「私は地主です。私が所有している土地を借地人に貸しており、その借地人が建物を建てているのですが、地代の支払いが滞っています。また、借地人はその建物を第三者に賃貸しているようです。訴訟をして建物の収去と土地の明渡しを求めようと思うのですが、インターネット検索やAIの回答によれば、訴訟提起の前に『仮処分』をする必要がある場合があるとのことでしたが、どういうことでしょうか。」

このようなご質問は、多くのお客様から寄せられる質問です。
このコラムでは、「建物収去土地明渡請求権を保全するための仮処分」について説明します。

【目次】
1 事例
2 仮処分をしていないとどうなるか
3 建物処分禁止仮処分と建物占有移転禁止仮処分
4 仮処分の手続の大まかな流れ
5 仮処分に関する当事務所の弁護士費用
6 おわりに

1 事例

このコラムでは、以下の事例を踏まえて、仮処分について説明します。

地主であるAさんは、Bさんに土地を貸し、Bさんはその土地上に自己名義の建物を建てて住んでいました。しかし、Bさんは地代を1年以上滞納し、さらに最近では、Aさんに相談することなく建物をCさんに貸して、自分はどこかへ引っ越してしまったようです。 Aさんは、Bさんとの借地契約を解除し、建物を壊して土地を返してもらいたい、Cさんには建物を出て行ってもらいたいと考えており、そのために民事訴訟の提起を予定しています。

2 仮処分をしていないとどうなるか

先ほどの事例において、「建物収去土地明渡請求の強制執行」「建物退去土地明渡請求の強制執行」の二つの強制執行を実現するためには、まず裁判(民事訴訟)を提起して、裁判所から、「Bは建物を収去して土地を明け渡せ」「Cは建物を退去して土地を明け渡せ」という勝訴判決(債務名義となる確定判決)を得る必要があります。

しかし、裁判には数ヶ月から1年程度の時間がかかります。もし、裁判の途中(より厳密には「口頭弁論終結前」と言います。※1)にBさんが建物をさらに別のDさんに売却したり、建物の占有をEさんに移したりしてしまった場合、せっかくBさんに対して勝訴判決を得ても、その判決に基づいてDさんやEさんに対して強制執行をすることができなくなってしまいます。 そうなると、Aさんは改めてDさんやEさんを相手に裁判をやり直さなければならず、時間も費用も無駄になってしまいます。

このように民事訴訟が空振りに終わってしまう事態を防ぐためにするのが、次の「建物処分禁止仮処分」と「建物占有移転禁止仮処分」という二つの「仮処分」手続になります。

※1 「建物処分禁止仮処分」と「建物占有移転禁止仮処分」をしない場合には、要するに裁判係属中に建物が売却されていないか、建物の占有が移転していないかを常時、登記簿や現地確認により把握して、これらが判明した場合には、裁判所にその都度「訴訟引受の申立て」をして、新たな建物所有者、建物占有者を訴訟に引き込む必要があることになりますが、このような「常時監視」「適時の訴訟引受の申立て」が大変な労力を伴うものであることは想像に難くないかと思います。

3 建物処分禁止仮処分と建物占有移転禁止仮処分

建物の収去と土地の明渡しを求める場合、一般的には以下の2つの仮処分をすることになります(※2)。

■ 建物処分禁止仮処分: Bさんが建物を他人に売却したり、名義を変更したりすることを禁止します。これにより、裁判が終わるまで「建物の所有者」をBさんに固定します。

■ 建物占有移転禁止仮処分: Bさん(やCさん)が、建物の占有をさらに別の誰かに移すことを禁止します。これにより、「土地を占有している者」を現在の状態で固定します。

これらを行うことで、裁判で勝訴した後に、確実に「建物収去土地明渡しの強制執行」へ進むことが可能になります。

※2 建物が土地の一部を占めているに過ぎない場合は、「『土地』の占有移転禁止仮処分」の申立てが必要なケースもあります。

4 仮処分の手続の大まかな流れ

仮処分の手続は、通常の裁判(本案訴訟)よりも迅速に行われます。

① 仮処分の申立て: 裁判所に対し、仮処分が必要な理由(被保全権利の存在と保全の必要性)を記載した申立書を提出します。

② 裁判官との面接(審尋): 弁護士が裁判所へ行き、裁判官に事情を説明します。

③ 担保金の積み立て(供託): 仮処分は暫定的な処置であるため、万が一、後の裁判で地主側が負けた場合に備え、一定の「担保金」を法務局に預ける必要があります。金額は事案によります。

④ 仮処分命令の発令: 裁判所から禁止命令が出されます。

⑤ 仮処分の執行(処分禁止の登記、公示書の貼付けなど):裁判所書記官が処分禁止の登記の手続をするとともに、執行官が現地に赴き、建物の壁などに「この建物の占有を移してはいけません」といった内容の「公示書」を貼り付けます。

5 仮処分に関する当事務所の弁護士費用

仮処分に関する当事務所の弁護士費用は、事案の複雑さなどにより変動しますが、概ね以下の通りです。 詳細は、以下のリンク(当事務所の不動産トラブルに関する費用ページ)もご参照ください。

https://kl-o.jp/estate/#hudousanhiyou

着手金: 30万円〜(税別)

6 おわりに

せっかく裁判で勝っても、強制執行ができなければ意味がありません。悪質な債務者や、占有者が頻繁に変わる可能性があるケースでは、仮処分の検討は不可欠です。

「執行妨害は許さない。」という毅然とした対応をお考えの場合は、手遅れになる前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。当事務所では、仮処分から訴訟、そして強制執行まで一貫してサポートさせていただきます。

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