「市役所から空き家に対する勧告書が届いて驚いている。」
「隣の家が空き家であり、今にも崩れそうで不安。」
近年、空き家問題に注目が集まっていることから、このようなご相談を受けることがございます。
本コラムでは、そのようなトラブルを解決するために用意されている、空き家対策特別措置法による空き家対策について幅広に解説いたします。
【目次】
1 空き家、特定空き家とは
2 特定空家等に対する措置
3 空き家問題を含む不動産事件・相続事件に関する当事務所の弁護士費用
4 おわりに
1 空き家、特定空き家とは
空き家とは、一般には誰も居住していない家をいい、このような空き家は、国土交通省によれば20年間で約2倍(平成10年180万戸→平成30年350万戸)に増え、今後も増えていくことが見込まれています。このような空き家は、実家を相続したものの相続人がもともと居住しておらず、かといって解体費用も掛けられないために放置されたり、居住していた高齢者が介護施設に入所するなどといったことにより発生します。
皆さまもお住まいの街を歩いていただくと、傍目には人が住んでいなさそうな家や一見して崩れたりするのではないかという不安を抱く家を見かけることもあるのではないかと思います。このような空き家が放置されたままであると、火災の原因、倒壊の原因、害虫による衛生の悪化、街並みの景観の悪化、不法侵入といった治安の悪化など地域社会の生活環境に深刻な影響を与えることとなります。
そこで、もともとは地方自治体が1990年代頃から空き家条例を定めていた流れの中で、このような「空き家問題」が全国的な課題になったことから、2014年に空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)が制定され、2015年5月から施行されています。
そして、空き家対策特別措置法は、「空家等」として、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」(第2条第1項)と定義するとともに、放置すると特に危険な空き家等を「特定空家等」(2条第2項)として、後述の行政措置を執ることができるようにしています。
…空家等のうち、
①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
のいずれか一つにあたるもの。
具体的にどのような状態にあるものが特定空家等にあたるかについては、『管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)』(国土交通省作成)のほか、各地方自治体が策定している判断基準を参考にすることになります。
2 特定空家等に対する措置
⑴ 行政上の措置
市長村長は、①所有者の確認、②立入調査、③特定空家等の認定、④助言・指導、⑤勧告・命令、⑥行政代執行、⑦費用の徴収という基本的な流れに沿って、特定空家等の除却(解体)等の解決を目指すことになります。
例えば、相続により放置された空き家の相続人(所有者)は、登記事項証明書、戸籍調査等をすることにより相続人を特定した地方自治体から、③の立入調査の通知、又は、④の助言・指導に関する書面を受け取ることによって、ご自身が「空き家問題」を抱えていることを知ることになります。
そして、このような流れを経て、相続人の間で解体(費用の負担)について協議して解体をすることなどによって、解決を目指すことになります。
空き家対策特別措置法及び行政代執行法によって、市町村長は強制的に空き家の解体(⑤~⑥)、解体費用の徴収(⑦)をすることもでき、実際、近年はそのようなケースも見受けられますが、多くは④の助言・指導に応じた対応がなされることにより解決するのが一般的です。
⑵ 地方税法上の措置
ア 空き家対策特別措置法における前記勧告を受けた場合、地方税法上の「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」の適用を受けることができなくなるため(地方税法第349条の3の2第1項)、勧告の対象となった特定空家については、敷地の固定資産税が4倍以上に上がることになります。
イ また、固定資産税の滞納をしている場合もまま見受けられますので、固定資産税の滞納に基づく滞納処分・公売により、空き家問題の解決を図ることもあります。
⑶ 民法上の措置
その他、相続放棄等により相続人がいない場合には、民法上の相続財産清算人の申立てを地方自治体が行い、裁判所の許可を受けて特定空家等の売却をすることで空き家問題の解決を図ることもあります。
3 空き家問題を含む不動産事件・相続事件に関する当事務所の弁護士費用
地主で土地を貸している方は、借地上の建物所有者が所在不明で空き家になったことなどから、地方自治体から借地上の特定空家につき立入調査を受け、それをきっかけとして建物収去土地明渡しを考える場合もあり得ます。その場合の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
不動産事件に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/estate/#hudousanhiyou
空き家は遺産分割未了物件であるケースも相当数あり、遺産分割のアプローチで問題を解決する場合もあり得ます。その場合の相続の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://souzoku-katsushika.com/cost/#i-3
4 おわりに
本コラムで概説したとおり、空き家問題の解決にはさまざまなアプローチがあり、空き家を抱える方、空き家に悩む方にとって、アプローチごとに適切に対応する必要があります(多くの場合は、空き家の危険性を踏まえて、解体費用を最終的に誰が負担しなければならないかに左右されることになります。)。
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