「相続した土地があるが、接道義務を満たしておらず価値がつかないと言われた。」
「接道義務を満たしていないので希望の建物が建てられないと言われた。」

本コラムでは、不動産、特に土地(の価値)に影響を与える行政法規制について解説いたします。


【目次】
1 不動産、特に土地(の価値)に影響を与える行政法規制
2 用途地域制度(建物の用途等の制限)
3 容積率制度(建物のボリュームの制限)
4 接道義務制度(再建築不可物件)
5 不動産問題・行政問題に関する当事務所の弁護士費用
6 まとめ

 

1 不動産、特に土地(の価値)に影響を与える行政法規制

⑴ 憲法・民法における財産権・所有権
皆さまは、中学校の「公民」の授業等で、以下の憲法の財産権保障の条項を読んだことがあるかと思います。

◎憲法
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 (略)

また、民法には、所有権の内容・範囲に関する以下の条項が置かれています。

◎民法
(所有権の内容)
第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
(土地所有権の範囲)
第207条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。


このような憲法・民法の条項だけからすると、私有財産の不可侵性・所有権絶対の原則が高らかに謳われており、不動産、特に土地については、自由な使用等が認められているように見えるかもしれません。


⑵ 不動産(土地)に対するさまざまな行政法規制

しかしながら、実際には、不動産、特に土地については、以下の都市計画法、建築基準法等の行政法規により極めて広範囲かつ詳細な規制がなされており、このような行政法規制が土地の市場価値(実勢価格、売買価格)に対しても大きな影響を与えることになります。

そこで、このコラムでは、土地の市場価値(実勢価格、売買価格)に大きな影響を与えるいくつかの行政法規制を説明します(ちなみに、以下に抜粋する都市計画法、建築基準法の目的規定にあるとおり、これらの行政法規は、「都市の健全な発展と秩序ある整備」、「国民の生命、健康及び財産の保護」といった公益を実現することを目的にしており、土地の市場価値を上げ下げすることを目的にしている訳ではありませんが、これらの行政法規制が結果的には土地の市場価値を大きく左右することになります。)。

◎都市計画法
(目的)
第1条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
◎建築基準法
(目的)
第1条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。




2 用途地域制度(建物の用途等の制限)

東京、神奈川などのいわゆる三大都市圏及び政令指定都市といった大都市においては、市街化区域と市街化を抑えるべき市街化調整区域の区分(いわゆる線引き)が行われており、この線引きの主な目的は、市街化区域において用途地域を定めて、土地利用の規制を行うことにあります。具体的には、市街化区域においては、住居系、商業系、工業系といった13の用途地域が都市計画において指定されており、用途地域ごとに建物を建てられる用途が制限されています。

この用途地域は、当事務所が立地する葛飾区であれば、「かつしか電子まっぷ」(https://www.sonicweb-asp.jp/katsushika/)で確認することができますし、お住まいの区役所・市役所の都市計画課等に備え付けられている「都市計画図」でも確認することができます。

例えば、当事務所が立地する「葛飾区東金町1丁目42番3号」は、「商業地域」に指定されており、基本的に「危険性や環境を悪化させるおそれがやや多い工場」・「危険性が大きいか又は著しく環境を悪化させるおそれがある工場」以外の建物であれば広く建築することができる一方、少し北側に進んだ地域は「第二種住居地域」に指定されており、上記工場は言わずもがな、それ以外に大規模な店舗・劇場等を建築することもできないなど、建物を建てられる用途が異なるため、土地の市場価値(どのような建物需要があるか)にも大きな影響を与えることになります。



3 容積率制度(建物のボリュームの制限)

次に、用途地域に応じた容積率、すなわち建築物の床面積合計が、敷地面積に対してどのくらいの割合まで認められるか、ということも土地の市場価値に大きな影響を与えることになります。容積率が大きければそれだけボリューム(高さ)の大きな建物を建てることができ、一般的にはこの方が土地の市場価値は高くなります(ほかの規制条件にもよりますが、土地の市場価値は、基本的に容積率に正比例するといえます。)。

例えば、当事務所が立地する「葛飾区東金町1丁目42番3号」は、先ほどの「かつしか電子まっぷ」で確認すると、容積率500%とされる一方、少し北側に進むと容積率300%となっています。

また、この容積率は、後記4の建築基準法上の道路とも関連しますが、前面道路幅員によっても左右されるため(前面道路の幅員が12m未満の場合、住居系では10分の4、それ以外では10分の6を乗じた数字と先ほどのような指定された容積率を比較して、少ない方の容積率(実効容積率)が適用されることになります。)、注意が必要です。



4 接道義務制度(再建築不可物件)

さらに重要なのが、接道義務です。
すなわち、都市計画区域においては、建物を建てることができる敷地の条件として、4m以上の幅員をもった、建築基準法上の道路に敷地が2m以上接していることが必要とされており、この接道義務を満たしていない限り、建物を建築することができないか、既に建築されている建物の再築にあたって接道義務を満たすことができるように大幅に建物を後退して(セットバックして)立て直さなければならないことになります。
接道義務を満たしていないと、建築確認がおりませんので、その土地はせいぜい資材置き場・駐車場としてしか利用できないということになり、買い手が容易には見つからない(市場価値がゼロに近くなる)ということも起こり得ます。



5 不動産問題・行政問題に関する当事務所の弁護士費用

当事務所の弁護士費用の目安は、以下のリンクからご確認いただけます。

〇不動産問題

https://kl-o.jp/estate/#hudousanhiyou

〇行政問題(事業者、法人からのお問合せのみ受け付けております。)

https://kl-o.jp/gyosei/#00010



6 まとめ

本コラムでその一部を解説したとおり、不動産、特に土地(の価値)に影響を与える行政法規制にはさまざまなものがあり、その内容も複雑多岐にわたります。不動産の評価の問題は、不動産紛争はもちろんのこと、相続や離婚の財産分与の問題においても大きな影響を及ぼす場合があります。

こういった不動産を巡る行政法規に関連するトラブルについて何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 


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