本コラムでは、「民事執行法違反事案の刑事告発」について解説いたします。

【目次】
1 令和元年民事執行法改正-財産開示手続不出頭等に対する罰則強化
2 悪質な債務者に対する刑事告発の検討-「逃げ得は許さない。」と決意するか
3 刑事告発~捜査・起訴
4 強制執行・刑事告発に関する当事務所の弁護士費用
5 おわりに

 

1 令和元年民事執行法改正-財産開示手続不出頭等に対する罰則強化
当事務所のコラム「財産開示手続の流れ・メリット・弁護士費用、欠席や虚偽説明をした場合の罰則、第三者からの情報取得手続」で解説したとおり、平成15年民事執行法改正により、財産開示手続の制度が創設されました。財産開示手続においては、確定勝訴判決等を有する債権者の申立てによって、裁判所が債務者を呼び出し、債務者に自己の財産について陳述(財産目録の提出)をさせることになり、この陳述(財産目録の提出)により判明した財産に対して、強制執行をすることが想定されています。

しかし、これまでは財産開示手続の不出頭、虚偽陳述等に対するペナルティ(いわゆる前科・前歴になる刑事罰ではありませんでした。)が弱かったことなどから、利用が多いとまではいえない制度となっていました。このため、令和元年民事執行法の改正により、以下のとおり、「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」という刑事罰に強化されました。

民事執行法
第213条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 に処する。
 
一~四 (略)
 
五 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者
 
六 第199条第7項において準用する民事訴訟法第201条第1項の規定により財産開示期日において宣誓した開示義務者であつて、正当な理由なく第199条第1項から第4項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたもの

2 悪質な債務者に対する刑事告発の検討-「逃げ得は許さない。」と決意するか
罰則を強化する令和元年民事執行法の改正以降、裁判所の統計上、財産開示手続の申立てが増え、財産開示手続に出頭する債務者の割合も概ね40~50%で推移しているようです。また、財産開示手続不出頭の債務者に対する刑事告発の件数も毎年相応の件数に及んでいるものとされています。

このことから、確定勝訴判決で認められている債権が特に強い法的な保護に値するものである場合(例えば生命身体を害する不法行為の損害賠償請求権、婚姻費用・養育費請求権といったものが挙げられます。)であって、債務者の交渉~訴訟における対応が悪質・不誠実であるときは、「逃げ得は許さない。」という決意・方針のもと、刑事告発を検討すべきケースも考えられるところです(※)。

※ 民事上の請求につき相手方(債務者)から有利な譲歩を引き出すためにする刑事告訴・刑事告発は、告訴意思・告発意思が明らかとはいえないなどとして一般的には受理されないことが多く、かつ、回収可能性の観点からも費用対効果に見合うものとはいえないことが通常ですが、悪質な債務者については、令和元年民事執行法改正の経緯・趣旨からすれば、経済的な損得に限られない、「逃げ得は許さない。」という対応も考えられるところです。

3 刑事告発~捜査・起訴
⑴ 「逃げ得は許さない。」という決意をした場合には、捜査機関に対して刑事告発をすることになります。この場合、交渉・民事裁判・財産開示手続の申立てを経ていることが通常であり、これらの手続における債務者の対応は交渉・裁判記録等により明らかにできることから、これらの交渉・裁判記録等を添付資料として、「告発の趣旨」、「告発の理由」を明らかにした告発状を作成・提出することになります。

⑵ そして、上記告発状の提出を受けた捜査機関は、捜査機関においても民事裁判記録の閲覧・謄写、被害者である債権者の事情聴取、債務者宅の捜索差押、債務者の取調べ等を経て、検察官に事件記録を送致の上、検察官において起訴・不起訴の判断をすることになります。被疑者である債務者を検察官が起訴する場合、略式手続により罰金刑が科されることが多いとされています。

 強制執行・刑事告発に関する当事務所の弁護士費用
強制執行に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/debt/#saikenhiyou
また、当事務所において交渉・民事裁判・財産開示手続の申立てを行っているケースについては、事案の内容にもよりますが、告発状の作成につき、通常の場合よりもリーズナブルな金額でご依頼いただくことが可能です。

5 おわりに
「逃げ得は許さない。」と決意された場合には、告発の理由を基礎づける資料を添付の上、告発の趣旨を記載した告発状を作成し、捜査機関と告発受理に向けた粘り強い折衝を行う必要があります。
お困りの場合は、まずはお気軽に弁護士にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ
平日9時~18時で弁護士が電話対応 
初回ご来所相談30分無料
☎︎ 03-5875-6124