私は会社役員なのですが、交通事故で休業損害は出るのでしょうか。会社を休んでも、役員報酬自体には変動はないのですが・・

こういったご相談はよくございます。

このコラムでは、役員報酬について休業をしたとしても減額がない場合に、休業損害を請求できるのか解説します。

 

 

【目次】

1 なぜ会社役員の場合は、休業損害の算定において問題になるのか

2 役員報酬の減額がない場合、一切休業損害を受領することはできないのか

3 役員報酬のうち、どの程度が労務の対価と判断されるのか

4 交通事故問題の弁護士費用の相場と当事務所の弁護士費用

5 交通事故を弁護士に依頼するメリット

 

 

1 なぜ会社役員の場合は、休業損害の算定において問題になるのか

前提として、休業損害とは、被害者が交通事故により受けた傷害の症状が固定するまでの療養期間中に、傷害及びその療養のため休業し、または十分に稼働することが出来なかったことから生ずる収入の喪失をいいます。
会社役員の場合、いわゆるサラリーマンとは異なり、年に1回、予め役員報酬を定め、原則として増減することなく定まった役員報酬が支払われます。すなわち、事故で会社を休む、あるいは、十分に稼働することが出来なかったとしても、役員個人としては定まった役員報酬を受領できるため、休業損害がないようにも思えることから問題となります。

 

2 役員報酬の減額がない場合、一切休業損害を受領することはできないのか

まず、原則としては、労務提供が一切ないにもかかわらず、役員報酬が減額されない場合、被害者個人として休業に伴う損害が発生していないことから、役員の休業損害を請求することは困難です。
他方、役員報酬を実際に減額したり、役員報酬は一応以前と同様の金額を維持するものの返上し、短期貸付金として生活保障のために仮に給付している場合は、役員であったとしても休業損害を請求できるものと扱わねば、不均衡です。また、翌年の役員報酬改定の際、事故で就労できなかったことを理由に役員報酬を減額した場合は、休業損害を認めている裁判例もございます。
ここで、役員報酬といってもその態様は様々であり、たとえば、Ⓐまったく就労の実態がない名目的な取締役で、名前を入れておくだけで月10万円などの報酬を受領する役員と、Ⓑ役員自身に特殊な技能があり、当該役員が現場に出て稼働することで売り上げをあげている役員を同列に議論することはできないことは直感的にも違和感はないかと思われます。
実務上は、役員報酬の場合は、一律に休業損害と認められないと判断するのではなく、その役員の労務提供の対価の部分は休業損害として認容されるが、利益配当の実質をもつ部分は役員報酬として認定することには消極的であるという見解に立ちます(企業主の逸失利益に関する最高裁第二小法廷昭和43年8月2日民集22巻8号1525頁参照)。
そのため、上記Ⓐの例については、労務の対価としての部分があるとは言い難いですが、Ⓑの例については、労務の対価としての部分は少なくとも一定程度はあるといえそうです。
なお、仮に、役員報酬自体は一切減額がない場合でも、本来は労務の対価として給付していた役員報酬部分については、労務提供を受けずに会社が支払うことになるため、会社に損害が発生することとなります(会社の反射損害等といいます。)。もっとも、事故にあった役員が休業したことにより、具体的にいくら会社の売り上げが減少したという主張立証が必要になり、現実的にはハードルは高いです。

 

3 役員報酬のうち、どの程度が労務の対価と判断されるのか

そうすると、役員報酬のうちどの程度(何割)が労務の対価の部分として取り扱われるのか、という疑問が当然湧いてきます。
実務上は、この判断にあたっては、会社の規模、利益状況、当該役員の地位・職務内容、年齢、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給与額、事故後の当該役員及び他の役員の報酬額の推移、類似法人の役員報酬の支払状況等を判断要素とし、個別具体的に判断をしております。
一例ですが、会社の規模に関し、実質的に社長1人で運営する個人会社であれば、個人事業主の場合と同様に企業収益を基礎に収入を算定できる場合もあります。また、大企業のサラリーマン重役の場合は役員報酬の大部分につき労務対価性があると判断される場合があります。
役員報酬の額に関しては、高額であるか否かの一つの目安として賃金センサスを参照する裁判例も相当数ございます。賃金センサスの額に労務対価性のある部分がすり切られるという趣旨ではなく、少なくとも賃金センサス部分については労務対価性があると認定する流れでの利用が多いように思われます。

