本コラムでは、令和4年民事訴訟法改正(民事訴訟のデジタル化)において創設された法定審理期間訴訟手続について解説いたします。
【目次】
1 法定審理期間訴訟手続が創設された経緯
2 法定審理期間訴訟手続の流れ
3 法定審理期間訴訟手続の開始要件(利用要件)
4 法定審理期間訴訟手続を利用する際の留意点
5 当事務所の弁護士費用
6 おわりに
1 法定審理期間訴訟手続が創設された経緯
民事訴訟は、事実上・法律上の争いがある民事紛争につき、当事者双方が主張立証を尽くし、裁判所が公権的判断を判決という形で下すものであることから、当事者の生の力関係がそのまま反映されてしまうような話し合いによる解決と比較して、透明性・納得度の高い解決であると言えます。
他方、その分、民事訴訟法の定める手続に則った慎重な審理・判断がなされることから、解決までに時間が掛かることも事実です。実際、事実関係に争いのある民事訴訟で、証人尋問等を経る場合には、訴訟提起から第一審判決がなされるまでに1年以上を要することが一般的といえます。また、令和4年民事訴訟法改正前、民事訴訟の審理期間・判決までの期間につき、一定の期限を設ける規定がなく、判決までに要する期間を予測することが困難であることが民事訴訟の利用を躊躇する要因になっているという調査結果もありました。
このことから、令和4年民事訴訟法改正により、民事訴訟のデジタル化(オンライン訴訟申立て等)のほかに、審理期間や判決までに要する期間が法定された「法定審理期間訴訟手続」(民事訴訟法第381条の2~第381条の8)が創設されました。
2 法定審理期間訴訟手続の流れ
開始要件や留意点を説明する前に、法定審理期間訴訟手続の大まかな流れを把握していただいた方が理解し易いことから、以下の図をまずはご覧ください。

この図の太字になっている期間が、法定されている審理期間(法定審理期間)になります。要するに、第1回期日から6か月以内に審理が終わり、そこから1か月以内に第1審の判決がなされることになります。具体的には、令和8年6月17日に第1回期日が開かれたとすれば、そこから7か月後の令和8年1月13日頃に第1審判決が言い渡されることになりますので、そのような期間が法定されていない従前の通常の訴訟手続と比較して、解決までの時間を見通しやすいといえます。
3 法定審理期間訴訟手続の開始要件(利用要件)
法定審理期間訴訟手続の開始要件(利用要件)は、以下のとおりです。
① 当事者双方が法定審理期間訴訟手続を利用することの申出・同意をしていること
② 「事案の性質や訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情に鑑み、本手続により審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正な審理の実現を妨げると認めるとき」に該当しないこと
③ 消費者契約に関する訴え又は個別労働関係民事紛争に関する訴えに該当しないこと
4 法定審理期間訴訟手続を利用する際の留意点
法定審理期間訴訟手続を利用する際の留意点としては、以下のとおりです。
① 当事者の双方又は一方が通常の訴訟手続に移行する旨を申し出ると法定審理期間訴訟手続は終わりになり、通常の訴訟手続に移行することになります。
② 法定審理期間訴訟手続の判決に対しては控訴することはできませんが、判決送達後2週間以内に異議を申し立てることはできます。異議申し立てがなされた後は判決を行った裁判所にて通常の訴訟手続に移行することになり、通常訴訟移行後の判断に不服がある場合は、控訴することもできます。
以上のとおり、法定審理期間訴訟手続が開始されたとしても、それが最後まで維持され続ける保障はなく、通常の訴訟手続に移行することが考えられます。この場合においても、一度は法定審理期間で審理裁判をする前提で集中的に手続が行われているため、通常の訴訟手続に移行した後においても、そのことを踏まえて集中・迅速に審理裁判をすることになる可能性はありますが、通常の訴訟手続に移行するリスクも踏まえて、慎重に利用を検討する必要があります。
そのため、法定審理期間訴訟手続は、一般に、事実関係に大きな争いがなく、契約の解釈等の法的評価の是非につき裁判所の公権的判断を速やかに得たいケースなどにおける利用が想定されているところです。
5 当事務所の弁護士費用
当事務所では、以下のリンクのとおり、幅広い分野を取り扱っており、民事裁判手続のIT化(デジタル化)を見据えて、日ごろの執務にも積極的に情報通信技術を取り入れるなどの試みをしています。
弁護士費用
6 おわりに
本コラムで解説したとおり、法定審理期間訴訟手続の創設により、特に企業においては紛争解決方法のレパートリーが増えることになります。また、今後の実務運用を見守る必要はありますが、迅速な公権的判断を得たい、という観点からは有力な選択肢の一つであるとはいえます。問題となっている民事紛争につき、法定審理期間訴訟手続を含め、民事訴訟等において用意されているどのような紛争解決方法を選ぶかということ自体、紛争解決に関する高度な専門的知見を要する事柄になりますので、まずは一度、弁護士にお気軽にご相談ください。
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