令和8年10月1日から、パートタイム労働者・有期雇用労働者(契約社員)に関するルールが変わりました。
厚生労働省が令和8年4月28日に改正した、いわゆる同一労働同一賃金に関する省令と告示が、同年10月1日から施行・適用されています。
会社の実務に直結するのは、パート・契約社員を雇い入れる際に、「正社員との待遇の違いについて説明を求めることができる」旨を書面で明示しなければならなくなったという点です。
待遇差を説明する義務は、改正前から法律に定められていました。
変わったのは、その権利を会社の側から知らせなければならなくなったという点です。
これまで説明を求められたことのない会社であっても、今後は求めがあることを前提に準備しておく必要があります。
そして、説明の仕方を誤れば、あるいは説明を避ければ、それ自体が後の紛争で会社に不利に働きます。
そこで、今回は、企業の側から見て、何を準備し、実際に説明を求められたときにどう対応すべきかを解説します。

 

【目次】
1 令和8年10月1日に何が変わったのか
2 最初にすべきは労働条件通知書・雇用契約書の差替え
3 過料だけの問題ではありません
4 説明義務の中身――何を説明しなければならないのか
5 説明を怠ったこと自体が、不合理性の判断材料になります
6 説明できるかどうかは、事前の備えで決まります
7 ガイドラインの改正で追加された項目と、自社点検
8 説明の方法と、正社員転換制度の公表
9 まとめ
10 当事務所の企業法務・顧問契約に関する弁護士費用

 

1 令和8年10月1日に何が変わったのか
改正されたのは法律そのものではなく、省令と告示です。

労働者派遣法施行規則とパートタイム・有期雇用労働法施行規則を改正する省令(令和8年厚生労働省令第87号)、雇用管理指針を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第202号)、同一労働同一賃金ガイドラインを改正する告示(令和8年厚生労働省告示第203号)の三つです。

いずれも令和8年4月28日に公布され、同年10月1日から施行・適用されました。

     図1 改正前後の流れ(説明を求めることができる旨の明示が加わった)

 

2 最初にすべきは労働条件通知書・雇用契約書の差替え
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)6条1項は、パート・有期雇用労働者を雇い入れたときに、文書の交付等により一定の事項を明示することを義務付けています。

令和8年10月1日からは、その明示事項に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」が加わりました(同法施行規則2条1項)。

厚生労働省は、この「雇い入れたとき」には労働契約の更新時も含まれるとしています。

したがって、現に雇用しているパート・契約社員についても、更新のタイミングで新様式が必要になります。

なお、待遇差の内容や理由そのものを通知書に書き込む必要はありません。

記載するのは、説明を求めることができる旨です。

     図2 労働条件通知書・雇用契約書への対応

厚生労働省は、この改正に対応したモデル労働条件通知書を公表しています。

モデル労働条件通知書(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/001696984.pdf

同(Word版)
https://www.mhlw.go.jp/content/001696998.docx

厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

 

3 過料だけの問題ではありません
同法31条は、同法6条1項に違反した者は10万円以下の過料に処すると定めています。

また、同法18条1項により、報告徴収、助言、指導、勧告がされることがあり、勧告に従わない場合には同条2項によりその旨を公表することができるとされています。

もっとも、企業にとっての影響は、制裁にとどまりません。

労働者に説明を求められることを知らせるのが義務になった以上、これまで問題化していなかった待遇差が、個別労働紛争、労働審判、訴訟の形で表面化する可能性があります。

 

4 説明義務の中身――何を説明しなければならないのか
同法14条2項は、パート・有期雇用労働者から求めがあったときは、正社員との待遇の相違の内容及び理由等を説明しなければならないと定めています。

説明すべきは、待遇ごとに、その性質と目的に照らして、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情のどこに違いがあるのか、という点です。

賞与なら賞与、休暇なら休暇について、それぞれ個別に示す必要があります。

     図3 待遇差の説明で示すべきこと

なお、これとは別に、同法14条3項は、説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止しています。

説明を渋るだけでなく、求めてきた労働者のシフトを減らす、契約を更新しないといった対応も、この規定に抵触するおそれがあります。

 

5 説明を怠ったこと自体が、不合理性の判断材料になります
今回のガイドライン改正では、これまでの最高裁判決や施行通達の内容を踏まえて、待遇差の判断に関する記載が整理・追加されました。

