「離婚のときに財産分与を話し合うことなく離婚だけしてしまい、離婚した夫/妻がわたし名義の家に住み続けているが明け渡しを求めることはできないのか。」
「離婚訴訟において、離婚することとなる夫/妻に対してわたし名義の家の明け渡しを求めることはできないのか。」
こういったご相談をお受けするケースがございます。
今回の記事では、財産分与で不動産の明渡しを求めることができるかについて解説していきます。
【目次】
1 従前は民事訴訟を提起して明け渡しを求める必要があった
(最高裁令和2年8月6日決定以前の家庭裁判所実務)
2 別途の明け渡しを求める訴訟提起を不要とする最高裁令和2年8月6日決定の登場等
3 まとめ─財産分与で不動産の「明渡し」まで求めることができるか
4 離婚訴訟を弁護士に依頼するメリット
5 当事務所の離婚・男女問題の弁護士費用
6 おわりに
1 従前は民事訴訟を提起して明け渡しを求める必要があった(最高裁令和2年8月6日決定以前の家庭裁判所実務)
離婚した元配偶者、あるいはこれから裁判離婚することになる配偶者(以下「Y」といいます。)が住んでいる他方配偶者X名義の不動産につき、これをXが取得することとなった場合、これまでの一部の家庭裁判所実務では、「財産分与審判」または「離婚訴訟」においてXがYに対して明渡しを求めることはできず、明け渡しを求める場合には別途「民事訴訟」を提起しなければならないという前提に立っているものがありました。このような前提に立つと、Xとしては、①「財産分与審判」または「離婚訴訟」で決着をつけたあとに、さらに②Yに対し明渡しを求める「民事訴訟」を提起しなければならないという問題点がありました。
2 別途の明け渡しを求める訴訟提起を不要とする最高裁令和2年8月6日決定の登場等
⑴ 最高裁令和2年8月6日決定の登場
このような家庭裁判所実務も見られた中で、最高裁令和2年8月6日決定(民集74巻5号1529頁)が登場しました。この最高裁決定は、XからYに対する不動産の明渡しに関し、Xが所有しYが占有する不動産につき財産分与に係る給付命令としての不動産の明渡しを認めるものです。
⑵ 最高裁令和2年8月6日決定の事案の概要
最高裁令和2年8月6日決定の事案の概要は、図示すると次のとおりです。
⑶ 最高裁令和2年8月6日決定の内容
上記事案において、原審(令和元年6月28日東京高裁決定令元(ラ)909号)は、従前の家庭裁判所実務に沿い「当該一方当事者(X)が当該他方当事者(Y)に対し当該不動産の明渡しを求める請求は,所有権に基づくものとして民事訴訟の手続において審理判断されるべきものであり,家庭裁判所は,家事審判の手続において上記明渡しを命ずることはできない。」と判断して明渡しを命ずることをしませんでした。
しかしながら、Xからの不服申し立てを受けた最高裁判所は、財産分与が単純に分与させるべきかどうか、分与の額・方法をどうするかを決めるだけの手続にとどまるとすれば、当事者は、財産分与の審判の内容に沿った権利関係を実現するため、審判後に改めて給付を求める訴えを提起する等の手続をとらなければならないこととなり迂遠であることなどを理由に、「家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産(X名義不動産)であって他方当事者(Y)が占有するものにつき,当該他方当事者(Y)に分与しないものと判断した場合,その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは,家事事件手続法154条2項4号に基づき,当該他方当事者(Y)に対し,当該一方当事者(X)にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当である。」として、財産分与の手続において明渡しを求められる場合があることを肯定しました。
また、この最高裁決定は直接は「財産分与審判」に関するものですが、離婚訴訟の場合にも同様に明渡しを求められると考えられています(土井文美・曹時 74巻7号211頁)。
3 まとめ─財産分与で不動産の「明渡し」まで求めることができるか
以上の判例をまとめると次のような帰結となります。
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明け渡しの可否 |
調停 |
「令和●年●月●日限り、居住している建物から退去して明け渡す」という条項を含む調停(合意)が成立すれば明渡しを求めることができる(家事事件手続法第268条第1項)。 |
審判 |
財産分与の判断に沿った権利関係を実現するため必要と認められるときは明渡しを求めることができる(家事事件手続法第154条第2項第4号)。 |
訴訟 |
財産分与の判断に沿った権利関係を実現するため必要と認められるときは明渡しを求めることができる(人事訴訟法第32条第2項)。 |
4 離婚訴訟を弁護士に依頼するメリット
離婚協議・離婚調停において、離婚条件が整わないことなどから合意により離婚することが難しい場合でも、相当期間の別居などの離婚の原因があるかどうかを見据えて協議・調停を行うことで、この難しい状況を打開することができる場合や、離婚訴訟において離婚が認められることもあります。ですので、このような離婚訴訟における離婚の原因があるかどうかを見極めて協議・調停に臨むことが重要です。
また、今回ご紹介した最高裁令和2年8月6日決定などから分かるとおり、一口に「離婚の問題」といっても、直面している問題をどのような手続(家事調停審判、離婚訴訟、民事訴訟等のいずれ)で解決することができるかに専門的な知識を要することもあります。
