ここ数年で一気に広まった「退職代行サービス」。
連日ニュースやSNSで取り上げられ、最近では一部業者に対する捜査が報じられるなど、良くも悪くも注目を集めています。
一方で、退職代行で会社を辞めたものの、
「よく考えたら、未払い残業代もありそうだ」
「退職金やボーナスが出ていない気がする」
「業者からは“そこまではできません”と言われた」
というご相談も少なくありません。
実は、退職代行サービスができること・できないことには、法律上はっきりとした線引きがあります。
未払い残業代や未払い退職金を退職代行業者が交渉によって獲得することはできません。
この記事では、
退職代行サービスの法的な位置づけ
弁護士が行う退職代行との違い
退職代行の後に、未払い残業代・退職金まで請求する流れ
を、弁護士の視点から分かりやすく解説します。
目次
1.退職代行は「合法」?どこからがNG?
(1)退職代行そのものの利用は原則OK
(2)問題になるのは「交渉」=法律事務
2.退職代行サービス“だけ”ではできないこと
3.弁護士に退職代行を任せると何が違うのか
4.退職代行から未払い残業代・退職金請求までの流れ
(1)法律相談・見通しの確認
(2)証拠・資料の収集
(3)退職の通知と弁護士受任通知
(4)金額の算定(未払い残業代・退職金など)
(5)会社との交渉・労働審判・訴訟
5.「まずは格安の退職代行、その後に弁護士」はアリ?
6.こんな場合は最初から弁護士の退職代行を
7.まとめ――退職代行は「ゴール」ではなく「スタート」
8.当事務所へのご相談をお考えの方へ(弁護士費用のご案内)
1 退職代行は「合法」?どこからがNG?
⑴退職代行そのものの利用は原則OK
まず押さえておきたいのは、
退職代行サービスを使って会社を辞めること自体は、原則として合法と考えられている点です。
退職は労働者に認められた権利であり、「本人の退職の意思表示を、第三者が会社に伝える」こと自体は法律上問題ない、という整理が一般的です。
⑵問題になるのは「交渉」=法律事務
注意が必要なのは、業者がどこまで踏み込んで会社とやりとりしているかです。
弁護士でない業者が、
未払い残業代や退職金の有無・金額について会社と交渉する
有給休暇の買い取りや損害賠償の有無など、法的な権利義務を調整する話し合いをする
といった行為は、「法律事務」にあたり、弁護士法72条が禁止する非弁行為に該当するとされています。
利用者本人が処罰されるケースは通常想定されていませんが、違法なおそれのある業者に依頼すると、
「退職できていない」「無断欠勤扱いにされる」「後からトラブルがこじれる」などのリスクも指摘されています。
2.退職代行サービス“だけ”ではできないこと
民間の退職代行サービス(弁護士事務所が運営していないもの)は、「退職の意思を会社に伝える」ことを中心としたサービスにとどまります。
そのため、次のような対応は、原則として弁護士でなければ行えません。
- 未払い残業代・未払い賃金の請求や交渉
- 未払い退職金・未払いボーナスの請求
- 有給休暇の買い取りをめぐる交渉
- 退職合意書の内容(競業避止義務・損害賠償条項など)のチェックと修正交渉
- パワハラ・セクハラ等に対する損害賠償請求
- 労働審判・訴訟の代理人としての活動
「退職だけは代行業者に頼んで、
お金の請求はそのうち自分で会社に言ってみる」
という方もいらっしゃいますが、心情的にも対立当事者である会社と直接やり取りをすることは抵抗感がある方も少なくないと思われます。また、退職代行を使用したことで、使用者の態度が硬直化し、その後に自分自身で会社に連絡をしたとしても適切な対応をとってもらえないというケースも多くございます。
あらかじめ想定される残業代などの請求を、法的にきちんとした形で請求・交渉するためには、退職段階から弁護士に依頼することは、有用です。
3.弁護士に退職代行を任せると何が違うのか
弁護士に退職代行を依頼した場合、
退職の連絡から、未払い分の請求・交渉、その後の手続までワンストップで対応することが可能です。
弁護士に依頼した場合にできる主なこと
- 会社への退職の意思表示の代行(内容証明郵便・電話・書面など)
- 未払い残業代・未払い賃金・退職金・ボーナス・有給休暇の消化・買取など
- お金に関する請求と交渉
- 退職合意書・誓約書のリーガルチェック
- 労働審判・訴訟の提起と代理人としての活動
- 会社からの「損害賠償請求する」「懲戒解雇にする」などの言い分への法的な反論
退職代行サービスでは「そこまではできません」と言われてしまう部分まで、
弁護士なら継続して対応できる点が大きな違いです。
4.退職代行から未払い残業代・退職金請求までの流れ
ここでは、弁護士に依頼した場合の一例として、
