「遺産である不動産に関して、遺産の分割方法としてどのようなものがあるか。」といった相談を受ける場合があります。

そこで、今回の記事では、不動産に関する遺産の分割方法について解説いたします。


目次
1 遺産の分割方法の種類
2 分割方法の検討手順
3 各分割方法の留意点
4 遺産分割に関する問題の弁護士費用
5 おわりに


1 遺産の分割方法の種類

以下の設例で考えます。

被相続人である父親が亡くなり、その相続人としては、子A、子Bの二人がいる。父親は遺言を残しておらず、父親の遺産としては、父親が一人で暮らしていた父親名義の実家の土地建物(住宅ローンは完済)があり、父親亡き後は空き家となっている。

設例のイラスト。被相続人(父親)故人の遺影、父親名義の実家(土地・建物、住宅ローン完済、現在空き家)、父親亡き後(遺言なし)・遺言書なし、相続人(子A)の男性と相続人(子B)の女性。法定相続人:子供2人(A・B)

この場合、遺産の分割方法としては、次の4種類が考えられます。

① 現物分割
遺産である不動産を、換金せずに現物のまま相続人が取得する分割方法です(土地を分筆して、各相続人がそれぞれ取得する方法も含まれます。)。
設例の場合、例えば子Aが単独取得するといったことが考えられます。

② 代償分割
一部の相続人が不動産を取得し、他の相続人に対し、代償金支払債務を負担する分割方法です。
設例の場合、例えば不動産の市場価値が1000万円であるとすると、子Aが不動産を取得し、子Bに対して代償金500万円を支払うといったことが考えられます。

③ 換価分割
不動産を換金して、相続人が売却代金を分け合う分割方法です。
設例の場合、不動産を売却して、売却代金1000万円につき、子Aが500万円、子Bが500万円のように分け合うといったことが考えられます。

④ 共有分割
不動産につき、相続人が共有(共同所有)する分割方法です。
設例の場合、子Aが持ち分2分の1、子Bが持ち分2分の1で共有するといったことが考えられます。


2 分割方法の検討手順

家庭裁判所における遺産分割調停・審判においては、
①現物分割・②代償分割
↓
③換価分割
↓
④共有分割
の順番で検討・判断することが一般的です。

遺産分割協議においても、上記順番に沿って、相続人から意見を募り、交渉することが多いです。

設例の場合、例えば、子Aが実家を引き継いで居住するということであれば、①現物分割・②代償分割(実家の価値が乏しいということであれば①、相応に価値があるということであれば②というケースが多いかと思います。)を選択し、子A、子Bいずれも現物自体は不要ということであれば、③換価分割を選択し、いわゆる「負動産」であり、引取手がいないということであればやむを得ず④共有分割を選択することになります。

なお、相続した土地を手放したい場合には、令和5年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度により、法務大臣の承認を受けて、土地を国に引き取ってもらえることもあります(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)。ただし、建物がある土地は申請できないため、設例のような実家の場合は建物を取り壊す必要があります。また、土地が共有の場合は共有者全員で申請する必要があるほか、抵当権などが設定されていないことや境界が明らかであることなどの要件があり、承認を受けた後には、10年分の標準的な管理費用を考慮して算定される負担金を納付しなければなりません。


3 各分割方法の留意点

① 現物分割の留意点
家庭裁判所における遺産分割調停・審判の実務上、相続人が取得を希望していない不動産につき、特定の相続人に取得させるといったことはしていません。不動産については、預貯金等と異なり、税金・管理の問題が生ずるため、取得を希望しない相続人に押し付けることは相当でないからです。

② 代償分割の留意点
遺産分割審判において代償分割を選択するためには、代償金支払能力の証明が必要であり、分割払いも認められません。遺産分割調停においては、代償金支払能力の証明は不要であり、分割払いも認められることがありますが、一般的には代償金支払能力があることの資料を他方の相続人から求められ、かつ、分割払いには難色を示されることが多いと思われます。

③換価分割の留意点
多くの事案では、相続人で協力して不動産仲介業者に仲介を依頼して、任意売却することになります。ただし、売却の段階で相続人が反目して任意売却が奏功しないケースを想定して、裁判所による競売が可能な条項を設けるか否かの検討が必要な場合もあります。もっとも、任意売却の方が高値で売却できることも多いため、一般的には競売よりも任意売却の方が望ましいといえます。

(遺産分割条項)
1 A及びBは、別紙物件目録記載の不動産を、持分各2分の1の割合で取得する。
2 A及びBは、本件不動産を相互に協力して売却するものとし(後略)
3 A及びBは、本件不動産につき、令和●年●月以降、単独で競売申立てをすることができる。ただし、令和●年●月●日までに売却できた場合はこの限りではない。

④ 共有分割の留意点
共同所有・共同管理の必要が生じ、相続人同士が反目している場合は問題の先送りに過ぎない場合も多いので、共有分割にすべきかの慎重な検討が必要になります。

なお、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。相続により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。遺産分割の話合いがまとまらない間は、この3年の期間内に、法務局に相続人である旨を申し出る「相続人申告登記」をすれば、この申請義務を果たしたものとみなされますが、その後の遺産分割で不動産を取得したときは、遺産分割の日から3年以内に相続登記を申請する必要があります(同法76条の3)。正当な理由なくこれらの申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となります(同法164条1項)。この義務は、令和6年4月1日より前に開始した相続にも適用されます(この場合の3年の期間は、早くても令和6年4月1日から数えます。)。

また、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として、特別受益(生前贈与など)や寄与分を考慮せず、法定相続分(遺言で相続分の指定がある場合はその割合)によって分けることになります(民法904条の3)。相続開始から10年を経過する前に家庭裁判所に遺産分割の調停・審判を申し立てていれば、この制限は受けません。令和5年4月1日より前に開始した相続については経過措置があり、少なくとも令和10年3月31日までに家庭裁判所に申し立てれば、この制限を受けません。不動産の分割を先送りにしていると、この点でも不利益が生じるおそれがあります。


4 遺産分割に関する問題の弁護士費用

遺産分割に関する弁護士費用は、次のリンクにあるとおりです。
https://kl-o.jp/inheritance/#souzokucost


5 おわりに

不動産を含む遺産分割においては、登記手続、競売手続等の関係でどのように条項化すべきかなど、検討しなければならない留意点が多くありますので、判断に迷う場合は、弁護士に相談することをお勧めいたします。

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