近年、人気漫画やアニメ、ゲーム機、ライブチケットなどが発売と同時に買い占められ、フリマアプリ等で定価の何倍もの価格で転売されるという事態が頻発しています。いわゆる「転売ヤー」と呼ばれる人々の行為は、消費者の不満を呼び、企業のブランドイメージを損ねるだけでなく、社会的にも問題視されています。
しかし、「転売」はそもそも違法なのでしょうか?
本コラムでは、転売行為がどのような場合に法律に抵触する可能性があるのか、企業が取るべき対策は何かなどについて解説します。
【目次】
1 転売行為は法律違反になるのか?
2 企業がとるべき対策
3 消費者側の注意点
4 当事務所の弁護士費用
5 おわりに
1 転売行為は法律違反になるのか?
商品を購入し、それを他人に売却すること自体は、私法上の原則として自由であり、直ちに違法とはなりません。ただし、以下のようなケースでは、一定の法令に違反する可能性があります。
〇 古物営業法違反
営利目的で反復継続して中古品等を売買する場合、「古物営業法」に基づく古物商の許可が必要となります(同法第3条)。例えば、限定のブランド品を仕入れ、インターネットオークションで反復継続して何度も転売しているようなケースでは、無許可営業として刑事罰の対象になり得ます(同法第31条。3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
〇 特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(通称「チケット不正転売禁止法」)違反
令和元年に施行された「チケット不正転売禁止法」は、興行チケットについて、主催者の同意なく定価を超える価格で販売することを禁止しており、これに違反した場合は刑事罰の対象となり得ます(同法第2条、第3条、第9条。1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれらの併科)。
〇 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称「医薬品医療機器等法」)違反
マスクや新型コロナ関連の検査キットなど、医薬品・衛生用品の一部は、販売に当たって許可が必要です。これらを無許可で転売した場合、「医薬品医療機器等法」違反として刑事罰の対象となり得ます(同法第24条、第84条。3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科)。
〇 不正競争防止法違反
転売そのものではありませんが、正規品の転売を装い、不正表示・虚偽表示や、正規品と誤認させるような販売方法は、不正競争防止法第2条1項1号(周知表示混同惹起行為)、2号(誤認惹起行為)に違反し、営利目的で故意に反復継続した場合には刑事罰の対象となり得ます(同法第21条3項。5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれらの併科)。なお、購入者との関係では詐欺にあたり得る場合があります。
2 企業がとるべき対策
転売対策は、販売元企業にとっても重要な課題です。企業がとり得る具体的な対応策は種々ありますが、その一例をご紹介します。
〇 利用規約・販売契約への「転売禁止条項」の明記
自社ECサイトや店舗で商品を販売する際、購入者との間で「転売禁止」の規定や違反時の制裁規定(損害賠償、契約解除)を設けておくことで、事実上の抑止効力のほか、契約違反としての法的対応が可能になります。
〇 購入方法の工夫
・ 抽選販売
・ 購入個数制限
・ 本人確認の強化(IDとの照合など)
これらの方法により、転売目的の大量購入を防止する実効性が高まります。
〇 フリマアプリ・プラットフォーム事業者との連携
不正転売を発見した場合、フリマアプリ運営企業に削除要請を行うなど、継続的な連携体制の構築も有効です。
3 消費者側の注意点
高額で転売商品を購入した場合、以下のようなリスクがあります。
〇 保証やサポートの対象外となる可能性
〇 偽物や模倣品の混入の可能性
〇 商品に不具合があっても返品・交換できない可能性
〇 法令違反の商品を購入・所持したことで、被疑者として捜査の対象となったり、企業から損害賠償請求されるなどの思わぬトラブルに巻き込まれる可能性
4 当事務所の弁護士費用
転売対策や現に転売をされてしまい対応に苦慮されている企業のご相談も承っております。企業顧問に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
交渉等の具体的な対応を弁護士が実施する場合は、一般の顧問料に加え、対応内容に応じた別途の費用を頂戴し、実施することとなります。
https://kl-o.jp/corporateadvisor/#companycost
また、前記のような刑事上許されない転売を行い刑事事件に発展してしまった(あるいは発展する可能性のある)お客様のご相談も承っております。刑事弁護に関する弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/crime/#00003
5 おわりに
転売問題は、ブランド価値や顧客との信頼関係を損なうだけでなく、違法行為が絡む場合は企業の法的責任に波及する可能性もあります。
当事務所では、企業顧問において、予防的・対処的な業務を通じて、企業の転売リスクを最小限に抑えるサポートさせていただきます。
また、違法な転売行為に関与し、刑事罰に問われる可能性のある方の刑事弁護も行います。
お困りの場合は、まずはお気軽に弁護士にお問い合わせください。
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