「交通事故の加害者になり、警察から取調べを受けています。これから私はどうなるのでしょうか。」
「交通事故を起こしたのに、怖くなってその場から逃げてしまいました。私は逮捕されるでしょうか。」

交通事故を起こしてしまったお客様からこのようなご相談を受けることは少なくありません。
交通事故に関連する刑事事件(以下「交通事件」といいます。)は、単なる「不注意」であっても、刑罰の対象となることがあります。
また、事故後の対応次第で、処分の重さが大きく変わることもあります。

このコラムでは、弁護士が行う典型的な弁護活動を交えながら、交通事件の主な類型とその対応について分かりやすくご説明します。

 

【目次】

1 交通事件の類型と弁護活動

⑴ 過失運転致傷罪
⑵ 危険運転致死傷罪(類型1)
⑶ 危険運転致死傷罪(類型2)
⑷ 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪
⑸ 無免許運転
⑹ 酒酔い運転・酒気帯び運転
⑺ 救護義務違反・報告義務違反

2 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用

3 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット

4 本コラムのまとめ・FAQ(よくある質問)

 


1 交通事件の類型と弁護活動

⑴ 過失運転致死傷罪
(概要)
自動車の運転上必要な注意を怠った結果、人を死傷させた場合、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処される可能性があります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第5条)。
なお、このとき、更に無免許運転であった場合は、より重い処罰(10年以下の拘禁刑)となることが法律で規定されています(自動車運転処罰法第6条第4項)。


(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 過失(被害者の過失も含む。)の有無・程度の検討
〇 被害者への謝罪、示談交渉(保険会社を通じた示談の進捗確認を含む。)等の被害者対応
〇 その他反省していることを立証するための助言等(運転免許証の返納、車両の処分など)

 

⑵ 危険運転致死傷罪(類型1)
(概要)
次に掲げる行為を行った結果、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合は1年以上の拘禁刑に処される可能性があります(自動車運転処罰法第2条)。

① アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為(第1号)

② その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(第2号)

③ その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(第3号)

④ 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第4号)

⑤ 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為(第5号)

⑥ 高速自動車道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行させる行為(第6号)

⑦ 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第7号)

⑧ 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第8号)
なお、このとき(第3号を除きます。)、更に無免許運転であった場合(人を負傷させた者に限ります。)は、より重い処罰(6月以上の拘禁刑)となることが法律で規定されています(自動車運転処罰法第6条第1項)。


(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 身柄拘束されたまま起訴された場合は保釈請求等
〇 自動車運転処罰法第2条各号該当事由と故意の検討
〇 被害者への謝罪、示談交渉(保険会社を通じた示談の進捗確認を含む。)等の被害者対応
〇 適切な監督者の確保
〇 その他反省していることを立証するための助言等(運転免許証の返納、車両の処分など)

 

⑶ 危険運転致死傷罪(類型2)
(概要)
アルコール又は薬物の影響や、自動車の運転に支障を及ぼすおそれのある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転した結果、そのアルコール又は薬物の影響やその病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた場合は12年以下の拘禁刑、死亡させた場合は15年以下の拘禁刑に処される可能性があります(自動車運転処罰法第3条)。

類型1の危険運転致死傷罪では、各号とも、死傷の結果を惹起する具体的な危険性のある行為は規定されているのに対し、類型2においては、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転することが実行行為とされています。類型1と比較すると、自らの行為の具体的危険性を認識していない点で、違法性及び責任非難の程度が低いことから、類型1よりは軽い法定刑が定められています。
他方、過失犯である過失運転致死傷罪と比較すると、アルコール等の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転する行為をあえて行ったという点で、故意犯としての要素があり、違法性及び責任非難の程度が格段に高いことから、過失運転致傷罪より重い法定刑が定められています。

なお、このとき、更に無免許運転であった場合は、より重い処罰(負傷させた者は15年以下の拘禁刑、死亡させた者は6月以上の拘禁刑)となることが法律で規定されています(自動車運転処罰法第6条第2項)。

 

(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 身柄拘束されたまま起訴された場合は保釈請求等
〇 自動車運転処罰法第3条該当性の検討
〇 被害者への謝罪、示談交渉(保険会社を通じた示談の進捗確認を含む。)等の被害者対応
〇 適切な監督者の確保
〇 その他反省していることを立証するための助言等(運転免許証の返納、車両の処分など)

 

⑷ 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪
(概要)
アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転したものが、運転上必要な注意を怠り、その結果人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の拘禁刑に処される可能性があります(自動車運転処罰法第4条)。

自動車運転処罰法第2条第1号及び同法第3条第1項の危険運転致死傷罪が成立するためには、客観的に「アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態に陥ったこと」が要件となるところ、犯人が逃走するなどしてアルコール等による影響の有無・程度が立証できない場合には、危険運転致死傷罪の適用を免れることになって、いわゆる逃げ得を許す結果となってしまいます。そこで、アルコール等の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じる状態で自動車を運転し、過失により人を死傷させたものが、危険運転致死傷罪による処罰を免れようとしてアルコール等の影響についての証拠収集を妨げる行為を行った場合は、危険運転致死傷罪に準じて重く処罰することとしています。

なお、このとき、更に無免許運転であった場合は、より重い処罰(15年以下の拘禁刑)となることが法律で規定されています(自動車運転処罰法第6条第3項)。

 

(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 身柄拘束されたまま起訴された場合は保釈請求等
〇 自動車運転処罰法第4条該当性の検討(特に「運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的」の有無の検討は重要)
〇 被害者への謝罪、示談交渉(保険会社を通じた示談の進捗確認を含む。)等の被害者対応
〇 その他反省していることを立証するための助言等(運転免許証の返納、車両の処分など)

