「借地上の建物を譲渡しようと考えていますが、地主が賃借権を譲渡することについて承諾してくれません。この場合、土地賃借人としてはどのような措置をとることができますか」

このようなご質問をお客様から寄せられる場合があります。

このコラムでは、借地権の譲渡と地主の承諾に代わる許可について解説します。

 

【目次】

1 借地権の譲渡・転貸とその制限

2 賃借権の譲渡又は土地転貸についての承諾に代わる許可(借地非訟)

3 代諾許可の裁判

4 借地権の譲渡・転貸の承諾に関する当事務所の弁護士費用

5 おわりに

 

1 借地権の譲渡・転貸とその制限

借地借家法上の借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいいますが(借地借家法2条1号)、土地の賃借権については、民法612条1項が、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と規定しています。 そのため、地主の承諾がない限り、土地の賃借権の譲渡又は土地の転貸を行うことができません。
なお、一般に、土地の賃貸借契約書においては、「賃借人が賃借権を譲渡し、又は土地を転貸しようとするときは、あらかじめ賃貸人の書面による承諾を得なければならない。」などと制限条項が定められています。

 

2 賃借権の譲渡又は土地転貸についての承諾に代わる許可(借地非訟)

⑴ 地主の承諾に代わる許可(代諾許可)の申立て

地主が借地権の譲渡又は土地の転貸を承諾しない場合は、地主の承諾に代わる裁判所の許可を申し立てることができます(借地借家法19条1項)。
裁判所は、この申立てがされた場合、第三者が借地権を取得し、又は転借をしても地主に不利となるおそれがないときは、地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を与えることができます。
この代諾許可制度は、借地人が借地上の建物を売却して投下資本の回収を図る必要性と賃貸借が人的信頼関係に基礎を置くことのバランスを図る観点から、地主に不利になるおそれがない場合には、地主が承諾しないときでも、裁判所が代諾許可を与えることを認めた制度です。

⑵ 申立て後の手続きの流れ

代諾許可を裁判所に求めるには、まず申立書を借地権の目的である土地の所在地を管轄する地方裁判所に提出します。そして、その後はおおよそ以下の流れで手続きが進行します。
①裁判所が、第1回審問期日を定めるとともに申立書を土地所有者(相手方)に郵送する。
②裁判所は、第1回審問期日を開き、当事者(申立人及び相手方)から陳述を聴く(必要に応じて第2回、第3回と期日を重ねる。)。
③裁判所が、鑑定委員会に、許可の可否、承諾料額、賃料額、建物及び借地権価格等について意見を求める。
④鑑定委員会が、現地の状況を調査する(当事者も立ち会う。)。
⑤鑑定委員会が、裁判所に意見書を提出し、裁判所は意見書を当事者に送付する。
⑥裁判所が、鑑定委員会の意見について、当事者から意見を聴くための最終審問期日を開き、審理を終了する。
⑦裁判所が、決定書を作成し、当事者に送付する。

⑶ 申立てにあたって注意すべき点

代諾許可の申立てを行うにあたって注意すべき点は、以下の3点です。

ア 申立の時期
申立ては、建物及び土地賃借権の譲渡又は土地の転貸借前に行う必要があります(東京地裁昭和43年3月4日決定)。
建物につき、売買、贈与等の譲渡を原因とする所有権移転登記が経由されたときは特段の事情がない限り、建物の譲渡があり、土地賃借権の譲渡又は土地転貸が認められることになります(澤野順彦編『実務解説 借地借家法 第3版』青林書院2020年p258)。

イ 申立時に譲渡又は転貸の相手方が決まっていること
代諾許可の申立ては、土地賃借権譲渡又は土地転貸の相手方となる賃借権譲受人又は転借人予定者を特定して行う必要があります。
裁判所は、賃借権を譲渡しても地主に不利になるおそれがないか否かを判断することになるので、譲受人又は転借人が決まっていないと、その判断ができないからです。

