(令和8年5月15日、コラム更新しました。)
「養育費について合意書面を作成したが支払われない。どのような手続をすれば良いか。一般的には養育費の問題は調停からと聞くので、調停を行うべきなのか。」
このようなご相談を受けることがございます。
本コラムでは、夫婦問題、相続問題の際の紛争解決手続選択の重要性について解説いたします。
【目次】
1 家事調停と民事訴訟の区別
2 婚姻費用・養育費を例にとって
3 離婚・男女問題に関する当事務所の弁護士費用
4 おわりに
1 家事調停と民事訴訟の区別
夫婦問題(親子問題)、相続問題といった紛争を解決するための手続として、以下の法的手続が用意されています。
①家事調停(家庭裁判所において調停委員が関与して行われる協議-家事事件手続法)
②民事訴訟(地方裁判所(訴額140万円以下の場合は簡易裁判所)において裁判官が判決で権利関係を判断する訴訟-民事訴訟法)
そして、ひと口に夫婦問題(親子問題)、相続問題といっても、それらの紛争を解決するためには、これらの法的手続の中から最適なものを選択する必要があります。なぜならば、それぞれの法的手続ごとに解決できる問題に区別・限界があるからです。
そこで以下では、「婚姻費用・養育費」を例にとって、このことを解説いたします。
※ 人事訴訟(家庭裁判所において裁判官が判決で離婚等を判断する訴訟-人事訴訟法)もありますが、このコラムでは割愛します。
2 婚姻費用・養育費を例にとって
⑴ 婚姻費用・養育費につき、数は多くはないかもしれませんが別居・離婚時にインターネットの情報などを参考に、(公証役場で公証人が関与して作成する「公正証書」ではなく)当事者双方が署名押印したお手製の「合意書」(「離婚するまで毎月末日限り●万円を支払う。」など)を作成する場合があろうかと思います。
⑵ このような合意書がある場合において、相手方が支払いを怠るようになったときは、前記①の家事調停の申立て、または、前記②の民事訴訟の提起が考えられるところです。
この点、家庭裁判所の実務においては、養育費等について当事者の間に合意が成立している場合であっても、その合意を強制執行ができるような形にするために家事調停が申し立てられたときは、直ちに民事訴訟の提起を促すのではなく、その合意内容を踏まえて家事調停において解決するという運用がなされているところです。
ただし、あくまでも権利者が合意書による合意に基づく養育費の支払いを求める場合には、養育費の協議が調わない場合または協議ができない場合にすることとされている家事審判を申し立てることはできず、地方裁判所に民事訴訟を提起すべきであるとする裁判例(東京高等裁判所令和5年5月25日決定・判タ1522号118頁)もあるところです。
「合意書」があるようなケースでは、その合意書の作成経緯、合意内容(の明確性・確定性)、義務者が支払いを拒絶する事情等を踏まえて、紛争解決のための最適な手続を選択する必要があります(前記東京高裁決定では養育費支払請求審判の申立てが「却下」されているため、家事調停での解決は断念し、あらためて民事訴訟を提起せざるを得ないことになります。)。
⑶ なお、令和8年4月1日施行の改正民法により、養育費や、婚姻費用のうち子の監護に要する費用に相当する部分の請求権には、一般の先取特権が認められました(民法第306条第3号、第308条の2)。そのため、毎月の支払額と支払期限を定めた合意書があれば、判決や調停調書がなくても、その合意書を先取特権の存在を証する文書として、子1人当たり月額8万円を上限に、給与等の差押えを申し立てることができる場合があります(民事執行法第193条第1項、令和7年法務省令第56号第1条)。ただし、対象は令和8年4月1日以後に生じた分に限られ、合意書が相手方の意思に基づいて作成されたことを示す必要もありますので、手続選択にあたっては、これらの点も踏まえて検討する必要があります。
3 離婚・男女問題に関する当事務所の弁護士費用
離婚・男女問題に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
なお、合意書がある事案において、強制執行できる形にするべく訴訟提起をする場合は、定型的な費用で対応できないケースもございますので、その際はお気軽に個別見積をお申し付けください。
https://kl-o.jp/divorce/#00002
4 おわりに
家族問題を適正に解決するためには、ご自身の主張立証の中身ももちろん大切ですが、どのような法的手続を選択するかということも同じように大切になります。
手続選択を誤ると、たとえば無意味な調停を申し立てて時間を浪費してしまう場合もあり得ます。
離婚・男女問題でお困りの場合は、まずはお気軽に弁護士にお問い合わせください。
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