「社内でパワハラが起きた場合、会社が負う賠償金はどれくらいですか。」

このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。

このコラムでは、会社にパワハラの責任が認められた裁判例をご紹介します。

【目次】

1 はじめに

2 会社にパワハラの損害賠償責任が認められた裁判例

3 社内のパワハラ問題を弁護士に依頼するメリット

4 パワハラに関する当事務所の弁護士費用

5 おわりに

 

1 はじめに

職場でパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)が起きた場合、会社には、
①損害賠償請求を受けるリスク
②行政指導等を受けるリスク
③レピュテーションリスク
が発生します(過去コラム「パワハラで訴訟を提起されたら会社はどのように対応すべきか。弁護士が解説。」をご参照下さい)。
以下では、①損害賠償請求を受けるリスクについて、会社にパワハラの責任が認められた裁判例をご紹介します。

 

2 会社にパワハラの損害賠償責任が認められた裁判例

暴行等のパワハラにより社員が自殺し、会社に高額の損害賠償責任が認められた事例(名古屋地裁平成26年1月15日判決・判例時報2216号109頁)

【事案の概要】
金属ほうろう加工業を営む会社(被告)の従業員(死亡当時52歳 男性)が、会社役員2名から日常的な暴行やパワーハラスメント、退職勧奨等を受けたことが原因で自殺したとして、当該従業員の遺族である妻子が会社及び会社役員2名に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、715条、会社法350条)訴訟を提起した事案。
本判決は、会社役員1名によるパワハラ、暴行、退職強要等の不法行為と従業員の死亡との間に相当因果関係があったことを認め、被告会社及び会社役員1名に対し、合計5400万円余りの損害賠償を命じました。


【判旨の要約】

⑴ パワハラについて

本判決は、会社役員のうち1名(代表者)につき、以下の事実があったと認定し、①から④までの暴言や暴行は仕事上のミスに対する叱責の粋を超えて死亡した従業員を威迫し、激しい不安に陥れるものであって不法行為に該当する、⑤の退職強要についても不法行為に該当すると判断しました。

①死亡した従業員が仕事上のミスをした際、複数回に渡って「てめえ、何やってんだ」「どうしてくれるんだ」「ばかやろう」などと汚い言葉を大声で怒鳴ったり、あわせて同人の頭を叩く、同人を殴る、蹴るなどした。

②死亡した従業員ほか1名の従業員に対し、同人らがミスによって被告会社に与えた損害を弁償するよう求め、弁償しないのであれば家族に払ってもらうと述べた。

③死亡した従業員ほか1名の従業員に対し、「会社を辞めたければ7000万円払え。払わないと辞めさせない。」と述べた。

④死亡した従業員の大腿部後面を2回蹴り、全治約12日間を要する両大腿部挫傷の傷害を負わせた。

⑤死亡した従業員に対し、退職願を書くよう強要し、同人は退職届を下書きした。その下書きには「私(死亡した従業員名)は会社に今までにたくさんの物を壊してしまい損害を与えてしまいました。会社に利益を上げるどころか、逆に余分な出費を重ねてしまい迷惑をお掛けした事を深く反省し、一族で誠意をもって返さいします。二ケ月以内に返さいします。」と記載され、「額は一千万~一億」と鉛筆で書かれ、消された跡があった。


⑵ 自殺とパワハラの因果関係について

裁判所は、以下の事実からすれば、上記パワハラはいずれも死亡した従業員に強い心理的負荷を与えていたといえるため、自殺とパワハラとの因果関係を認めました。

・死亡した従業員は、生前「この仕事に向いていないのかな。昔はこんな風じゃ
 なかったのに。」などと口にしたり、日曜の夜になると「明日からまた仕事
 か。」と言って憂鬱な表情を見せるようになっており、これらの従業員の言
 動の時期と上記パワハラの時期が接近していること

・死亡した従業員が仕事においてミスが多くなると、代表者は、しばしば、汚
 い言葉で大声で怒鳴っており、自殺の約半年前以降はミスをした時に頭を叩
 くという暴行を時々行っていたこと

・自殺の7日前に④の暴行が行われたこと

・自殺の3日前に⑤の退職強要が行われていたこと

⑶ 損害賠償について

裁判所は、被告会社及び代表者に対し、死亡した従業員が生きていたならば得られたであろう収入相当額(逸失利益)、慰謝料などの合計5400万円余りの損害賠償を命じました。

【解説】

⑴ 会社の負う責任

会社の役員又は従業員が、他の労働者にパワハラを行い、それが不法行為(民法709条)となる場合、会社は使用者責任(民法715条)又は会社法350条に基づき、行為者と連帯して、損害を賠償する責任を負います。
本事案では、代表者が行った①~⑤の行為については、不法行為に該当すると判断され、会社は会社法350条により代表者と連帯して損害賠償責任を負うと判断されました。

⑵ 使用者責任について

ア 使用者責任とは

民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。
使用者責任とは、端的にいえば、「従業員が職務上のミスなどで第三者に損害を与えた場合、その使用者である会社も損害賠償責任を負う」というものです。

