「養育費を公正証書(調停調書)で決めたのに、払ってもらえない。今の職場が分からず、給料の差し押さえができない。」

「判決で支払うよう命じられたにもかかわらず、支払わない。差し押さえたいが不動産や預貯金が不明。」

「債権回収を進めたいが、判決をとっても支払われないのであれば紙きれになると聞いた。回収までセットで依頼したいが良い方法はないか。」

このようなご質問は、多くのお客様から寄せられるご質問です。

このコラムでは、差し押さえの対象となる財産が不明な場合に実施する「財産開示手続に関する手続の流れ」、「財産開示手続内で虚偽説明をしたり、欠席した場合の罰則」及び「財産開示手続の弁護士費用とメリット」をご説明します。併せて、第三者からの情報取得手続についても解説します。

【目次】

1 財産開示手続とは(財産開示手続の流れ等)

 ⑴財産開示手続とは

 ⑵財産開示手続の手続の流れ

 ⑶財産開示手続はどのような場合に利用できるか

 ⑷財産開示手続の具体的進行内容と第三者からの情報取得手続

  ア 財産開示期日の呼出し

  イ 財産目録の提出要請

  ウ 期日当日─出頭後の宣誓と質問への回答

  エ 第三者からの情報取得手続の利用

2 財産開示手続を欠席したり、虚偽説明をした場合の罰則

3 財産開示手続及び第三者の情報取得手続の弁護士費用

4 債権回収および財産開示手続を弁護士に依頼するメリット

5 おわりに

 

1 財産開示手続とは(財産開示手続の流れ等)

⑴財産開示手続とは

財産開示手続とは、債権者の権利実現の実効性を確保するために、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり、債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述する手続です。

 ⑵財産開示手続の手続の流れ

裁判所が、財産開示が相当であると判断した場合、財産開示期日において、債務者(開示義務者)に宣誓させた上、その財産を陳述させることとなります。
その手続の流れは、次のとおりです。

判決、調停調書、審判、執行認諾文言付公正証書等の債務名義取得

債務者の住所地(事務所所在地)の管轄裁判所に財産開示手続申立て

財産開示実施決定

財産開示期日、財産目録提出期限の指定、告知

財産開示期日

⑶財産開示手続はどのような場合に利用できるか

強制執行を実施しても完全な弁済を得ることができなかった場合や、債権者が把握している債務者の財産に強制執行を実施しても、完全な弁済を得ることができない見込みである場合に申立てることができます。
詳細な要件は、債権者の要件、執行開始要件、執行開始ができない場合にあたらないこと、強制執行ができなかったことの疎明等複雑ですので、事案ごとに個別にご相談ください。

⑷財産開示手続の具体的進行内容と第三者からの情報取得手続

ア 財産開示期日の呼出し

債権者が財産開示手続を申し立てると、裁判所は、申立書を精査します。
その結果、財産開示手続が必要だと判断すると、財産開示期日を開く決定を行い、債務者に対して期日に出頭するよう、呼出しの通知をします。

イ 財産目録の提出要請

財産開示期日の通知書には、期日の約1週間前に財産目録を提出するよう求める要請が記載されます。
これは、財産開示期日当日、債務者に対し、口頭で全財産の確認するというのは困難なので、事前に書面で回答をしてもらい、期日当日は、書面の内容を前提に話をする方が合理的かつ申立人にも有利だからです。
なお、財産目録は、提出期限を過ぎて提出した場合も提出しなかった場合も、それ自体で不利益を受けることはありません。

ウ 期日当日─出頭後の宣誓と質問への回答

まず、期日は非公開です。いわゆる裁判のような公開の法廷で傍聴席に人が入ることはありません。当然、双方の代理人は同席可能です。
期日が始まると、まず、期日内で嘘をつかないと宣誓する手続があり、宣誓が終わると、裁判所から財産の確認が行われます。
具体的には、裁判所が、債務者にどのような財産があるのかを口頭で質問し、債務者の回答内容が記録に残ります。
債務者が事前に財産目録を提出している場合、その内容どおりであるかの確認が行われます。
財産目録の内容が不明であったり、裁判官が疑問を抱いた場合、追加質問があります。
申立人本人や申立人代理人は、裁判所の許可を得て、債務者に質問できます。もっとも、根拠のない模索的質問や債務者を単に咎める等の関係のない発言は許可されません。
回答内容は裁判所で記録として保管され、申立人以外にも、一定の要件を満たした債権者も閲覧できます。
財産の確認が終われば、期日は終了し、財産開示手続も終了します。

