最終更新:令和8年5月21日

「行政庁から営業許可取消となる見込みであると告げられた。」
「予定される不利益処分の内容・根拠法令、不利益処分原因事実、聴聞の期日・場所が記載された通知書が届いたがどうすればよいか。」

このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。

今回の記事では、行政手続のうち、「告知聴聞」(こくちちょうもん)と呼ばれる手続について解説いたします。

 

【目次】
1 不利益処分とは
2 行政手続法等における事前手続―告知聴聞の機会の付与
3 「告知聴聞の機会」の種類
4 聴聞手続の内容・流れ
5 弁明の機会の付与の内容・流れ
6 行政問題に関する当事務所の弁護士費用
7 おわりに

 

1 不利益処分とは
行政機関が行う行政活動の中でも、いわゆる許認可の取消しに代表される不利益処分は、事業者等の営業活動に直接影響を及ぼす重大な行政行為です。
この不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名宛人として、直接に義務を課し、又はその権利を制限する処分をいいます。要するに行政機関から与えられていた権利をはく奪されるような処分のことをいいます。

 

2 行政手続法等における事前手続―告知聴聞の機会の付与
新聞・ニュースなどでは、このような不利益処分に対し、「裁判所に処分の取消しを求める訴訟を提起した。」などと裁判がはじまるタイミングでの報道がなされますが、行政手続法では、不利益処分が与える重大性に配慮して、原則として不利益処分がされる事前のタイミングで、「告知聴聞の機会」が付与されることが一般です。

「告知聴聞」とは、なかなか聞き慣れない言葉かとは思いますが、要するに、不利益処分をする前には、事業者等の言い分をしっかりと聴き、不利益処分をするかしないか、不利益処分をするとしてどのような内容とするかなど適正な不利益処分をフェアに行うためのルール(手続)のことをいいます。

 

3 「告知聴聞の機会」の種類
この「告知聴聞の機会」には、行政機関が課そうとする不利益処分の内容等に応じて、①聴聞(行政手続法13条1項1号)と②弁明の機会(行政手続法13条1項2号)の付与という二種類が用意されています。

聴聞と弁明の機会の付与との区分は、処分による不利益の度合いに応じて、手続に軽重をつめるためのものです。

聴聞は、弁明の機会の付与以上に、より厳格で丁寧な手続であり、許認可の取消し等不利益の大きいものについてとられる手続であるのに対し、弁明の機会の付与は、略式の手続であり、比較的不利益度の小さい処分についてとられるものです。

 

4 聴聞手続の内容・流れ

⑴ 通知書の到着
聴聞手続では、まず予定される不利益処分の内容・根拠法令、不利益処分原因事実、聴聞の期日・場所が記載された通知書が届きます。

⑵ 意見の準備・提出
その後、不利益処分が課される予定であるとされている事業者等は、聴聞が開かれる日時までに、意見書・証拠を提出して、不利益処分原因事実などの事実関係や法令解釈に関する意見を主張することになります。

⑶ 聴聞当日
聴聞手続当日は、聴聞を主宰する職員の関与のもと、不利益処分をする行政機関の職員からの説明、事業者等の口頭による意見陳述・質問などがなされることになります。

⑷ 聴聞後の手続
聴聞を主宰する職員は、聴聞手続の経過を記載した聴聞調書及び不利益処分原因事実に対する不利益処分をする行政機関の職員・事業者の主張に理由があるかどうかを記載した報告書を作成します。
これを行政庁(処分権限を有する市長など)に提出し、行政庁はこの報告書を十分に参酌して、不利益処分をするかしないか、不利益処分をするとしてどのような内容とするかを決めなければなりません。

 

5 弁明の機会の付与の内容・流れ

⑴ 通知書の到着
弁明の機会は、まず予定される不利益処分の内容・根拠法令、不利益処分原因事実、弁明書の提出先・提出期限が記載された通知書が届きます。

⑵ 弁明書の準備・提出
その後、不利益処分が課される予定であるとされている事業者等は弁明書を提出することで言い分を主張することになります。
このように、弁明の機会は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、書面の提出によって行われ(行政手続法29条)、文書閲覧権も認められていない等、聴聞に比べて略式の手続です。

 

6 行政問題に関する当事務所の弁護士費用
行政問題に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/gyosei/#00010
(事業者、法人からのお問合せのみ受け付けております。)

 

7 おわりに
「行政争訟」というと、行政訴訟などの裁判を思い浮かべがちですが、時間も費用もかかる裁判沙汰になる前に不利益処分を回避し、あるいは軽減できるに越したことはありません。

そのため「告知聴聞の機会」はあまり知られてはいない手続かもしれませんが、事前の防御の機会として非常に重要ですし、不利益処分がなされることを回避できなかったとしても、「告知聴聞の機会」の中で行政庁が把握している情報を文書等の閲覧請求で取得し、のちの裁判に備えることができるという意味でも大切です。

また、個別行政法において、行政手続法の適用が除外されている場合があります。このような場合、裁判においては、事前に防御の機会が与えられなかったとしても憲法31条の適正手続の法意に反しないとされる結果となることもありますが、最高裁判所令和6年5月7日判決・判タ1523号66頁以下の宇賀克也裁判官の反対意見において、行政手続法の適用除外のケースでも不利益処分を行う場合に事前に防御の機会を与えることの重要性が説かれています。このような反対意見があることも踏まえると、行政手続法が適用除外のケースにおいても、憲法31条を根拠に適正な手続を求め、「適正な手続が行われなかった」という手続的瑕疵の布石を敷いておくことが必要になる場合も考えられるところです。

そして、このような「告知聴聞の機会」を活かすためには、個別行政法・行政判例を理解し、あるいは理解できる専門家である弁護士の関与を検討した方が良いことが多いものと思います。

万が一、聴聞通知書・弁明の機会付与の通知書が届いた場合には、まずはお気軽にご相談いただければと思います。


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