「外国人の賃借人に対し明渡請求訴訟をしたいが、所在が分からない。」
「外国籍の家族(配偶者等)に対し、人事訴訟(離婚訴訟等)をしたいが、所在が分からない。」
このようなご相談を受けることがございます。
本コラムでは、裁判の相手方が外国人の場合の所在調査等について解説いたします。
【目次】
1 はじめに
2 (外国人)住民票の取得
3 弁護士会照会による外国人登録原票の取得
4 外国の住所に郵便物が届かない場合-外国公示送達
5 当事務所の弁護士費用
6 おわりに
1 はじめに
本コラム冒頭の事例のような裁判(訴訟)手続を行うためには、裁判の相手方の住所・居所といった所在が判明していることが必要になります。裁判は、訴状等の裁判書類に相手方の氏名・住所を記載するべきことが民事訴訟法等で規定されているとともに、裁判の相手方に裁判書類を送達し、反論の機会を与える必要があるためです。
しかしながら、裁判の相手方の住所・居所が分からないという場合も往々にしてあり、特に外国人(外国籍)を相手方とすることを想定する際には、日本における住所・居所のみならず、本国(国籍国)の住所・居所も分からない、という場合があり得ます。
2 (外国人)住民票の取得
この場合、まずは日本国内に住所登録をしていないかを調べることになります。そして、平成24年7月9日以降の住所については、住民基本台帳法の改正により、適法に3か月を超えて在留する外国人であって、日本に住所を有する外国人についても、日本人と同様に住民票(外国人住民票)が作成・交付されるようになりましたので(総務省ウェブサイトの「外国人住民に係る住基台帳制度」参照)、同一世帯の方による請求又は弁護士の職務上請求により、この取得を試みることになります。この外国人住民票が取得できた場合には、まずはそこに記載されている住所に宛てて文書を郵送することになります。
3 弁護士会照会による外国人登録原票の取得
外国人住民票が取得できない、又は外国人住民票が取得できたものの、そこに記載された住所には居住実態がない(郵便物が届かない)、という場合には、弁護士会照会による外国人登録原票の取得を試みることになります(この弁護士会照会は、弁護士に具体的な事件を依頼した上で弁護士でなければ行うことができません。)。具体的には、ご依頼された弁護士が弁護士会を通して、東京出入国在留管理局宛てに外国人登録原票記載事項(外国人の国籍国における住所又は居所等が記載されているもの)の回答送付を求めることになります。この回答が取得でき、国籍国における住所・居所が判明した場合には、そこに宛ててエアメールを送り、外国の住所に郵便物が届くかを確認することになります。
4 外国の住所に郵便物が届かない場合-外国公示送達
以上の2、3の調査手続をしてもなお外国の住所が判明しない場合には、民事訴訟法第110条第1項1号等の規定に基づき、外国公示送達(日本の裁判所の掲示場に、裁判所書記官が裁判書類を保管しており、いつでも裁判所において受け取ることができる旨を掲示するもの)の申立てをすることになります。この外国公示送達が認められた場合には、掲示をしてから6週間が経過することにより、裁判書類送達の効果が生じることになり、相手方の外国の住所が判明しない場合においても裁判手続を開始することができるようになります。
5 当事務所の弁護士費用
本コラム冒頭の二つの事例における弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
不動産問題 https://kl-o.jp/estate/#hudousanhiyou
離婚・男女問題 https://kl-o.jp/divorce/#00002
※ 外国人が裁判の相手方となるケースでは、裁判書類の翻訳料等の費用もかかる場合があります。
6 おわりに
本コラムで解説したとおり、所在が判明していない外国人の所在調査には、弁護士会照会等の特別な手続を必要とする場合があります。
また、外国人が裁判の相手方になる場合には、①そもそも日本の裁判所で裁判をすることができるかという問題(国際裁判管轄の問題)、②日本の裁判所で裁判ができるとして、どこの国の法律が適用されるかという問題(準拠法の問題)、③裁判文書の外国送達の問題(一般に、外国宛てに裁判文書を送達する場合には、送達に係る期間だけで半年以上かかる場合もあります。)、といった「日本人同士が日本の裁判所で日本の法律で裁判する。」場合と異なった専門的な知見が必要になる場合があります。外国人が裁判の相手方になる場合は、まずは弁護士にご相談ください。
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