エ 第三者からの情報取得手続の利用

財産開示手続以外の債務者の財産情報の収集手段として、第三者からの情報取得手続という方法もあります。この手続では、次の財産の情報を収集することができます。

㋐ 不動産情報
法務局保有の債務者名義の不動産(土地・建物)の所在地や家屋番号情報
※申立日の3年以内の財産開示手続前置が必要です。

㋑ 勤務先情報
市区町村や厚生年金を扱う団体の保有する債務者に対する給与の支給者(債務者の勤務先)情報
※申立日の3年以内の財産開示手続前置が必要です。
※債権が養育費請求権など民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権か、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権に限られます。

㋒ 預貯金情報
金融機関の保有する債務者の有する預貯金口座の情報(支店名、口座番号、額)

㋓ 株式情報
口座管理機関(社債、株式等の振替に関する法律2条4項)である証券会社等の金融商品取引業者や銀行が保有する債務者名義の上場株式・国債等の銘柄や数等の情報
※令和4年現在、いわゆるほふり((株)証券保管振替機構)保有の情報は、債務者が証券会社等の金融機関でない法人又は個人の場合、開示を受けられません。

2 財産開示手続を欠席したり、虚偽説明をした場合の罰則

実は、財産開示手続は改正が実施されており、改正前は、欠席したり虚偽説明をしたとしても罰則が軽く、平成29年度の財産開示手続の申立件数のうちの約40%は債務者が不出頭で手続きが終了しているという状況でした。
そのため、財産開示手続制度の実効性が問題視され、改正が行われました。
改正後の民事執行法213条1項5号、6号では、裁判所から財産開示期日に呼び出しを受けたにもかかわらず正当な理由なく出頭しない場合や、出頭したとしても宣誓を拒んだ場合、出頭して宣誓したにもかかわらず、陳述を拒んだり虚偽の陳述をしたりした場合に、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰が科されることになりました。
実際に、不出頭により、刑事事件化し書類送検されたとのニュースも報道されているところです。

3 財産開示手続及び第三者の情報取得手続の弁護士費用

⑴弁護士費用の相場(税別)
弁護士費用は、各事務所が自由に決定することができます。そのため、画一的な価格は存在しません。 そのなかで、ひとつの相場となるのが、かつて弁護士費用を日本弁護士連合会が定めていた時代に使用していた「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」ですが、財産開示手続や第三者の情報取得手続についての規定は特にございません。 そのため、現状、客観的な基準のある相場は特に存在しません。

⑵当事務所の弁護士費用(税込)
当事務所の財産開示手続及び第三者の情報取得手続の報酬基準は次のとおりです。

ア 財産開示手続
1申立につき5万5000円
※ただし、こちらの金額は強制執行とセットでご依頼の方に限ります。

イ 第三者の情報取得手続
1申立につき5万5000円
※ただし、こちらの金額は強制執行とセットでご依頼の方に限ります。

ウ 強制執行

強制執行

着手金

報酬金

執行額300万円以下
執行額の4.4%(最低11万円)

回収額300万以下
回収額の4.4%(最低11万円)

執行額300万円~3000万円
執行額の2.75%+4.95万円

回収額300万円~3000万円
回収額の2.75%+4.95万円

執行額3000万円~3億円
執行額の1.65%+37.95万円

回収額3000万円~3億円
回収額の1.65%+37.95万円

執行額3億円以上
執行額の1.1%+202.4万円

 回収額3億円以上
回収額の1.1%+202.4万円

 4 債権回収および財産開示手続を弁護士に依頼するメリット

⑴誤りなく法的手続を迅速・確実に進めることができる
財産開示手続は、手続が煩雑であり、利用できる場合の要件も限定されており、法的に正確な知識を要します。
そのため、なかなか個人で適切・迅速に手続を進めることは困難な場合が多いと思われます。
弁護士に依頼をした場合は、手続が遅延しないよう配慮しながら、迅速・確実に手続を進めることができます。

⑵財産開示手続内で和解をする場合もあるため弁護士が有用
財産開示手続は、前述のとおり、債務者の財産の開示を要求する手段ですが、期日内で和解が成立する場合も少なくありません。
その場合の交渉や条件設定は今後の支払いを確実にするためには重要となります。
弁護士に委任することで、一括して問題の解決を図れる場合があります。

⑶債権者として、債務者に質問する機会があるため弁護士が有用
手続内では、債務者に対して質問をすることができます。この質問を通じて、自主的に開示しなかった財産が見つかる場合もあります。
そのため、事前に期日に向けて、どのような財産があるか打ち合わせをしたうえで、質問の準備を行うためにも、尋問に精通している弁護士に依頼するメリットは大きいと思われます。

 5 おわりに

財産開示手続の具体的な態様は事案により様々です。こちらの記事をみたとしても、実際に自分のケースではどのような方法で進み、実際に開示を受けられるものなのかはイメージが付かない場合もあるかもしれません。

財産開示や第三者の情報取得手続の弁護士費用や手続について、何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

お電話でのお問い合わせ

平日9時~18時で弁護士が電話対応 

初回ご来所相談30分無料

☎︎ 03-5875-6124