「ミスをした部下に業務上必要な指導をしたら『パワハラだ!』と言われました。業務上必要な指導もパワハラになるのでしょうか。」

「未然にパワハラを防止したいのですが、どのような対応策がありますか。」

 

このようなご質問は、法人のお客様から多く寄せられる質問です。

このコラムでは、パワハラの基礎知識から具体的なパワハラの対応策についてご説明します。

 

【目次】

1 パワハラの基礎知識

2 職場でパワハラが起きた場合に会社が負うリスク

3 社内のパワハラへの対応策

4 社内のパワハラ問題を弁護士に依頼するメリット

5 パワハラに関する当事務所の弁護士費用

6 おわりに

 

1 パワハラの基礎知識

⑴ パワーハラスメントの定義

パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)は、労働施策総合推進法30条の2第1項において、以下のように定義されています。

職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③その雇用する労働者の就業環境が害されるもの

※令和4年4月1日から中小企業も労働施策総合推進法の対象となります。

⑵ 職場とはどこまでを含むのか

「職場」とは、業務を遂行する場所ですが、通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含まれます(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)。

⑶ 労働者とは誰を指すのか

「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業者が雇用する労働者の全てを指します(同指針)。

⑷ 「優越的な関係を背景とした」言動とは 

「優越的な関係を背景とした」言動とは、パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることを言います(同指針)。
これは要するに、「指示や命令に従わなければならない関係」が存在する場合のことです。

⑸ 「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは何を指すのか

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上の必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します(同指針)。

例えば、以下のようなものです。

・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許
 容されるべき範囲を超える言動

⑹ 「労働者の就業環境が害される」とは何を指すのか

「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものになったため、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断にあたっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とします。要するに、被害を訴える者の主観のみで判断されるわけではないということです(同指針)。

⑺ パワハラの違法性の判断

パワハラの定義に該当する行為であっても、その全てが違法と評価されるとは限りません。
被害者が加害者にパワハラによる損害賠償請求を行う場合、民法の不法行為(民法709条)を根拠に請求しますが、不法行為に基づく損害賠償請求が認められるためには「違法性」が要件となります。そして、この違法性についてはパワハラの定義とは別に判断することになります。

2 職場でパワハラが起きた場合に会社が負うリスク

職場でパワハラが起きた場合、会社は次のリスクを負うことがあります。なお、パワハラに基づく慰謝料を会社が負担する場合の相場と具体例は、別コラムで解説しておりますので、そちらも併せてご覧下さい。

⑴ 損害賠償請求を受けるリスク

ア 不法行為責任
使用する労働者が職務遂行中に第三者に損害を与え、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負う場合、会社はその第三者に対し、使用者責任として損害賠償責任を負います(民法715条1項)。


イ 債務不履行責任
使用者である会社は、労働者の安全に配慮する義務を負っています(労働契約法5条)。そのため、パワハラが生じた場合、職場環境整備義務及び職場環境調整義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条1項)に基づく損害賠償責任を負う場合があります。

⑵ 行政指導等を受けるリスク

会社がパワハラ防止のための雇用管理上必要な措置を講じていない場合には、行政指導、勧告、公表がされるリスクがあります(労働施策総合推進法33条)。

⑶ レピュテーションリスク

職場でパワハラが発生し、訴訟などに発展した場合、取引先などから「コンプライアンスのできていない会社」と判断され、取引が打ち切りになったり、職場環境が劣悪であるとの評判が立ち、採用活動においても不利になる可能性があります。

3 社内のパワハラへの対応策 

社内でパワハラが起きた場合には、会社は大きなリスクを負うことになります。このようなリスクを避けるために会社が講じるべき対策について、以下解説いたします。

⑴ パワハラに関する指針の明確化と周知・啓発

就業規則等に、①職場におけるパワハラの内容とパワハラを行ってはならない旨の方針、②パワハラを行った者に対しては厳正に対処する旨の方針を規定し、これを従業員へ周知します。
また、従業員に対し、定期的にパワハラ研修、講習等を実施します。

⑵ 相談窓口の設置と適切に対応するために必要な体制の整備

パワハラの被害者が相談できる窓口(担当者)や制度を定め、労働者に周知します。また、内部で相談窓口等を設けることが困難な場合は、弁護士などの外部機関に対応を委託することも考えられます。
相談窓口の担当者を定めた場合は、担当者が相談に適切に対応できるようにすることも必要です。具体的には、相談対応マニュアルの作成、相談を受けた場合の対応についての研修の実施などです。

