「相続放棄をしたのですが、被相続人(亡くなった方)の債権者から借金の支払いを請求されています。どうしたらよいでしょうか。」
「相続放棄をしたことを被相続人の債権者に証明したいのですが、どのようにして証明すればよいでしょうか。」
このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。
このコラムでは、相続放棄をした後の流れについて解説していきます。
なお、相続放棄自体については、過去のコラム(「親の借金を引き継ぎたくない(相続放棄)」)で解説しておりますので、そちらをご参照下さい。
【目次】
1 相続放棄後に被相続人の債権者から請求が来る理由
2 相続放棄受理通知書と相続放棄受理証明書
3 相続放棄が受理されると必ず請求を免れることができるか
4 おわりに
【参考 相続放棄の当事務所の弁護士費用】
1 相続放棄後に被相続人の債権者から請求が来る理由
相続放棄をした以上、被相続人の借金(債務)を引き継がないため、被相続人の債権者から借金について請求されることはないとお考えの方は多いと思います。
しかし、実は家庭裁判所への相続放棄の申述が受理された場合でも、そのことが不動産登記のように公示されるわけではありません。つまり、相続放棄した事実は自然と世の中の人に明らかになるわけではないのです。
そのため、相続放棄の事実を知らない債権者は、通常相続人であると考えられる被相続人のご家族の方が相続したものと考え、被相続人の債務について請求を行うのです。
2 相続放棄受理通知書と相続放棄受理証明書
では、相続放棄をしたにもかかわらず、被相続人の債権者からその借金について支払うように請求された場合、どのようにして相続放棄をしたことを証明すればよいでしょうか。
この証明を行うためには、一般的には相続放棄受理証明書を債権者に示すことになります。そして、この相続放棄受理証明書に似た文書として、相続放棄受理通知書というものがあります。以下では、その違いとそれぞれの取得方法について解説します。
⑴ 相続放棄受理通知書
相続放棄受理通知書とは、家庭裁判所が、相続放棄の申述を受理したことを相続放棄申述者(相続放棄をする人)に通知する文書です。
これは、家庭裁判所に相続放棄の申述を行った後、提出した書類に不備等がなかった場合、自動的に数日後に相続放棄申述者に対して郵送される文書となります。
⑵ 相続放棄受理証明書
相続放棄受理証明書とは、家庭裁判所で相続放棄が受理されたことを証明する文書です。
これは、相続放棄が受理された後、家庭裁判所に申請することにより受領できる文書です。申請は、相続放棄申述人の他、利害関係人(共同相続人、受遺者、被相続人の債権者など)も行うことができます。申請の際の必要書類は、申請先の裁判所によって異なる場合があるので、申請前に確認する必要があります。なお、取得費用は1通150円です。
⑶ 相続放棄受理通知書と相続放棄受理証明書の違い
いずれの文書も、債権者に対して相続放棄をしたことの証明書として利用できる場合が多いです。もっとも、債権者によっては、相続放棄受理通知書ではなく、相続放棄受理証明書を要求してくる場合がありますので、その際は相続放棄受理証明書を提示することになります。
また、相続放棄受理通知書は、一度郵送されると再発行はされないため、紛失したり一部の債権者に交付した場合、他の債権者に交付することができなくなります。一方、相続放棄受理証明書は取得費用を負担することで複数取得することができるので、債権者が複数見込まれる場合、その数に応じて取得しておくことをおすすめします。
3 相続放棄が受理されると必ず請求を免れることができるか
相続放棄受理通知書か相続放棄受理証明書を債権者に提示することで、債権者はその相続放棄を認め、それ以上請求をしないことが多いです。
しかし、実は、この相続放棄の申述受理については、裁判で争うことができます。 相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から原則として3か月以内に行う必要がありますが(民法915条1項)、家庭裁判所はこの期間内に申述がされた場合、申述書類の形式的チェックのみを行い、※法定単純承認(民法921条各号)の有無などの実質的なチェックを行いません。そのため、被相続人の債権者は、相続人が法定単純承認をしているのに相続放棄を行っていると判断した場合、相続放棄が無効であると主張して借金などの請求を訴訟ですることができます。そして、相続放棄が有効か無効につき訴訟の中で決められることになります。
以上からすれば、相続放棄の申述が受理された場合でも、法定単純承認をしているなどの理由により、後に訴訟で相続放棄が無効となる可能性はあります。
※法定単純承認とは、相続人が相続財産を処分した場合(民法921条1号)や相続放棄後に相続財産の隠匿消費をした場合(同条3号)など、同条各号の行為を行った場合に自動的に単純承認したものとみなす制度です。
4 おわりに
これまでお話したように、相続放棄は申述が受理されるとそれで全てが終了するわけではありません。単純承認にあたらないよう注意を払いつつ、相続放棄に向けた準備を進める必要がございます。
特に、訴訟で相続放棄の効力について争われた場合は、自力で解決することは困難な状況になると考えられます。そのため、相続放棄をする際には、一度法律の専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。
なお、相続放棄を弁護士に依頼するメリット等は、過去のコラム(「親の借金を引き継ぎたくない(相続放棄)」)で解説しておりますので、是非ご覧ください。
【参考 相続放棄の当事務所の弁護士費用】
相続放棄
相続放棄 |
着手金 |
報酬金 |
相続人1人につき5万5000円 |
相続放棄が家庭裁判所で認められた場合 |
※申述期間経過後の着手金・報酬金は各16万5000円となる場合がございます。
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