イ 使用者責任の要件

使用者責任が成立するには、①従業員が不法行為を行い、第三者に損害を与えたこと、②使用者と加害者である従業員が事実上の指揮監督関係にあること、③①の不法行為が事業の執行において発生したものであること、が必要となります。
なお、③については、使用者の事業の実態、規模等からしてそれが従業員の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合は要件を充たすことになります。

ウ 会社法350条の代表者の行為についての損害賠償責任について

会社法350条は「株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。
これは、使用者責任と同様に会社の代表者が不法行為を行った場合も株式会社は責任を負うとするものです。

⑶ 損害賠償の内容

本件のように、自殺がパワハラによるものであると判断された場合、慰謝料にとどまらず、自殺した従業員が生きていたならば得られたであろう収入相当額までも損害となり、高額な賠償金額となる場合があります。
このような最悪の事態をさけるためにも、会社としては、パワハラを防止する体制をしっかり講じるべきです。具体的なパワハラへの対応策については、別コラム(「パワハラで訴訟を提起されたら会社はどのように対応すべきか。弁護士が解説。」)にて解説しておりますので、そちらをご参照下さい。

 

3 社内のパワハラ問題を弁護士に依頼するメリット

⑴ 法令・裁判例に適した対応を行うことができる

パワハラは多種多様なものであるため、パワハラに該当するかどうか、該当するとしてもそれが違法となるかの判断は容易ではありません。
従業員はパワハラと主張していても、法的には損害を賠償する必要のない事案もございます。
この判断を正確に行うためには、関係法令や裁判例などを踏まえる必要がありますので、弁護士に依頼することで正確な判断が期待できます。
判断を誤り、不正確な対応をしてしまった場合は、従業員から訴訟を起こされるなどのリスクがありますので、パワハラの対応には正確な判断を行うことが不可欠となります。

⑵ 直接やりとりをすることがなくなるので、交渉や手続等の負担を大幅に軽減できる

弁護士に依頼をした以降は交渉の窓口は弁護士になります。
そのため、直接揉めている相手方とやりとりをすることがなくなるため、ストレスと交渉に対応する時間を大幅に軽減することができます。
また、こちらの主張を受け入れてもらうためには、その伝え方や主張の順番等を考慮しながら手続を進めることが重要です。
どのように交渉を進めるとより適切な解決に導けるか、弁護士は常に考えながら手続を進めます。
ご自身で法的な知識の側面以外に、そのような点も配慮しながら手続を進めることは負担が大きく、それを弁護士に肩代わりさせられる点は大きなメリットといえます。

⑶ 事前防止策から再発防止策までトータルなサポートを受けることができる

パワハラへの対応には、就業規則にパワハラの指針等の明記、パワハラ研修会、パワハラ窓口の設置、被害者への配慮措置、加害者への懲戒等の対応、再発防止策の実施など、対応することが非常に多く、しかもその対応には関係法令等の正確な理解が必要となります。
この点、弁護士であれば事前防止策、実際に起きたパワハラへの対応、再発防止策への対応を正確な知識に基づき行うことができます。
なお、パワハラ防止体制は一朝一夕で完成するものではないため、必要に応じて顧問弁護士の依頼も検討されるとよいでしょう。

 

 パワハラに関する当事務所の弁護士費用

⑴ パワハラにより従業員から損害賠償請求をされてしまった場合


和解交渉

和解交渉

着手金

報酬金

請求額300万円以下
16.5万円

300万円以下
減額額の22%(最低33万円)

請求額300万円~3000万円
請求額の3.3%+6.6万円

300万円を超え、3000万円以下
減額額の11%+33万円

請求額3000万円~3億円
請求額の2.2%+28.6万円

3000万円を超え、3億円以下
減額額の6.6%+165万円

請求額3億円以上
請求額の1.1%+369.6万円

3億円を超える場合
減額額の4.4%+825万円

※法人・個人事業主のご依頼者様で顧問契約を締結頂いた場合、着手金を毎月の顧問料(5.5万円)としてお支払頂くことも可能です。

 

訴訟

訴訟

着手金

報酬金

請求額300万円以下
請求額の8.8%(最低26.4万円)

減額額300万以下
減額額の22%(最低33万円)

請求額300万円~3000万円
請求額の5.5%+9.9万円

減額額300万円~3000万円
減額額の13.2%+26.4万円

請求額3000万円~3億円
請求額の3.3%+75.9万円

減額額3000万円~3億円
減額額の8.8%+158.4万円

請求額3億円以上
請求額の1.1%+369.6万円

 減額額3億円以上
減額額の4.4%+1478.4万円

 

⑵ パワハラ防止体制の継続的なサポートをご希望される場合(顧問契約)

顧問契約は月額3万3000円(税込み)で承っております。
サービス内容の詳細については、当事務所の顧問契約紹介ページ(https://kl-o.jp/corporateadvisor/#companycost)をご参照下さい。

 

5 おわりに

パワハラに関する問題は、会社として適切な対応を求められ、判断を誤った場合はリスクが生じるおそれがあります。
社内におけるパワハラ対応について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

 

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