⑶ 発生したパワハラに対する事後の迅速かつ適切な対応

職場でパワハラが起きてしまった場合、以下の対応を行います。


①事実関係の迅速かつ正確な確認
この確認にあたっては、相談者及び行為者の双方から事情を聴取します。双方の事実関係の主張に不一致がある場合には、第三者からの事情聴取も行います。

②被害者に対する配慮措置
事実関係の調査によりパワハラが確認できた場合は、被害者と行為者を引き離すための配置転換、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助など、被害者に対する配慮のための措置を行います。

③行為者に対する措置
就業規則など職場におけるパワハラに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講じます。

④再発防止措置
改めて職場におけるパワハラに関する方針を周知・啓発する等の再発防止措置を講じます。

4 社内のパワハラ問題を弁護士に依頼するメリット

⑴ 法令・裁判例に適した対応を行うことができる

パワハラは多種多様なものであるため、パワハラに該当するかどうか、該当するとしてもそれが違法となるかの判断は容易ではありません。
この判断を正確に行うためには、関係法令や裁判例などを踏まえる必要がありますので、弁護士に依頼することで正確な判断が期待できます。
判断を誤り、不正確な対応をしてしまった場合は、従業員から訴訟を起こされるなどのリスクがありますので、パワハラの対応には正確な判断を行うことが不可欠となります。

⑵ 直接やりとりをすることがなくなるので、交渉や手続等の負担を大幅に軽減できる

弁護士に依頼をした以降は交渉の窓口は弁護士になります。
そのため、直接揉めている相手方とやりとりをすることがなくなるため、ストレスと交渉に対応する時間を大幅に軽減することができます。
また、こちらの主張を受け入れてもらうためには、その伝え方や主張の順番等を考慮しながら手続を進めることが重要です。
どのように交渉を進めるとより適切な解決に導けるか、弁護士は常に考えながら手続を進めます。
ご自身で法的な知識の側面以外に、そのような点も配慮しながら手続を進めることは負担が大きく、それを弁護士に肩代わりさせられる点は大きなメリットといえます。

⑶ 事前防止策から再発防止策までトータルなサポートを受けることができる

3でご説明したとおり、パワハラへの対応には、就業規則にパワハラの指針等の明記、パワハラ研修会、パワハラ窓口の設置、被害者への配慮措置、加害者への懲戒等の対応、再発防止策の実施など、対応することが非常に多く、しかもその対応には関係法令等の正確な理解が必要となります。
この点、弁護士であれば事前防止策、実際に起きたパワハラへの対応、再発防止策への対応を正確な知識に基づき行うことができます。
なお、パワハラ防止体制は一朝一夕で完成するものではないため、必要に応じて顧問弁護士の依頼も検討されるとよいでしょう。

 パワハラに関する当事務所の弁護士費用

⑴ パワハラにより従業員から損害賠償請求をされてしまった場合


和解交渉

和解交渉

着手金

報酬金

請求額300万円以下
16.5万円

300万円以下
減額額の22%(最低33万円)

請求額300万円~3000万円
請求額の3.3%+6.6万円

300万円を超え、3000万円以下
減額額の11%+33万円

請求額3000万円~3億円
請求額の2.2%+28.6万円

3000万円を超え、3億円以下
減額額の6.6%+165万円

請求額3億円以上
請求額の1.1%+369.6万円

3億円を超える場合
減額額の4.4%+825万円

※法人・個人事業主のご依頼者様で顧問契約を締結頂いた場合、着手金を毎月の顧問料(5.5万円)としてお支払頂くことも可能です。

 

訴訟

訴訟

着手金

報酬金

請求額300万円以下
請求額の8.8%(最低26.4万円)

減額額300万以下
減額額の22%(最低33万円)

請求額300万円~3000万円
請求額の5.5%+9.9万円

減額額300万円~3000万円
減額額の13.2%+26.4万円

請求額3000万円~3億円
請求額の3.3%+75.9万円

減額額3000万円~3億円
減額額の8.8%+158.4万円

請求額3億円以上
請求額の1.1%+369.6万円

 減額額3億円以上
減額額の4.4%+1478.4万円

 

⑵ パワハラ防止体制の継続的なサポートをご希望される場合(顧問契約)

顧問契約は月額3万3000円(税込み)で承っております。
サービス内容の詳細については、当事務所の顧問契約紹介ページ(https://kl-o.jp/corporateadvisor/#companycost)をご参照下さい。

6 おわりに

パワハラに関する問題は、会社として適切な対応を求められ、判断を誤った場合はリスクが生じるおそれがあります。
社内におけるパワハラ対応について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。

 

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