弁護士であれば離婚訴訟など様々な手続を見据えたプランをご提案することができますので、ご夫婦ご本人同士での離婚の話合いが難しい場合でも、まずは弁護士にお気軽にご相談いただければと思います。
5 当事務所の離婚・男女問題の弁護士費用
まず前提として、弁護士の費用には大きく分けて4つの費用がございます。
相談料
法律相談をする際に発生する費用です。
当事務所では、初回30分については0円です。
着手金
事件着手時に発生する費用のことで、事件の結果によって金額が変わることがない費用です。
結果にかかわらず着手金は返金されない費用となります。
報酬金
事件の解決時に発生する費用のことで、事件の結果によって報酬金は変わります。
つまり、経済的利益が得られなければ基本的に報酬金は0円となります。
実費等
実費は、交通費や郵便切手代等実際に掛かった費用です。
その他には、遠方の裁判所等に出張した場合に発生する日当や戸籍等の取得を弁護士に依頼をした場合の取得手数料があります。
詳細は、面談をした際に、実費等請求額基準表をお示ししてご説明いたします。
当事務所の離婚・男女問題の着手金と報酬金は、以下のとおりです。
※すべて税込です。
離婚
離婚 |
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着手金 |
報酬金 |
協議 |
22万円 |
22万円 |
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調停 |
33万円 ※協議(交渉)から調停に移行した場合は追加着手金22万円で承ります。 |
33万円 |
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訴訟 |
44万円 ※協議(交渉)・調停から訴訟に移行した場合は追加着手金33万円で承ります。 |
44万円 |
※当事務所では、離婚の他に親権、面会交流、婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割の問題が付随した場合も追加着手金は頂いておりませんのでご安心ください。
離婚問題のオプション
オプション ※争いがある場合、離婚報酬金に追加となります。 ※離婚のご依頼はなく、オプションのご依頼のみを頂く場合の着手金は、離婚の着手金と同額となります。 |
報酬金 |
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親権 |
獲得した場合 |
獲得を阻止した場合 |
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22万円 |
22万円 |
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面会交流 |
達成した場合 |
阻止した場合 |
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22万円 |
22万円 |
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婚姻費用 |
得られた場合 |
減額した場合 |
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得られた2年分(現実の受領が2年を超える場合、受領期間分)の11% |
減額した2年分(現実の減額が2年を超える場合、減額期間分)の11% ※最低額22万円 |
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養育費 |
得られた場合 |
減額した場合 |
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得られた5年分の11% |
減額した5年分の11% |
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財産分与 |
得られた場合 |
減額した場合 |
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得られた額の11% |
減額した額の11% |
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慰謝料 |
得られた場合 |
減額した場合 |
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得られた額の11% |
減額した額の11% |
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年金分割 |
得られた場合 |
減額した場合 |
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11万円 |
減額した額の22% |
※面会交流の達成・阻止は現状より条件が向上した場合を含みます。
※子の氏の変更許可申立を行う場合は3万3000円で承ります(離婚をしたとしても子の氏は当然には親権者の氏とはなりません。そのため、氏の変更を希望する場合は家庭裁判所に対し申立を行う必要があります。)。
6 おわりに
離婚事件に関して、ご不安な点がございましたら丁寧にご説明をさせて頂きますので、まずはお気軽にお問い合せください。
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