社会生活を送るうえで,多くの場合は会社に出勤をします。

「会社に出勤をしてこない社員」がいる,あるいは,「やむを得ず無断欠勤をしたがいきなり解雇をされて困っている」という方に向け,勤怠不良と解雇についてご説明をします。

目次

1 解雇が無効となる条件(解雇権濫用法理)
2 勤怠不良とは
3 勤怠不良による解雇が無効となるか

1 解雇が無効となる条件(解雇権濫用法理)

解雇は,問題行為があれば行うことができると思われがちですが,一定の条件がなければ無効となります。その条件を規定した法律が労働契約法です。

(解雇) 
労働契約法第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

この条文から,①客観的合理性,②社会通念上の相当性の二要件を充たさない場合は,例え就業規則の懲戒事由に該当していたとしても,解雇が無効となる可能性があります。単に就業規則の解雇事由にあたるから問題ないと考えるのではなく,解雇権濫用法理のもと解雇が無効になるリスクがあるかを,判例等を分析しながら慎重に検討する必要があります。

なお,就業規則に懲戒の種別と事由を明定していない場合は,問題行為があったとしてもそもそも解雇はできないことに注意が必要です(最判昭和54年10月30日,最判平成15年10月10日)。

では,具体的にどのような事情があると,先の二つの要件を満たすのでしょうか。実務上は,次のような事情を考慮要素として,二要件の該当を検討することとなります。使用者側であれば,問題社員にそのような事情があるかどうかのチェックリストとして,労働者側としては,使用者から告げられた解雇理由がこれらの事情に該当するかどうかの指標としてご利用下さい。

⑴ 勤務成績,勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合

☐当該企業の種類,規模

☐職務内容,労働者の採用理由(職務に要求される能力,勤務態度がどの程度か)

☐勤務成績

☐勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ,解雇しなければならないほどに高いかどうか),その回数(1回のミスか,繰り返すものか)

☐改善の余地があるか,会社の指導があったか(注意・警告したり,反省の機会を与えたか)

☐他の労働者との取扱に不均衡はないかなど

を総合検討することになります。

(イ)規律違反行為があるか

☐規律違反行為の態様(業務命令違反,職務専念義務違反,信用保持義務違反等),程度,回数

☐改善の余地の有無等

を同様に総合検討することになる。

また,懲戒解雇の場合は,普通解雇の場合よりも大きな不利益を労働者に与えるものであるから,規律違反の程度は,制裁として労働関係から排除することを正当化するほどの程度に達していることを要します。

・労働(雇用)契約書

・解雇通知書

・解雇理由説明書(退職時等証明書)

・就業規則

・賃金規程

・労働協約

・給与明細書

・商業登記簿謄本

2 勤怠不良とは

勤怠不良とは,無断欠勤,出勤をしたとしても持ち場を無断で離れ業務を遂行しない,無断で遅刻や早退を行う状況をいいます。

このような勤怠不良があった場合,解雇を実施する企業は少なくありません。

もっとも,このような解雇は当然に有効となるものではありません。

3 勤怠不良による解雇が無効となるか。

勤怠不良があったとしても,解雇権の濫用と認められた場合は,その解雇は無効となる可能性があります。


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