このコラムでは、相手方が登記手続に協力しない場合に、裁判や調停を利用して単独で登記手続を進める方法(意思表示の実現/意思表示の擬制)について、具体的な設例を交えながら弁護士がわかりやすく解説します。
※用語の補足:登記手続に関する「意思表示」とは? 登記手続は、登記義務者が登記官に対して行う「公法上の意思表示(登記申請)」を求めるものであるため、法的に「意思表示」と表現されます。
【目次】
1 よくあるトラブルの設例
2 登記手続の基本ルール「共同申請の原則」
3 相手が協力しない場合の例外「判決による登記等(単独申請)」
4 「意思表示の擬制」により単独での登記が可能に
5 登記トラブルでお困りの方は当事務所へご相談ください
6 登記トラブルに関する弁護士費用
1 よくあるトラブルの設例
まずは、登記手続において相手方の協力が得られず、裁判や調停による解決が必要となる代表的なケースを紹介します。
「不動産売買契約を締結し代金を支払ったにもかかわらず、売主が所有権移転登記手続に協力しない。」
「遺産分割調停で相手方から代償金を受け取ることになった。本当に支払いがなされるか不安なので、担保として相手方の不動産に抵当権を設定したいが、協力が得られるか心配である。」
2 登記手続の基本ルール「共同申請の原則」
冒頭の設例に挙げた、所有権移転登記、抵当権設定登記といった「権利に関する登記」(不動産登記法第2条第4号、同法第3条)は、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならないとされており(同法第60条)、これを「共同申請の原則」といいます。
紛争に発展していない、通常の不動産売買などでは、買主、売主、住宅ローンの金融機関が「不動産売買契約書」・「抵当権設定契約書」を取り交わし、印鑑登録証明書、登記識別情報通知書(権利証)、固定資産税評価証明書等の必要書類をあらかじめ準備した上で、所有権移転登記手続の申請・抵当権設定登記の申請を登記手続の専門家である司法書士に委任することにより共同申請を行っているのが一般的です。
3 相手が協力しない場合の例外「判決による登記等(単独申請)」
しかしながら、不動産売買を巡ってトラブルになっている、相続問題を巡ってトラブルになっているといったケースでは、共同申請の原則が前提としている協力関係を築くことができないか、協力関係が損なわれているため、(円満な)共同申請によることができません。
そこで、このような場合には、以下の対応をすることになります。
訴訟を提起し、売主に登記を命じる確定判決を得ます。
【主文・請求の趣旨記載例】
被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、令和〇年○月○日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
調停を成立させ、調停調書の中に抵当権設定に関する条項を盛り込みます。
1 相手方は、申立人に対し、遺産を取得した代償として、○○○万円を支払うこととし、これを令和○年○月○日限り、相手方が指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は相手方の負担とする。
2 当事双方は、本日、前項の代償金の支払を担保するため相手方が取得した別紙物件目録記載の土地につき、抵当権者を申立人、債権額を○○○万円とする順位1番の抵当権を設定する。
3 相手方は、申立人に対し、前項の本日付け抵当権設定契約を原因とする抵当権設定登記手続をする。なお、登記手続費用は、○○○の負担とする。
4 「意思表示の擬制」により単独での登記が可能に
このような確定判決、調停調書に基づき、共同申請の例外として、(登記義務者の協力がなくても)単独申請をすることが可能になります。民事執行法上は、「意思表示の擬制」と呼ばれています。
【単独申請の実務的な流れ】
確定判決の場合、債権者(登記権利者)が単独で集められる以下の書類を収集し、司法書士に委任することで登記手続を進めることができます。
- 判決正本
- 判決送達証明書
- 判決確定証明書
- 承継執行文(※場合によって必要) ※抵当権設定登記の場合も基本的な流れは同じです。
【実務上の注意点】
判決等による単独登記を目指す場合、その判決主文(請求の趣旨)や調停条項が「法務局において受理可能な内容」になっている必要があります。
そのため、手続きを進める前に司法書士と連携し、法務局へ事前に照会をしておくのが実務上一般的かつ安全です。
(共同申請)
第60条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
(判決による登記等)
第63条 第60条(中略)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2・3 略
(意思表示の擬制)
第177条 意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし(後略)
2 債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
3 債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。
5 登記トラブルでお困りの方は当事務所へご相談ください
不動産登記に関わるトラブルは、放置すると権利関係がさらに複雑になる恐れがあります。相手方が登記に協力してくれない場合は、お早めに弁護士へご相談ください。
6 登記トラブルに関する弁護士費用
当事務所の登記トラブル(所有権移転登記手続、抵当権抹消登記手続)に関する弁護士費用は、以下のとおりです。
交渉の着手金 30万円
交渉の報酬金 60万円
※交渉から訴訟に移行する場合は、追加着手金として60万円を別途お支払いいただきます。
※訴訟移行にあたり保全が必要なケースは別途追加費用を頂戴いたします。
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