ウ 建物の存在
借地上に建物が存在しなければ、申立てをすることはできません。
これは、借地借家法19条1項が借地上の「建物を第三者に譲渡しようとする場合」と規定しているためであり、この代諾許可制度は、建物の譲渡を前提とするものだからです。

⑷ 地主の介入権

借地人から代諾許可の申立てがなされた場合において、地主は、裁判所に対し、自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨を申し立てることができます(借地借家法19条3項)。
すなわち、地主は、この申立てをすると、借地人から譲渡等を受けようとする第三者に優先して、建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受けることができます。この制度は、借地人の投下資本の回収を図りたいという要望と地主が借地の返還を受けたいという利害の調整を図ったものです。
この制度を一般に「地主の介入権」と呼んでいます。

 

 代諾許可の裁判

⑴ 裁判で考慮しなければならない事項

裁判所は、「第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがない」場合に許可の裁判を行います。
そして、許可の裁判を行う際、裁判所は以下の事情を考慮する必要があります(借地借家法19条2項)
①賃借権の残存期間
②借地に関する従前の経過
③賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情
④その他一切の事情
この中で考慮の中心となるのは、③賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情、④その他一切の事情として、借地権譲受人の資力及び地主と賃借権譲受人との人的信頼関係の維持の可否です。
③賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情としては、困窮のため建物を売却する必要があるとか、老齢のため子どもの介護を受ける対価ないし謝礼の意味で建物を子どもに贈与する、などの事情が考えられます。
④のうち、地主と賃借権譲受人との人的信頼関係の維持の可否については、借地権譲受人が暴力団員等であるか否か、借地権譲受人の建物の利用目的などの事情が考慮されます。

⑵ 借地条件の変更と財産上の給付(承諾料)

裁判所は、代諾許可の裁判をする際に、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡・転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又は財産上の給付を許可の条件とすることができます(借地借家法19条1項後段)。
借地条件の変更として、多くの場合、賃料の増額があります。そのほか存続期間の延長が考えられますが、こちらはあまり行われないのが通例です。
財産上の給付は、一般に「承諾料」と呼ばれていますが、東京地方裁判所で許可されるほとんどの賃借権の譲渡事案では、借地権価格の10%程度(個別事情により若干の増減あり)の譲渡承諾料の支払を条件として許可が与えられています。

 

 借地権の譲渡・転貸の承諾に関する当事務所の弁護士費用

まず前提として、弁護士の費用には大きく分けて4つの費用がございます。

相談料
法律相談をする際に発生する費用です。
当事務所では、初回30分については0円です。

着手金
事件着手時に発生する費用のことで、事件の結果によって金額が変わることがない費用です。
結果にかかわらず着手金は返金されない費用となります。

報酬金
事件の解決時に発生する費用のことで、事件の結果によって報酬金は変わります。
つまり、経済的利益が得られなければ基本的に報酬金は0円となります。

実費等
実費は、交通費や郵便切手代等実際に掛かった費用です。
その他には、遠方の裁判所等に出張した場合に発生する日当や戸籍等の取得を弁護士に依頼をした場合の取得手数料があります。
詳細は、面談をした際に、実費等請求額基準表をお示ししてご説明いたします。

当事務所の借地権の譲渡・転貸の承諾に関する着手金と報酬金は、以下のとおりです(全て税込みです)。

〇着手金
和解交渉の場合 44万円
※交渉後、裁判所に代諾許可の申立て(借地非訟)を行う場合は、追加着手金11万円

○報酬金
借地権譲渡の承諾又は代諾許可を得られた場合 借地権価格の5.5%(ただし最低44万円)

 

5 おわりに

以上で解説したとおり、地主が借地権譲渡の承諾を行わない場合、借地権譲渡を必要とする理由や適切な承諾料についての主張を行っていく必要があります。
借地権譲渡の対応について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

 

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