「退職代行+未払い残業代・退職金請求」の流れを簡潔にご紹介します。
⑴法律相談・見通しの確認
いつからどのくらい働いていたのか
どの程度の残業や休日出勤があったのか
給与・賞与・退職金の支払い状況
ハラスメントの有無、心身の不調の有無
などをお伺いし、請求が見込めそうな内容と金額の目安、
時効リスク(どこまで遡れるか)を整理します。
⑵証拠・資料の収集
例えば、次のような資料を集めます。
- 雇用契約書・入社時の条件通知書
- 就業規則・賃金規程
- タイムカード・勤怠システムの画面、シフト表
- 給与明細・賞与明細
- 退職金規程や就業規則の該当条文 など
資料が揃っていなくても、メールの送受信履歴や手帳のメモなどから労働時間を推認できる場合もあります。
また、退職の意思を通知する際に、このような資料の開示を会社に書面で要求することもよくあります。
⑶退職の通知と、弁護士受任通知
弁護士名で会社に対し、
退職の意思表示
今後の連絡窓口を弁護士とすること
未払いの可能性がある残業代・賃金・退職金等について、
必要な資料の開示・支払いを求める旨 など
を記載した書面を送付します。
本人は会社と直接やりとりする必要がなくなり、
精神的な負担を大きく減らすことができます。
⑷金額の算定(未払い残業代・退職金など)
集めた資料をもとに、
基本給や各種手当を含めた「割増賃金の基礎単価」
実際の残業時間・休日労働・深夜労働
支払われているはずの退職金の算定方法
を踏まえて、請求額を具体的に計算します。
現在、残業代などの賃金請求権の時効は、法改正により5年(当分の間は3年)とされており、現時点では3年間の時効が原則とされています。
「どこまで遡れるか」で金額が大きく変わりますし、就労期間によっては時事刻々と未払残業代請求権が消失していくこともありますので、早めに相談することが重要です。
⑸会社との交渉・労働審判・訴訟
まずは任意の交渉での解決を目指し、
支払金額・支払方法(分割払いなど)を協議します。
合意に至らない場合は、
労働審判
訴訟
といった裁判所の手続を利用し、弁護士が代理人として手続を進めます。
5.「まずは格安の退職代行、その後に弁護士」はアリ?
法律上は「その後に弁護士」も可能だが…
民間の退職代行サービスを利用して辞めたあとで、
改めて弁護士に未払い残業代・退職金の請求を依頼すること自体は可能です。
ただし、現場の感覚としては、次のようなリスクがあります。
業者が違法なおそれのある「交渉」をしてしまい、
かえって会社との関係がこじれている
退職時点で必要な証拠を確保しておらず、後から資料が手に入りにくくなる
時効がじわじわと進行し、気づいた時には古い分が請求できなくなっている
「お金の請求も視野に入っている」のであれば、
最初から弁護士に相談することを強くおすすめします。
6.こんな場合は最初から弁護士の退職代行を
次のような事情がある方は、
民間の退職代行サービスではなく、弁護士への相談を優先した方が安心です。
サービス残業やサービス休日出勤が慢性的にあった
給与明細と実際の働き方が合っていない気がする
退職金が本来出るはずかどうか知りたい
退職を申し出たら「損害賠償請求するぞ」「懲戒解雇にする」などと脅されている
競業避止義務や高額な違約金条項のある誓約書にサインさせられている
これらは、退職という“入口”の問題だけでなく、退職後の生活やキャリアに直結する“出口”の問題でもあります。
7.まとめ――退職代行は「ゴール」ではなく「スタート」
退職代行サービスの利用自体は原則合法だが、未払い残業代や退職金などを「交渉」することは弁護士にしかできない法律事務
弁護士に依頼すれば、退職の連絡だけでなく、未払い残業代・未払い賃金・退職金・有給休暇の処理など、お金の問題まで一体として解決を目指せる。
賃金・退職金には時効(原則3年)があるため、
「退職だけ先に済ませて、請求はいつか…」と先送りにすると、請求できる範囲がどんどん狭くなる(時効の中断を行う必要がある)。
8.当事務所へのご相談をお考えの方へ(弁護士費用のご案内)
退職代行サービスの利用を検討しているが、不安がある
退職と同時に、未払い残業代・退職金の請求も考えたい
すでに退職代行を使って辞めてしまったが、お金の面が心配
このようなお悩みがあれば、どうぞ一度ご相談ください。
当事務所では、退職代行と未払い残業代・退職金請求をセットで検討し、
依頼者の方の今後の生活を見据えた解決を目指していきます。
当事務所の退職代行や残業代請求を含む未払賃金の対応等の労働事件に関する弁護士費用は以下のページをご参照ください。
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