 

⑸ 無免許運転
(概要)
公安委員会の運転免許を受けないで自動車又は原動機付自転車を運転した場合、3年以下の拘禁刑又は50万以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法(以下「道交法」といいます。)第117条の2の2第1号、第64条第1項)。

また、無免許運転を行う者に車両を提供した場合は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(道交法第117条の2の2第2号、第64条)。

さらに、免許を受けていない者に運転を行うよう依頼等した場合は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処される可能性があります(道交法第117条の3の2第1号、第64条第3項)。

 

(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 無免許運転の常習性の有無、程度の検討
〇 再犯のおそれがないことを立証するための環境作りの助言等(適切な監督者の確保、車両の処分など)

 

⑹ 酒酔い運転・酒気帯び運転
(概要)
酒気帯び運転とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上の状態で運転することをいい、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(道交法第117条の2の2第3号、第65条第1項)。

酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転することをいい、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処される可能性があります(道交法第117条の2第1号、第65条第1項)。

また、これらに関連する犯罪として、「運転者が酒気を帯びていることを知りながら、車に乗せるように要求・依頼した同乗者」、「飲酒運転をするおそれがある者に対して車両などを提供した者」、「飲酒運転をするおそれがある者に対して、酒類を提供する等した者」についても、それぞれ罰則が定められています。

なお、これまでは、飲酒して自転車を運転した場合でも、酒酔い運転のみ処罰の対象(道交法第117条の2第1号、第65条第1項。5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)でしたが、令和6年11月施行の道交法の改正により、自転車の酒気帯び運転についても罰則の対象となりました(道交法第117条の2の2第3号、第65条第1項。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)。また、自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合についても、それぞれ自動車の場合と同様に罰則が設けられました。

 

(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 飲酒運転の常習性の有無、程度の検討
〇 再犯のおそれがないことを立証するための環境作りの助言等(アルコール依存症の治療の検討、適切な監督者の確保、運転免許証の返納、自動車の処分など)

 

⑺ 救護義務違反・報告義務違反
(概要)
交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならないとされており(道交法第72条第1項)、前段の救護義務違反の場合は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(道交法第117条の5第1項第1号)、後段の報告義務違反の場合は3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に処される可能性があります(道交法第119条第17号)。

 

(弁護活動の主な内容)
〇 逮捕・勾留された場合、早期の身柄開放のための活動(身元引受人の確保、勾留請求前の検察官への意見書提出、勾留請求先の裁判所への意見書提出、勾留決定に対する準抗告等)
〇 救護義務違反・報告義務違反の動機、経緯の検討(酌むべき点があれば積極的に主張)
〇 被害者への謝罪、示談交渉(保険会社を通じた示談の進捗確認を含む。)等の被害者対応
〇 自首の検討

 


2 当事務所の刑事弁護に関する弁護士費用
当事務所の刑事弁護に関する費用は次のページをご参照ください。
https://kl-o.jp/crime/#00003

なお、交通事故における刑事事件の弁護士費用を一部負担してもらえる特約が付帯した保険もありますので、まずは加入されている保険会社にお尋ねいただくことをお勧めいたします。

そのほか、加害者としての民事上の対応を要する場合もあり、そのような場合は民事での対応も併せて弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

交通事故事案の当事務所の弁護士費用は次のページをご参照ください。
https://kl-o.jp/trafficaccident/#00007

 


3 刑事弁護を弁護士に依頼するメリット
これまで述べてきたとおり、交通事件についても、身柄拘束の早期解放を目指し、また、適切な処分や判決を求めるためには、刑事事件に関する専門知識やノウハウが豊富な弁護士の助言、協力が不可欠です。

刑事弁護としてのご依頼のほか、当事務所では逮捕前に定期的に助言・サポートするプランもご用意しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

 


4 本コラムのまとめ・FAQ(よくある質問)

Q1:交通事故を起こしたら、必ず逮捕されますか。
A:逮捕されるかどうかは、逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれ、事故態様・結果の重大性(死亡・重傷かどうか等)などを総合して判断されます。人身事故であっても、身元が明らかで、逃亡・証拠隠滅のおそれが乏しく、被害者対応も適切であれば、「在宅」といって、逮捕されないまま捜査が進むことも少なくありません。

 

Q2:逮捕された場合、いつ家に帰れる(釈放される)可能性がありますか。
A:逮捕から48時間以内に、警察は、事件を検察官に送致するかどうかを判断し、検察官は、送致後、24時間以内に、裁判所に勾留請求するか、釈放するか等を判断します。検察官が「勾留請求の必要なし」と判断した場合や、裁判所が「勾留の必要なし」と判断した場合には、勾留されずに釈放され、自宅に戻れる可能性があります。弁護士は、勾留請求前に検察官へ意見書を提出し、勾留請求がされた場合には裁判所に意見書を提出するなどして、勾留の必要がないことを主張・立証することで、捜査段階での早期釈放を目指します。

 

Q3:示談が成立すれば、前科を避けられますか。
A:起訴するかどうか(前科が付くかどうか)は検察官の判断によりますが、一般的には、示談がない場合と比べれば、示談が成立した方が、結果が軽くなることが多いと言えます。

 

Q4:弁護士費用は保険の「弁護士費用特約」で賄えますか。
A:交通事故の保険には、加害者側・被害者側いずれの場合でも、一定範囲で弁護士費用を負担してくれる「弁護士費用特約」が付いていることがあります。もっとも、刑事弁護に使えるかどうかは保険会社・商品ごとに異なります。ご自身やご家族名義の自動車保険等の契約内容をご確認ください。

 

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