まず、説明の中身についてです。

これまで基本給などの賃金について注記されていた考え方が、待遇全般に当てはまるものとして本文に移されました。

待遇差の要因が決定基準やルールの違いである場合、「将来の役割期待が異なる」といった主観的・抽象的な説明では足りず、客観的かつ具体的な実態に照らして判断されるとされています。

「雇用形態が違うから」「パートだから」という答え方では、説明として通用しません。

また、「正社員としての職務を遂行しうる人材の確保及び定着を図る」という目的があることのみをもって、直ちに不合理でないと認められるものではないとされました。

次に、説明をしなかった場合についてです。

事業主が同法14条2項の説明を十分に行わなかったと認められる場合、その事実自体が同法8条の「その他の事情」に含まれ、待遇差が不合理と認められることを基礎づける事情として考慮されうるとされました。

抽象的な理由付けは説明として通用せず、かといって説明を避ければ、避けたこと自体が会社に不利に働きます。

     図4 説明の仕方と、会社への影響

説明は、現場の担当者の裁量に委ねるのではなく、あらかじめ整理した内容によって行う必要があります。

 

6 説明できるかどうかは、事前の備えで決まります
各待遇について、何を補償し、何に報いるために設けているのかが規程上明らかでなければ、説明のしようがありません。

規程に目的が書かれていても、実際の運用がそれと食い違っていれば、やはり説明は成り立ちません。

改正への対応は、通知書の差替えよりも、この点検の方に時間を要します。

 

7 ガイドラインの改正で追加された項目と、自社点検
同一労働同一賃金ガイドラインは、どのような待遇差が不合理と認められるかについて、考え方と具体例を示したものです。

今回の改正では、賞与、病気休職、福利厚生施設の記載が充実され、退職手当、家族手当、住宅手当、無事故手当、夏季冬季休暇、褒賞が新たに追加されました。

例えば、住宅手当が転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものである場合、正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパート・有期雇用労働者にも、同一の住宅手当を支給しなければならないとされています。

夏季冬季休暇については、パート・有期雇用労働者にも正社員と同一の休暇を付与しなければならないとされました。ガイドラインでは、繁忙期に限った短期間の勤務ではない有期雇用労働者に付与していない場合が、問題となる例として挙げられています。

福利厚生施設については、利用の可否だけでなく、利用料金や割引率といった利用条件も同法8条の適用を受けることが明記されています。

また、雇用管理指針では、便宜の供与を配慮すべき施設の例示に駐車場が加えられました。

     図5 ガイドライン改正で追加・充実された項目

自社に該当する制度がある場合は、早めに見直しの要否を検討する必要があります。

 

8 説明の方法と、正社員転換制度の公表
雇用管理指針の改正により、説明の方法も具体化されました。

資料を活用して口頭で説明する方法か、説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい資料を交付する等の方法か、いずれかによることが求められます。

口頭で説明する場合は、用いた資料を交付することが望ましいとされています。

あわせて、賃金は、職務の内容や成果、意欲、能力、経験等を公正に評価して決定することが望ましいとされました。

また、正社員への転換制度の内容や転換実績を明示するよう努めるとともに、ウェブサイトなどで定期的に公表することが望ましいとされています。

 

9 まとめ
令和8年10月1日から、パート・契約社員を雇い入れるときや契約を更新するときに、「正社員との待遇差について説明を求めることができる」旨を明示しなければならなくなりました。

明示そのものは、労働条件通知書や雇用契約書の様式を差し替えれば対応できます。

しかし、実際に説明を求められたときに、待遇ごとの目的と正社員との違いを具体的に示せなければ、抽象的な説明にとどまったことや説明を避けたことが、後の紛争で会社に不利に働くおそれがあります。

改正ガイドラインで追加された手当・休暇・福利厚生の項目も踏まえて、自社の規程と運用を点検し、説明の内容をあらかじめ整理しておくことが大切です。

自社の制度についての個別のご相談は、当事務所の弁護士にお寄せください。

 

10 当事務所の企業法務・顧問契約に関する弁護士費用
当事務所の企業法務・顧問契約に関する費用は次のページをご参照ください。
通常の顧問契約の場合は月額5万5000円(税込)となります。

https://kl-o.jp/corporateadvisor/

 

お電話でのお問い合わせ
平日9時~18時で弁護士が電話対応
※初回ご来所相談30分無料

☎︎ 03-5875-6124