以上のように、個々の事例ごとの判断になるため、詳細に資料を参照して判断をしていくことになります。会社役員の場合は、役員報酬も高額になることが多く、判断に関しても微妙な判断を強いられるケースも少なくない為、相手方の保険会社も素直に役員報酬を支払ってくれないケースも多いです。その意味でも、会社役員の交通事故に関しては、他の類型以上に、特に弁護士に依頼するメリットは大きい類型の一つといえます。

 

4 交通事故問題の弁護士費用の相場と当事務所の弁護士費用

(1) 弁護士費用の相場(税別)

弁護士費用は、各事務所が自由に決定することができます。そのため、画一的な価格は存在しません。
そのなかで、ひとつの相場となるのが、LAC基準と言われる基準です。
LACとは、日弁連リーガル・アクセス・センターの略称で、自動車保険や共済が、日弁連と協定を結んで制度を運用している基準となります。
こちらの基準では、弁護士費用を、事件又は法律事務の依頼を受けたときに生じる「着手金」と事件等の処理が終了したときに生じる「報酬金」に分けて説明しております。
同基準に基づくと、交通事故問題の弁護士費用は次のとおりとなります(税別)。

経済的利益の額

着手金

報酬金

125万円以下の場合

10万円

経済的利益の16%

300万円以下の場合

経済的利益の8%

経済的利益の16%

300万円を超え3000万円以下の場合

経済的利益の5%+9万円

経済的利益の10%+18万円

3000万円を超え3億円以下の場合

経済的利益の3%+69万円

経済的利益の6%+138万円

3億円を超える場合

経済的利益の2%+369万円

経済的利益の4%+738万円

 

(2) 当事務所の弁護士費用(税込)

【弁護士費用特約が付いている場合】
原則として無料ですぐに相談できます。

※弁護士費用特約が付いている場合、保険会社から相談料と着手金をお支払いいただけるため、自己負担なく弁護士へのご相談・着手が可能です。
※弁護士費用特約とは? ご契約の保険会社ごとにサービス内容は異なるのですが、弁護士に関する費用を保険会社の約款に従ってお支払いいただけるサービスです。ご本人が加入されていなくても、ご家族がご加入されている自動車保険で特約を受けられるケースがあります。ご自身だけでなくご家族の自動車保険に弁護士特約が付いていないか、ご確認されることをお勧めします。また、火災保険等にもついている場合もあります。自動車保険以外でご加入中の保険がありましたら、一度ご確認ください。
※弁護士費用は保険会社へ請求いたしますので、原則として相談料・着手金については、ご本人に実質的なご負担はありません。
※報酬金については、ご依頼いただいた事件の賠償額やご契約の保険内容によりますが、自己負担額はゼロ円となる場合もあり、負担が発生したとしてもかなりの割合を保険会社が負担していただける場合が多いです。

詳細は、ご来所いただいた際に、図示しながら丁寧にご説明させて頂きます。

 

【弁護士費用特約が付いていない場合】
当事務所の交通事故問題の報酬基準は次のとおりです。

交通事故

(弁護士費用特約の利用がない場合

 

着手金

報酬金

交渉

0円

回収金額の11%+22万円

ADR

22万円

訟訴

33万円

※ADRから訴訟に移行した場合は着手金22万円で承ります。

※当事務所では、弁護士費用特約がついていない場合でも、交渉は原則として着手金無料ご依頼を承っております。
※相手方が無保険の場合は交渉段階であっても着手金を頂戴します。詳細は相談時にご説明いたします。
※人身傷害保険との交渉や労災との交渉をご依頼の場合は別途相談時にご説明いたします。

 

5 交通事故を弁護士に依頼するメリット

役員の休業損害は、労務対価性があるか否かの判断により大きく金額は変動します。
前述の考慮要素をご自身の会社においてどの程度適用し、主張に反映できるかは、個人で実施することはよほど交通事故に関して熟達していなければ難しいと思われます。
相手方の保険会社によっては、役員に休業損害はない、あるいは休業損害は自賠責基準で判断する等と当然の前提かの如く主張するケースもございますので、適切に然るべき主張を行う必要性は大きく、役員報酬は金額も高額であることも少なくない為、最終的な賠償金受領額との関係でも大きな差を生みます。
弁護士に依頼することは、受領金額の問題以外にも、法的に誤りのない解決に近づけ、納得のいく解決に繋がります。また、相手方担当者と直接交渉する必要はなくなるため、ストレスを軽減し、時間も有効活用できます。

弁護士に依頼すべきかどうかも含め、何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

 

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