「相手が養育費/婚姻費用の支払いをしません。強制的に支払いをさせる方法はありますか?」

 

このようなご質問をお客様からいただく場合がございます。

このコラムでは、給与の差押えによる養育費の回収方法について解説いたします。

 

【目次】

1 給与の差押えとは

2 養育費等に係る債権に基づく給与の差押え

3 給与の差押えの流れ

4 給与の差押えに関する当事務所の弁護士費用

5 おわりに

 

1 給与の差押えとは

給与の差押えとは、裁判所の手続き等で相手方が「お金を支払うこと」が確定したのにこれを守らない場合、裁判所を通して強制的に相手方の給与から支払いをさせる手続きです。
給与の差押えは、強制執行の一種であり、差押えを行う執行機関に申立てを行い、国家権力により債権回収を行う方法です。そのため、法律の規定に沿った手続きが必要となります。

 

2 養育費等に係る債権に基づく給与の差押え

 養育費や婚姻費用の強制執行として給与を差し押さえるには、次の条件が必要です。

ア 債務名義の正本等が相手方に送達されていること(民事執行法29条前段)

債務名義とは、平たく言うと、裁判所が強制的に権利を実現してよいとお墨付きを与えた文書です。
債務名義の例は、確定判決(確定した裁判所の判断が記載された文書)、調停調書(裁判所が調停の内容をまとめた文書)、和解調書(裁判所が和解の内容をまとめた文書)などです。

イ 支払いが遅れていること(民事執行法30条1項)

期限通りに支払いをしている相手方から強制的に財産を取り上げることはできません。
確定判決などの債務名義によって定められた支払期限を過ぎていることが必要となります。

ウ 相手方の勤務先を特定できること

給与の差押えは、相手方が給料債権を有する勤務先に対して行うものです。そのため、給与の差押えの申立書には、差押え対象の債権を特定して記載する必要があります(民事執行法規則133条2項)。
そして、この債権の特定のためには、当然勤務先を特定することが必要となります。

 

⑵ 養育費等は将来の支払い分まで差押えが可能

前記⑴のイで述べたとおり、給与の差押えを行うためには、支払いが期限に遅れていることが必要となります。
そのため、「毎月〇日までに〇〇万円を支払う。」などのように、定期的な支払いが予定されている場合は、毎月の支払期限が来る度に給与の差押えの申立てを行う必要があるのが原則です。
もっとも、養育費や婚姻費用については民事執行法151条の2第1項により特例が定められており、一部の支払いがされない場合は未だ支払期限が到来していない将来分についても一括して差押えを行うことが可能です。
なお、この特例を使用できるのは、差押えの対象が「給料その他継続的給付に係る債権」であることが必要です(民事執行法151条の2第2項)。相手方が会社員ではなく、個人事業主である場合、支払いを受けているのが給与名目ではなく業務委託料名目であることが多いため、差し押さえの対象となることの裁判所への別途の説明が必要となる場合があります。業務委託債権が差し押さえの対象になるかどうかの判断は、個別の検討を要するポイントですので、まずは問題となる業務委託債権が差し押さえ可能かどうか、ご相談頂ければと思います。

 

⑶ 養育費・婚姻費用の強制執行で差し押さえることができる金額

給与の差押えは上限金額が設定されています。通常は、手取り額が月額44万円以下の場合は手取り額の4分の1、手取り額が月額44万円を超える場合は手取り額から33万円を控除した額が上限となります(民事執行法152条1項2号、民事執行法施行令2条1項1号)。
もっとも、養育費・婚姻費用の強制執行で差押えを行う場合は、民事執行法152条3項により特例が定められており、手取り額の半分まで差押えが可能です。
すなわち、手取り額が月額66万円以下の場合は手取り額の2分の1、手取り額が月額66万円を超える場合は手取り額から33万円を控除した額が上限となっています。
 

3 給与の差押えの流れ

給与を差し押さえてお金を回収する一般的な流れは、以下のとおりです。

①債務者の住所地を管轄とする地方裁判所に書面で申立てを行う。
 併せて、第三債務者(相手方の勤務先)に陳述催告の申立ても行う。
 ※陳述催告の申立てとは、第三債務者に差押え対象の給与債権の存否等について報告してもらうための申立てです。
➁書面審査の通過後、裁判所から債権差押命令が発令される。
③裁判所から第三債務者に債権差押命令が送達される。
④裁判所から債務者(相手方)に債権差押命令が送達される。
⑤第三債務者から裁判所に陳述書が返送される。
⑥差押え対象債権がある場合、第三債務者からお金を回収する。
 ※お金の回収は、自ら第三債務者から行う必要があり、裁判所が回収してくれるものではありません。

 

 給与の差押えに関する当事務所の弁護士費用

給与の差押えに関する当事務所の弁護士費用は以下のとおりです。なお、以下の費用は、債務名義の取得に当事務所が関与した場合の費用となりますので、執行のみ単独でのご依頼の場合は事案により金額が増額する場合がございます。

 

強制執行

着手金

報酬金

執行額300万円以下
執行額の4.4%(最低11万円)

回収額300万以下
回収額の4.4%(最低11万円)

執行額300万円~3000万円
執行額の2.75%+4.95万円

回収額300万円~3000万円
回収額の2.75%+4.95万円

執行額3000万円~3億円
執行額の1.65%+37.95万円

回収額3000万円~3億円
回収額の1.65%+37.95万円

執行額3億円以上
執行額の1.1%+202.4万円

 回収額3億円以上
回収額の1.1%+202.4万円

 

5 おわりに

給与の差押えにはいくつもの段階を踏む必要があり、必要書類も多いため、正確な法的知識が要求されます。
養育費・婚姻費用の未払いで何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

 

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