「自己破産した後は手元にお金を残すことはできるのでしょうか。車や家財道具はどうなのでしょうか。」

このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。

このコラムでは、東京地方裁判所倒産部での破産手続を念頭に、自己破産をした場合に手元に残せる財産について解説いたします。

 

【目次】

1 自己破産をしても手元に残せる「自由財産」とは?

2 自由財産の拡張

3 自己破産に関する当事務所の弁護士費用

4 おわりに

 

1 自己破産をしても手元に残せる「自由財産」とは?

⑴ 没収される破産財団・手元に残せる自由財産
自己破産をした場合、破産手続開始決定時に有している財産は、原則として、全て「破産財団」となり(破産法34条1項)、裁判所に没収された上で債権者へ分配されます。
しかし、破産者から全ての財産を没収してしまうと生活ができなくなるため、例外的に「自由財産」は破産した後でも手元に残すことができます。
なお、破産手続開始後に取得した財産(給料など)は「新得財産」となり、「破産財団」にはなりません(=裁判所に没収されずに手元に残すことができます)。

⑵ 自由財産の種類
以下の財産は、「法定自由財産」として自己破産後も手元に残すことが認められています。
① 99万円までの現金(破産法34条3項1号、民事執行法131条3号、民事執行法施行令1条)
② 差押禁止財産(破産法34条3項2号)
差押禁止財産とは、法律上、差押えが禁止されている財産です。例えば、家財道具(民事執行法131条1号)、退職金の4分の3相当額(同法152条2項)、企業年金(確定給付企業年金法34条、確定拠出年金法32条1項)などです。

 

2 自由財産の拡張

 自由財産の拡張について
法定自由財産は、破産者の個別事情を考慮せず、一律に自由財産とされているため、高齢・持病等で仕事ができないなどの事情から、法定自由財産のみでは生活ができない場合があります。
そこで、破産法は、裁判所の判断により、事案に応じて自由財産を拡張することができる制度を設けています(破産法34条4項)。これを「自由財産の拡張」といいます。

⑵ 東京地方裁判所倒産部での自由財産の拡張に関する運用
自由財産の拡張に関する運用は裁判所毎に異なりますが、東京地方裁判所倒産部では、以下の財産については原則として自由財産の拡張を特段に申請なく認める運用としています(個人破産の換価基準)。

  • 残高20万円以下の預貯金
    ※口座が複数ある場合には、合算して20万円以下
  • 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
    ※複数口ある場合は、合算して20万円以下
  • 処分見込額(評価額)が20万円以下の自動車
    ※高級車以外の自動車の場合、原価償却期間(一般的には、普通乗用自動車は6年、軽自動車・商用車は4年)を経過している場合は、無価値として判断されます。
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金債権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7相当
  • 家財道具(通常の生活に必要なもの)


⑶ 手元にある財産が個人破産の換価基準を超える場合
手元にある財産が個人破産の換価基準を超える場合、その財産の自由財産の拡張を認めてもらうためには、原則として破産手続開始決定から開始決定確定以後1か月以内の間に自由財産拡張の申立てを行い、自由財産の拡張を認めるべき事情を裁判所に説明する必要があります。
自由財産の拡張を認めるべき事情は、破産法34条4項に即すと、①破産者の生活の状況、②破産手続開始時に破産者が有していた法定自由財産の種類及び額、③破産者が収入を得る見込み、④その他の事情(拡張対象財産の性質・額など)となります。
東京地方裁判所倒産部では、99万円までの現金が自由財産となることとの均衡から、自由財産の総額が99万円以下となる自由財産の範囲の拡張については、比較的緩やかに判断しています。
他方、自由財産の総額が99万円を超える範囲の拡張については、より慎重な判断となり、拡張が認められるのはその必要性が相当高い場合などに限られています。
ご自身の財産がどこまで自由財産として残せるかは、残したい自由財産の性質(債権か否か等)にも大きく左右されるため、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

 


 自己破産に関する当事務所の弁護士費用

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借金/債務整理

 

4 おわりに

今回は、自己破産をした場合に手元に残せる財産である自由財産とその拡張について解説しました。
自己破産について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

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