「親戚/友人に無償で建物を貸しましたが、返還を求めても一向に出ていきません。明渡しを求めることはできますか?」

 

このようなご質問をお客様から寄せられる場合があります。

このコラムでは、使用貸借における明渡し方法とその流れを解説いたします。

 

【目次】

1 使用貸借とは

2 使用貸借において明渡し(返還)を求めることができる場合

3 明渡し請求の具体的な流れ

4 不動産明渡しに関する当事務所の弁護士費用

5 おわりに

 

1 使用貸借とは

使用貸借とは、物を無償で貸し借りする契約です(民法第593条)。友人に無料で傘を貸したり、親から無料で自動車を使わせてもらう場合は使用貸借にあたります。なお、借物の固定資産税を支払っている場合など一定の金銭授受がある場合でも、使用貸借にあたる場合があります。
これ対し、賃料を支払って物の貸し借りを行う契約を賃貸借といいます(民法第601条)。賃貸アパートやレンタカーを借りる場合はその対価を支払っており、賃貸借にあたります。
使用貸借は無償であるが故に口約束で日常的に行われており、特に不動産の貸し借りの場合も契約書が作成されないことが多いため、トラブルになることが多いと言えます。

 

2 使用貸借において明渡し(返還)を求めることができる場合

使用貸借において借主に明渡しを求めるためには、使用貸借が終了している必要があります。使用貸借が終了する典型例は以下の場合です。

① 使用貸借期間の満了(民法第597条1項
当事者が定めた契約期間が満了した場合に終了します。

② 目的に従った使用及び収益の終了(民法第597条2項
当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了します。

③ 目的に従った使用及び収益に足りる期間の経過(民法第598条1項
②は目的に従った使用及び収益が終わったことが前提ですが、この使用及び収益が終わっていない場合でも、使用及び収益に足りる期間が経過したときは、貸主は使用貸借の解除を行うことができます。

④ 借主が死亡したとき(民法第597条3項

⑤ 期間も目的も定めがない場合の解除(民法第598条2項
当事者が使用貸借の期間も目的も定めなかった場合は、貸主は、いつでも使用貸借を解除することができます。

親族や友人間で、契約期間を定めずに建物や土地の使用貸借を行う場合、上記②と③が問題となることが多いです。
特に、上記③では、どのような場合に「目的に従った使用及び収益に足りる期間の経過」といえるかが問題となります。
最高裁昭和45年10月16日判決・集民101号77頁は、礼拝堂の建物所有を目的とした使用貸借の事案で、「目的に従った使用収益に足りる期間の経過」について、「その期間の経過が相当であるか否かは、単に経過した年月のみにとらわれて判断することなく、これと合わせて、本件土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、上告人教会の本件土地使用の目的、方法、程度、被上告人の本件土地の使用を必要とする緊要度など双方の諸事情をも比較衡量して判断すべき」と判断しています。
この判断基準については、居住用建物の所有を目的とした土地使用貸借や、建物使用貸借にも妥当するものと考えられているため、上記③の場合で不動産の使用貸借の借主に明渡しを求めるときは、上記の判断基準に基づいて主張を組み立てる必要があります。

 

3 明渡し請求の具体的な流れ

⑴ ステップ1(借主に明渡しを求める文書を送付する

借主に対し、使用貸借が終了した旨と期限を指定して明渡しを求める旨を記載した文書を送付します。

⑵ ステップ2(土地/建物明渡訴訟の提起

ステップ1の期限までに明渡しが実施されない場合、今度は土地/建物明渡しの訴訟を提起することになります。
意に退去しない借主を強制的に退去させるためには、ステップ3の強制執行を行う必要があります。しかし、その強制執行を行うためには、債務名義が必要になります。
債務名義とは、平たく言うと、権利を強制的に実現してもよいことを裁判所が許可した文書となります。建物明渡し請求との関係でいえば、「貸主が借主を強制的に退去させてもよい」と裁判所からのお墨付きをもらうことになります。
そして、このお墨付き(債務名義)を裁判所からもらうためには、土地/建物明渡しの訴訟で、借主に勝つ必要があります。

⑶ ステップ3(強制執行による強制退去

明渡しの請求を認める判決が出た場合、たいていの借主は退去に応じます。しかし、訴訟で負けたにもかかわらず、退去を行わない借主は一定数存在します。
このような任意に退去を行わない借主に対しては、最終手段として強制執行により追い出すことになります。
強制執行による強制退去の方法は、建物所在地を管轄する地方裁判所に強制執行の申立てを行います。この際、費用として予納金(借主の人数や各地方裁判所の規定により増減します)を支払う必要があります。
実際に強制執行を行うのは執行官という裁判所の職員です。予納金を支払った後、執行官や立会人等の関係者と強制執行を行う部屋に訪問し、明渡し期限と強制執行日時を記載した書面を部屋に張り付けます。これを明渡しの催告(民事執行法第168条の2)と言い、借主に対する最終通告となります。
そして、借主が最終的に退去せず、強制執行日時になった場合、執行官や鍵業者らが強制執行の現場に出向き、開錠して部屋から荷物を強制的に運び出し、明渡し完了となります。なお、この場合、別途、運び出す業者や鍵屋等の費用、運び出した荷物の保管場所の費用等が発生します。

 

 不動産明渡しに関する当事務所の弁護士費用

【不動産明渡し】(税込)

不動産明渡し

 

着手金

報酬金

交渉

33万円

明渡しを請求し認容された場合

・賃料滞納が理由の場合:33万円
・それ以外が理由の場合:55万円

訴訟

33万円

※交渉から訴訟に移行する場合は追加着手金11万円

※月額最低5、5万円の分割払い可
※処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分を行う場合は、着手金22万円を加算


【不動産明渡の強制執行(判決後も任意に明け渡さない場合)】(税込)

22万円
※強制執行に先立ち,当事務所に事件のご依頼を頂いていた方のみ,この金額で強制執行手続を承ります。

 

5 おわりに

今回は使用貸借における明渡し請求について解説しました。無料で貸していても使用貸借を終了させ、明渡しを求めることはそう容易ではありません。
使用貸借について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

 

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