2年以内の政令で定める日から施行される予定であり、本コラム執筆時点(令和6年10月24日時点)ではまだ施行されておりませんので、ご留意ください。

 

【目次】

1 はじめに

2 ①親(父母)の責務の明確化

3 ②親権に関する改正

4 ③養育費に関する改正

5 ④親子交流(面会交流)に関する改正

6 ⑤財産分与等に関する改正

7 離婚・男女問題に関する当事務所の弁護士費用

8 おわりに

 

 

1 はじめに

令和3年3月頃からの法制審議会家族法制部会における調査審議等を踏まえ、令和6年5月17日、「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)が成立し、令和6年5月24日に公布されました。
この家族法改正では、①親(父母)の責務の明確化、②親権に関する改正、③養育費に関する改正、④親子交流(面会交流)に関する改正、⑤財産分与等に関する改正といった、家族法の重要な制度に関する大きな改正・見直しがなされています。

 

2 ①親(父母)の責務の明確化

改正法では、未成年の子に対する親権が「子の利益」のために行使されなければならないことを確認する基本的な規律を設けるとともに(改正民法第818条第1項)、親(父母)は、子の人格尊重義務、年齢・発達に配慮した養育義務、生活維持義務、子の利益のための父母相互の人格尊重協力義務などの親(父母)の責務を明確にしました(改正民法第817条の12)。

 

3 ②親権に関する改正

⑴ 親権行使に関する規律の整備
父母が婚姻中は双方が親権者となるところ(改正民法第818条第2項)、親権行使に際して、父母の意見対立などが生じた場合に対処するため、以下のとおり婚姻中を含めて単独で親権行使ができる場合が列挙されるとともに、特定の事項の親権行使につき、父母の協議が調わない場合には、家庭裁判所にその特定の事項に関する親権行使者を定めるよう請求できることとされました(改正民法第824条の2)。
ⅰ.単独親権者であるとき
ⅱ.他の一方が親権を行使できないとき
ⅲ.子の利益のため急迫の事情があるとき
ⅳ.監護及び教育に関する日常行為をするとき


⑵ (選択的)共同親権制度の導入等
改正法は、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」として、離婚時に共同親権とするか単独親権とするかをまずもって父母の協議に委ねることとするとともに(改正民法第819条第1項)、「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。」(改正民法第819条第2項)として、(選択的)共同親権制度を導入しました。
また、改正法は、裁判所が共同親権とするか、単独親権とするかの判断枠組み・考慮要素を、次のとおり明示しました(改正民法819条第7項)。

裁判所は、(中略)父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。

一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(略)を受けるおそれの有無、(中略)協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

 

4 ③養育費に関する改正

これまで、養育費は、父母双方において取決めがなされても、その取決めが執行認諾文言付き公正証書(執行証書)又は家庭裁判所の調停調書・審判などでない限り、養育費の未払いがある場合に、直ちに強制執行を申し立てることができませんでした。そこで、改正法は、養育費の取立ての実効性を確保するために、養育費に一般先取特権を認めることで優先弁済的効力を付与し、執行認諾文言付き公正証書(執行証書)又は家庭裁判所の調停調書・審判などを取得しなくても、差押えなどの強制執行を可能とする道が用意されました(改正民法第306条3号、308条の2)。
また、協議離婚の際に養育費を取り決めなかった場合においても、❶離婚をしたときを支払始期として、❷養育費の取決め、養育費審判の確定、子が成年に達したときのいずれか早い日までを支払終期として、❸毎月末日、法定養育費(父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額)の支払いを請求できることとされました(改正民法第766条の3第1項)。

★ この法定養育費制度は、家族法改正の施行日前に離婚等した場合には適用しないとされておりますので、離婚等が施行日前後など家族法改正が適用されるかご不安な場合は弁護士にご相談ください。

 

5 ④親子交流(面会交流)に関する改正

改正法は、これまで「面会交流」とされてきたものを「親子交流」と用語変更するとともに、親子交流が安定・継続してできるよう、親子交流の試行的実施の規定を設けるなどしました(改正民法817条の13、改正家事事件手続法第152条の3)。また、子の祖父母等に親子交流を特別に認める必要がある場合、当該祖父母等が親子交流を求めることができるとされました(改正民法766条の2)。

 

6 ⑤財産分与等に関する改正

改正法は、離婚時の財産分与につき、財産分与を請求できる期間を2年から5年に伸ばすとともに、次のとおり財産分与における考慮要素・原則的寄与割合(2分の1ルール)を明示しました(改正民法768条)。

★ この財産分与請求期間は、家族法改正の施行日前に離婚等した場合には、なお従前の例(2年)によるとされておりますので、離婚等が施行日前後など家族法改正が適用されるかご不安な場合は弁護士にご相談ください。

(財産分与)
第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から5年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

 

 離婚・男女問題に関する当事務所の弁護士費用

離婚・男女問題に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/divorce/#00002


8 おわりに

令和6年法律第33号による家族法改正は、これまで解説したとおり家族法の重要な制度に関する大きな改正・見直しがなされるものであり、また、実際に施行されてからの裁判実務の動向(裁判所の解釈運用)にも目を配る必要があります。
離婚・男女問題でお困りの場合は、まずはお気軽に弁護士にお問い合わせください。

 

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