「株主として会社の情報を知りたい!」
「株主から閲覧謄写請求をされたがどのように対応すればよいか。」
このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。
このコラムでは、株主が行使することができる閲覧謄写請求権につき説明します。
【目次】
1 はじめに
2 各種閲覧謄写請求権等
3 閲覧謄写請求権等対応を弁護士に依頼するメリット
1 はじめに
株主が、会社を被告として株主総会の問題点(瑕疵)を主張する訴訟提起等を検討するに当たっては、事前に会社の現在の状態等がどのようになっているか情報収集をすることが極めて重要です。また、訴訟提起目的以外でも様々な理由から会社に関する情報を株主が取得したいと考える場面はございます。
そこで、会社法では、このような情報収集のための手続の一つとして、会社が作成保存する各種書類の閲覧謄写請求権等を認めています。
2 各種閲覧謄写請求権等
会社法が株主に対して認めている閲覧謄写請求権等には、主に以下のものがあります。
(※以下では「株主」としての地位に基づいて請求できるものに限定して説明します。)
①定款
②株主名簿記載事項を記載した書面の交付
③株主名簿
④株主総会議事録
⑤取締役会議事録
⑥計算書類
⑦会計帳簿
これらの書類の請求に関しては、会社法上、請求権者、書類の備置き期間・保存期間、請求権の内容、請求要件等が詳細に規定されております。その主なものを表形式にまとめると次のとおりとなります。
(※必ずしも網羅的なものではないことはご留意ください。)
書類等の内容 |
請求権者等 |
備置き期間・保存期間 |
閲覧謄写等の対象 |
請求権の内容 |
請求要件等 |
|
①定款(法31条) |
株主 |
- |
- |
閲覧請求 謄本・抄本交付請求 (法31条2項) |
なし (請求権者であれば可) |
|
株主権関係 |
②株主名簿記載事項記載書面(法122条) |
株主 |
- |
- |
交付請求 (法122条1項) |
なし (請求権者であれば可) |
③株主名簿(法125条) |
株主
|
定めなし |
- |
閲覧・謄写請求 (法125条2項) |
[請求要件] 請求理由明示(法125条2項柱書後段) [拒絶要件] ①権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき ②業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき ③株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき ④過去2年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき (法125条3項) |
|
議事録関係 |
④株主総会議事録 (法318条) |
株主
|
株主総会の日から10年間備置き (法318条2項) |
原則10年間の備置き期間内の株主総会議事録 |
閲覧・謄写請求 (法318条4項) |
なし (請求権者であれば可) |
⑤取締役会議事録 (法371条) |
株主 ※監査役設置会社の場合裁判所の許可必要 |
取締役会の日から10年間備置き (法371条1項) |
原則10年間の備置き期間内の取締役会議事録 |
閲覧・謄写請求 (法371条2項) |
[請求要件] 権利を行使するため必要があるとき (法371条2項柱書) |
|
計算書類等関係 |
⑥計算書類等(法442条) ・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変動計算書 ・個別注記表 等 |
株主
|
5年間備置き (法442条1項) |
原則5年間の備置き期間内の計算書類等 |
閲覧請求 謄本・抄本交付請求 (法442条3項) |
なし (請求権者であれば可) |
⑦会計帳簿(法433条) ・仕訳帳 ・総勘定元帳 ・現金出納帳 ・手形小切手元帳 ・伝票 ・受取証 等
|
総株主の議決権の3%以上の議決権 又は発行済株式の3%以上の株式を有する株主
|
閉鎖の時から 10年間保存 (法432条2項) |
保存期間にかかわらず現存する会計帳簿 |
閲覧・謄写請求 (法433条1項) |
[請求要件] 請求理由明示(法433条1項柱書後段) [拒絶要件] ①権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき ②業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき ③請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき ④請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき ⑤過去2年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき (法433条2項) |
3 閲覧謄写請求権等対応を弁護士に依頼するメリット
株主として閲覧謄写請求権等を行使する場合には、会社法上に定められた請求要件等を踏まえた請求を行うとともに、請求の結果得られた情報をその後の訴訟等法的手続にどのように活かすかということを含めた総合的な戦略を考える必要があります。
また、閲覧謄写請求権等を行使された会社側の場合には、会社法等に基づき請求に適切に対応する必要があるとともに、その後に提起されるであろう訴訟等を見据えた対応方針を策定する必要があります。
このように、閲覧謄写請求権行使後の対応を含めたトータルの戦略・対応方針を考える必要があることから、会社法・会社訴訟に通じた弁護士に依頼することで適切な対応を行うことができるものと思います。
なお、開示請求側、開示請求を求められた会社側いずれもご依頼を承ることは可能です。費用については、開示請求の対象資料や開示請求時のご事情により難易が異なるため、個別に見積もりを取らせていただいております。
まずはお気軽にお問合せください。
お電話でのお問い合わせ
平日9時~18時で弁護士が電話対応
※初回ご来所相談30分無料