「相手方に金銭を貸し付けており、不動産の仮差押えを検討しているが、裁判所に担保金を納める必要があると聞いた。どれくらいの金額が掛かるのか。」

「相手方に対して勝訴判決を取得しており、不動産の強制執行を検討しているが、裁判所に予納金を納める必要があると聞いた。どれくらいの金額が掛かるのか。」

債権回収を進めるにあたって、裁判所に納めるお金がいくらかかるのかは、多くのお客様が気になるポイントです。

このコラムでは、民事保全、民事訴訟、民事執行において裁判所に納めるお金について説明をします。

【目次】
1 設例

2 民事保全(不動産仮差押え)の場合
⑴ なぜ仮差押えが必要なのか
 担保金の金額はどう決まるか
 設例での担保金額

3 民事訴訟(貸金返還請求)の手数料一覧
⑴ 訴え提起の手数料とは
⑵ 設例での手数料
⑶ 請求額別の手数料早見表

4 民事執行(不動産執行)の予納金の目安
⑴ 民事執行の予納金とは  
 東京地方裁判所の予納金基準
 設例での予納金額

5 債権回収の弁護士費用

6 よくある質問(FAQ)
Q1 仮差押えの担保金は戻ってくるのですか?
Q2 不動産執行の予納金は戻ってくるのですか?
Q3 裁判所に納めた費用は相手方に請求できますか?
Q4 担保金を用意できない場合はどうすればよいですか?

7 おわりに

 

1 設例
このコラムでは、
債権者Xが、債務者Yに対して、1500万円を貸し付けており、債務者Yが所有する不動産(固定資産税評価額1800万円)が判明している(※)
という設例に基づき、「裁判所に納めるお金」につき、説明します。

※ 実務上のポイント
債務者Yの住所を調べ、ブルーマップ(住宅地図上に、法務局備え付けの「公図」に基づく地番等を重ね合わせ、青色で記載した地図)と照らし合わせて、住所から不動産登記上の地番を特定し、不動産登記を取得することで強制執行可能な不動産があるか否か(債務者の所有となっているか、抵当権の設定はあるかなど)を調査検討するのが一般的です。貸付けと同時に不動産に抵当権を設定するというケースもあります。

登記事項証明書
Y所有

 <設例>

債権者X           債務者Y

1500万円貸付け

借用書
1500万円

固定資産評価証明書
1800万円

 

2 民事保全(不動産仮差押え)の担保金の目安
⑴なぜ仮差押えが必要なのか
借用書があるにもかかわらず、Yが返済期限になっても支払わない場合、Xは民事訴訟を提起して、勝訴判決を得て、確定した勝訴判決に基づき不動産に対する強制執行(不動産執行)を申し立てる必要があります。

しかし、民事訴訟には1年前後の時間を要するのが一般的であるため、その間にYが不動産を売却してしまうリスクがあります。

そこで、そのようなリスクを無くすため、民事訴訟を提起する前にYが不動産を売却等できないように「現状凍結」するために民事保全(不動産の仮差押え)をする必要があることになります。

⑵担保金の金額はどう決まるか
仮差押えを申し立てると、裁判所から担保金を立てられるよう命じられるのが一般的です。

この担保金については、裁判所においておおよその担保基準が設定されており、貸付金債権に基づき不動産執行をする場合は、目的物である不動産の価格の10%~25%であるとされています(司法研修所編『民事弁護教材改訂民事保全(補正版)』29頁掲記の「仮差押えの担保基準」)。

不動産の価格は、固定資産評価証明書記載の固定資産税評価額によることが一般的です。

⑶設例での担保金額

項目

金額

固定資産税評価額

1,800万円

担保金の目安(10%〜25%)

180万円〜450万円

3 民事訴訟(貸金返還請求)の手数料一覧

⑴訴訟提起の手数料
民事訴訟を提起する場合は、訴額(訴訟の目的の価額)に応じて、訴え提起の手数料を裁判所に納めることになります。

⑵設例での手数料
設例の場合は、1500万円が訴額になりますので、6万5000円が訴え提起の手数料になります。

⑶請求額別の手数料早見表

請求額

訴え提起の手数料

100万円

1万円

300万円

2万円

500万円

3万円

1,000万円

5万円

1,500万円(設例)

6万5,000円

5,000万円

17万円

1億円

32万円

10億円

302万円

4 民事執行(不動産執行)の予納金の目安

⑴民事執行の予納金とは
民事訴訟を提起して、勝訴判決を得て、その勝訴判決が確定した場合、不動産執行をすることになります。

そして、この場合、請求債権額に応じて予納金を裁判所に納める必要があります。

⑵東京地方裁判所の予納金基準

請求債権額

予納金

2,000万円未満

80万円

2,000万円以上〜5,000万円未満

100万円

5,000万円以上〜1億円未満

150万円

1億円以上

200万円

⑶設例での予納金額
設例の場合は、1500万円が請求債権額になりますので、80万円が予納金になります。

※ 予納金の基準は管轄裁判所によって異なる場合があります。上記は東京地方裁判所の基準です。

 

5 債権回収の弁護士費用

  当事務所の債権回収の弁護士費用は、以下をご参照ください。

  https://kl-o.jp/debt/#saikenhiyou

 

6 よくある質問(FAQ)

Q1 仮差押えの担保金は戻ってくるのですか?
A1 担保金は、一定の条件を満たせば還付(返還)されます。具体的には、本案訴訟で勝訴判決が確定した後に、担保取消しの手続を経ることで取り戻すことができます。ただし、相手方が担保金に対して権利行使をした場合などには全額が戻らないこともあるため、事前に弁護士に確認されることをおすすめします。

Q2 不動産執行の予納金は戻ってくるのですか?
A2 予納金は、競売手続の中で不動産が売却された場合、その売却代金から手続費用が賄われるため、余剰分が還付されることがあります。一方、入札者が現れず売却に至らなかった場合(競売の取下げや取消しの場合)には、すでに支出された鑑定費用等を差し引いた残額の返還にとどまることがあります。

Q3 裁判所に納めた費用は相手方に請求できますか?
A3 訴え提起の手数料(収入印紙代)は、訴訟費用に含まれます。勝訴した場合、判決主文で「訴訟費用は被告の負担とする」との判断がなされるのが一般的であるため、相手方に対して訴訟費用の確定手続を経て請求することが可能です。ただし、弁護士費用は原則として訴訟費用には含まれません。

Q4 担保金を用意できない場合はどうすればよいですか?
A4 担保金としてまとまった金額をすぐに準備することが難しい場合もあります。そのような場合には、仮差押えではなく、訴訟提起を先行させる方法や、不動産以外の財産(預貯金債権など)に対する仮差押え(担保金の額が不動産よりも低くなる場合があります)を検討するなど、状況に応じた代替手段を弁護士と相談されることをおすすめします。

 

7 おわりに

本コラムでは、債権回収の各段階で裁判所に納めるお金について解説しました。

不動産仮差押えの担保金(設例では180万円〜450万円)、訴え提起の手数料(設例では6万5,000円)、不動産執行の予納金(設例では80万円)と、段階ごとにまとまった費用が必要となります。

もっとも、担保金や予納金は一定の条件のもとで還付される場合があること、また訴訟費用については相手方に請求できる場合があることも、あわせて押さえておきたいポイントです。

実際の金額は事案の内容や管轄裁判所によって異なります。債権回収の進め方や費用の具体的な見通しについては、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

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