【後編】
目次
1 労災保険とは
⑴ はじめに
⑵ 労災保険を受けることができる場合
⑶ 労災保険の主な内容-交通事故の主な損害との対応関係
(以上,前回の記事)
2 交通事故と労災保険
3 特別支給金制度
4 おわりに
(以上,今回の記事)
2 交通事故と労災保険
社用車運転中などの勤務中の交通事故の場合,先ほど説明した労災保険を受けることができるか否かの基準(仕事中の怪我か否か)によれば,この場合,加害者(の加入する任意保険会社)に対する損害賠償請求だけでなく,労働基準監督署長に対する労災保険給付支給請求もすることができます。
もっとも,どちらの請求もできるとはいえ,例えば,前回の記事でも掲げた次の【対応関係図】の網掛け部分をみますと,加害者の加入する任意保険会社から休業損害を受け取り,重ねて労災保険からも休業補償給付を受け取る,といったいわば二重取りをすることができるわけではありません(この二重取りを防ぐための調整を「併給調整」といいます。)。
【対応関係図】
労災保険の主な給付 | 交通事故の主な損害 |
療養補償給付 | 治療費 |
休業補償給付 | 休業損害 |
障害補償給付 | 後遺障害による逸失利益 |
遺族補償給付 | 死亡による逸失利益 |
3 特別支給金制度
では,勤務中の交通事故の場合に,労災保険給付支給請求をすることに意味がないかというと,そのようなことはもちろんありません。
労災保険法は,先ほど説明した労災保険給付のほか,業務災害に遭われたお仕事をされている方の社会復帰の促進などのために社会復帰促進事業を行うこととしています。
この社会復帰促進事業の一環として,休業特別支給金(平たく言えば給料の20パーセントです。)や障害特別支給金(平たく言えば障害等級に応じた固定の給付金が受給できる制度です。)といった各種の特別支給金が支給されることとされています(労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条,第4条参照)。
そして,ここが最も重要なポイントですが,この特別支給金については,最高裁判所の判例上,先ほど説明した併給調整の対象とはならず,そのまま被害者の方の手元に残ることになります(最判平成8年2月23日・民集50巻2号249頁)。
ですので,この特別支給金を受けることができる場合には,是非とも労災申請のうえ,請求をすべきです。
4 おわりに
労災保険と交通事故の関係については,今までご説明したこと以外にも,難しい法的論点や実務上の取り扱いがあります。
「仕事中に交通事故に遭ったけれど,どうすればいいか分からない。」という場合には,丁寧にご説明をさせて頂きますので,まずはお気軽にお問合せください。
お電話でのお問い合わせ
平日9時~18時で電話対応